夢か幻か
2
『…あ。もぅこんな時間かぁ…雫は今日どうやってかえるの?』
時計は、午後四時になろうとしていた。
いろいろあった学園での1日が終わろうとしている。
『僕は迎えが来るはずなんだけど…』
終わった頃に迎えに来ると言っていた十六夜の言葉を思い出した。
『迎え!?』
『うん。今日執事さんに送ってもらってさ、帰りも終わった頃にくるって…』
『…すっげぇセレブだなぁ…
もしかして…雫の今の名字の一ノ宮って…あの一ノ宮?』
『多分、その一ノ宮だよ。椎成先生にも言われたなぁ…』
どうやら、この学園では、一ノ宮って名前はかなり有名らしい。
なんか、ちょっと複雑だな。やっぱり…
『そっか…雫もいろいろ大変だな…だから、生徒会も…かな?』
『…どうだろうね?』
そこは、学長が自分の近くに玩具を置いておきたいからだと思う…
とは、言えるわけない。
『とりあえず、雫はいきなり有名人コースだな。』
う〜ん…
本当はあんまり目立ちたくないんだけどね。
『なんか、そんな感じみたいだね。』
『でも、あの一ノ宮の家系ならいろいろ安心だな。』
『ぅん。』
そんな会話をしながら、僕達は帰り支度を終わらせた。
『じゃ、下まで一緒に行くか!』
『そうだね』
教室に残る僅かなクラスメイトに挨拶をして、僕達は教室を後にした。
夕陽がさりげなく差し込む廊下を歩く。
『今日はいろいろありがとう。信ちゃんがこの学園にいてくれてよかった。』
『どういたしまして。俺も雫に再会出来て嬉しかったよ。また仲良くやろうな?』
『うん。よろしくね?』
そういった僕達は、お互いに少し照れながら
笑った。
二人で笑いながら廊下を歩く。
なんかこういう些細な時間が、僕にとっては大切だったんだと思う。
普通の学生らしく…
友人と共に…
もし、あの時二人が離れなければあんな事にはならなかったのかな?
今更ながら、そんな事を頭の隅で何回も何回も考えていた。
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