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夢か幻か

昇降口に着いて、正門を見ると、十六夜が車を止めて待っていた。



『あれかぁ…雫のお迎え。むちゃくちゃ目立つな。』



『…だね。ちょっと恥ずかしいかも…』



僕は、今までこういう待遇をされたことが無いから、なんか無性に恥ずかしいような、照れ臭い気持ちだった。



『じゃ、雫。俺ちょっと寄るトコあるからさ。ここで、バイバイだな。』



『ぅん。僕は帰るよ。』



『気を付けて帰れよ?明日遅刻すんなよ〜?』



『大丈夫だよ!信ちゃんこそねっ!』



『おー!じゃ、また明日な!』



『ぅん!また明日!』



そういって僕達は笑いながら手を振って別れた。



………



また明日



この台詞を言うのはどれくらいぶりだったかな…?



僕は、今日1日いろいろあったけど、



嫌なことばかりではない学園生活に希望を見出だしていたのかな?



そんな自分がちょっと変な感じで、僕ははにかみながら、十六夜の待つ車へと歩いていった。



『お疲れ様でした。どうぞ。』



車に近づいた僕に一礼をした十六夜は、車のドアを開けた。



『ありがとうございます』



僕は車に乗り込んだ。
ドアを閉めた後、十六夜も反対側から、車に乗った。



車が動きだすと、今日の疲れがでたのか、僕は急に眠たくなってきた。



『学園はどうでしたか?』



『……今日は…いろいろあったんだょ…嫌なことも、いい事も…』



『そうですか…それはお疲れでしたね?着いたら起こしますから、どうぞお休みくださいね?』



僕が眠たいのに気付いたのか、それ以上何も聞かずに、十六夜は僕に上着をかけてくれた。



『……ぅん……ありがとう……』



僕はそういって眠りに落ちた。



…………



…………



『………まさかな?』



ぼんやり目が覚めた僕。



十六夜は考えている様だった。



ポツリと独り言を洩らしていた。



僕は寝ぼけていたけど、この台詞は間違いなく聞き取れた。



僕はまだこの時、十六夜の台詞の意味を知らなかった。



心地よい車の振動に身をまかせて僕はまた心地よい眠りに落ちていった。

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