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夢か幻か

僕は重たい足取りのまま、教室の前まで歩いてきた。


人の気配がする教室。



僕はドアを開けた。



『雫!ずいぶん長かったね??』



信ちゃんは満面の笑みで僕に話し掛けた。



『あ…うんちょっとね……』



後ろめたい気持ちでいっぱいな僕は、信ちゃんを直視出来なかった。



『……?なんかあったの?』



『えっ…?何もないよ!転入の話しと、生徒会の雑用やるように言われたくらいだよ。』



僕は今までしたことのない全力の作り笑いで答えた。



『……ならいいんだけど?』



信ちゃんは少し疑問を持っていそうだったが、深く聞かずに流してくれた。



『でも、いきなり転入初日に生徒会に勧誘とは、雫はすごいなぁ〜』



『え?そうかな?面倒くさそうだし、微妙だよ。』



『なかなか生徒会になれないんだよ〜?しかも、生徒会になるとファンもたくさん出来るし…』



『…ファン?』



『ある意味生徒会役員の人達は高嶺の花だからね〜』



『そうなんだ。でも、僕は雑用係みたいなもんだからさ…』



『いーや、雫は可愛いからきっと人気者になるよ。うちのクラスの神谷も生徒会だから、かなり人気あるんだぜ?』



『……そうなんだ。』



この時僕はこれ以上面倒くさい事に巻き込まれないことを、ただただ祈るだけだった。



神谷恵…なんとか上手く付き合えたのならどんなに楽だろうな…



『やっぱり、頭いい奴はちがうなぁ〜』



『そんなこと言わないでよ…信ちゃんだって、学年上位なんだから、変わらないよ。』



『…確かに!』



そういって信ちゃんは笑った。



僕も信ちゃんにつられて笑った。



なんか信ちゃんといると、昔に戻った様な、暖かい空気になり、僕は落ち着く事ができる。



……僕はまだ信ちゃんが、好きなのだろう…



友達としてなのか…



男としてなのか…



どちらか今はわからないけど、今の僕には必要な存在である事は間違いなかった。



この暖かい空気を作り出してくれる、信ちゃん。



やっぱり僕の過去を知ったらこの時間は無くなってしまうよね……



学長に従うのは嫌だけど、信ちゃんがいなくなるのはもっと嫌だ。



お願いします神様。



僕は嫌なことも我慢します。



だから僕から、信ちゃんが離れないようにしてください。



笑いながら僕はこの時が続く事を祈っていた。

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