夢か幻か
7
『……なんでなんだ?』
『………』
僕は何も言えないでいた。
『……何か企んでるのか……?』
『………』
別に企んでなんかいない。
単なる取り引きだ。
でも、神谷恵になんて言っていいのかわからない。
『……何も言うことはないと言うことか……?』
『………』
『……絶対に仁時は渡さないからな………』
『……えっ…』
納得した。神谷恵は学長に好意を抱いている…
イコール・今学長に抱かれた僕は敵・ということだ。
でも、考え方によっては、神谷恵と学長がそういう関係になれば、
僕は少なくとも求められる回数は減るって事じゃないか?
雑用として使われているだけなら、全く問題無いわけだし……
僕はそう思い神谷恵に尋ねてみた。
『……もしかして…神谷君は学長の事………』
『…………だとしたらなんだ?』
めちゃくちゃ敵意丸出しな神谷恵。
『……いや、そうなら悪い事したなと……』
『……別に誤って貰う必要性は無い。』
『………ごめん……』
今神谷恵に何を言っても無駄だろうな…
完全に僕を敵視し、拒絶されてる気がした。
『……………』
再び沈黙の時間が訪れた。
『………』
その時、急にドアが開いた。
『………あ、仁時いなぃ〜?』
ノックもせずに入って来た男は、部屋を見渡しそういった。
『………学長は、今理事とお話し中です。
学長室に入るときはノックするのがマナーだと何回言えば………』
『まぁまぁ、あんま怖い顔すんなよ〜。』
『……まったく……』
『そんなに怒るとかっこいい顔が台無しだぜ?』
『……余計なお世話だ。』
彼が来てくれたおかげで、少し救われた僕は、二人のやりとりをただ見ていた。
『………で、この可愛こちゃんは誰なん?』
『……自己紹介くらいしたらどうだ?』
『……あ、僕、一ノ宮雫です。よろしくお願いします。』
神谷恵に言われて僕はあわてて自己紹介をした。
『へ〜雫っちゅー名前が更に可愛いやん♪彼氏おんの〜?』
『……い、いませんよ!』
『じゃ、俺チャンスあり?』
『えっ!?』
『自分めちゃくちゃ俺好み〜〜!』
うぇぇ〜!?
彼の第一印象は間違いなく、『チャラい男』だった。
『俺、志乃井 蓮♪よろしくな!しーちゃん♪』
『……よ、よろしくです。』
僕は、差し出された手を軽く握り握手した。
『……転入初日から、モテモテだな、一ノ宮……』
神谷恵が嫌味全開で、僕に言った。
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