夢か幻か
6
『失礼します。』
神谷恵だった。
『学長、理事がお見えになってます。』
『あ、やべ。忘れてたわ…恵、雫はこれから雑用係君だから、ちょっといろいろ教えといて?
俺理事んトコいってくるわ。』
『……了解いたしました。』
学長は部屋を後にした。
『……………』
やっぱり神谷恵と二人は苦手だなぁ…
またもや無言の時間が訪れた。
『…………』
『あのっ…僕なんかすることあります…?』
耐えきれなくなって、僕は神谷恵に話し掛けた。
『…………。』
神谷恵は無言だった。
またもや重たい空気が流れた。
学長室の時計の秒針の音がただただ鳴っていた。
神谷恵はずっと入り口の近くに立ったままだ。
重たい沈黙を打ち消したのは、神谷恵の一言だった。
『………お前…学長と何話してた…?』
『………えっ?……えっと……』
僕は戸惑っていた。
僕は神谷恵がいつの事を聞いているのかわからなくて、ちょっと返答に困っていた。
『……今?』
『………そうだ。』
『……普通に、学園はどう?みたいな会話をして、仕事手伝ってって感じの話しだったけど……』
『……それだけか…?』
『そうですょ?』
『………』
……なんかやけにつっかかってくる……
さすがに神谷恵には、学長に弱みを突き付けられ、抱かれた事は言えない……
確かに、今日来たばかりの転入生が、雑用係とはいえ、生徒会職務をするなんて普通じゃありえない。
何かあったと考えるのが普通だろう。
しかも、学長と付き合いが長い神谷恵なら、尚更そう思うだろう。
……でも……
学長がいない今、なんて言っていいのかわからない。
むしろ、僕が何でか聞きたいくらいだ。
僕がなにも言わないのに、痺れを切らしたのか、神谷恵は口を開いた。
『……お前今仁時とシてただろ……』
『……っ!?』
僕は顔が一気に赤くなった。
ま…さか………見られてた……??
『えっ…な、何言って……』
『………あんなけ喘いでたら、嫌でも聞こえる……』
『………』
最悪だ。まさか神谷恵に聞かれていたとは……
『…………』
僕はただ呆然としていた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!