夢か幻か
5
ご飯を食べながらいろいろな話をした。
大半は、一緒に過ごした当時の事だった。
やはり、伸ちゃんにも転入理由を聞かれたが、『家庭の事情ってやつで』と、本当の理由は言わなかった。
伸ちゃんも、『そっか〜ま、また逢えたしなっ』と、深くは追求してこなかった。
『それにしても雫は、本当可愛くなったよな〜』
『伸ちゃん〜僕も、男なんだから、可愛いってあんまり嬉しくないんだけど〜』
『そっか〜そうだよな〜。でも、可愛いもんは可愛いんだから、仕方ないよ!』
『伸ちゃんは、むちゃくちゃ男らしくなったよね?』
『だろ?俺は惚れたヤツは守れる男になりたいから、体鍛えてんだよ!』
『カッコいいね〜彼女が羨ましいや。』
『ま、今は彼女はいないけどな。』
『そうなんだぁ〜。でも、好きな子はいるの?』
『………まぁ…な…』
そういうと、伸ちゃんはちょっと黙ってしまった。
なんか僕マズイ事聞いちゃったかな?
『………雫は、今付き合ってる奴とかいるのか?』
『僕?いないよ〜!』
『そうか…いないのか……………かな?』
『え、なに?』
語尾の方が聞き取れなかった僕は聞き返した。
『あ、なんでもないよ。なんでもない!』
『気になるなぁ〜』
『まぁ、そんな事より、雫気をつけろよ?』
『……え?なにを?』
伸ちゃんは、いきなり話を変えた。
しかも急にちょっと真面目な顔になっていた。
『雫は可愛いから、いろいろ狙われるハズだから、知らない奴にはついていくなよ?』
『……?どういうこと?』
『………えっ?あ、いや………そ、そぅ!勧誘とか凄いと思うからさ!』
『えぇ何の?』
『とりあえず、特に委員会の人達には気をつけろよ。』
『…ん〜わかった。ありがとう伸ちゃん!』
よくわからないけど、伸ちゃんが言うなら、気をつけなきゃなと僕は思った。
そんな話をしているうちに、ご飯もすっかり食べおわっていた。
お皿を片付けにきたボーイが、紅茶を持って来てくれた。
やはり、その紅茶も今まで僕が飲んだ紅茶より格段に香りもよく、美味しかった。
とても和やかなお昼休みに僕は、幸せだった。
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