02 「そう。この任務に向かうのは、君を含め三人のエクソシストだ」 目的地に着くと、コムイは室内へと続く扉を開く。 大きな本棚に囲まれ、机上や床に散乱した書類や本。 一見図書室や資料室のような(いや、こんなに散らかっている図書室はないと思うが)この部屋が、コムイが執務に励む司令室である。 中へと足を踏み入れると、机の前に二つの背中を確認した。 「彼らが、今回君と行動する二人だよ」 扉が開く際の軋んだ音を聞きとったのか、視線の先の二人がこちらに振り返った。 一人は長い黒髪を一つにくくった青年。 まだクライサは顔を合わせた事のない人物だ。 もう一人は── 「アレン!」 白髪の少年。 彼女もよく知っている、この世界でラビの次に出会ったエクソシストだ。 ……違った。 ラビの次に会ったのはブックマンだった。 アレンはその次だ。 「今回の任務はクライサとなんですね」 「そうみたい。よろしくね、先輩」 「こちらこそ」 ひとまず挨拶を終えると、もう一人の青年へと目を向けた。 終始笑顔で対してくれたアレンとは違い、彼は先程からずっと不機嫌そうな表情をしている。 クライサに視線を向ける事すらしていない。 (なんか怒ってらっしゃる…?) 怒らせてしまうような事をしただろうか。 いや流石の自分でも、今初めて会ったばかりで、いきなり嫌われるような事はしていない筈だが。 「ああ、気にしないでください。神田はいつもこうなんですよ」 「カンダ?」 「彼のファミリーネームだよ、クライサちゃん」 神田ユウ。 それが黒髪の彼の名前だ。 だがファーストネームを呼ぶと物凄ーく怒るため、皆彼の事は『神田』と呼ぶらしい。 「神田、ね。あたしはクライサ・リミスク、よろしく」 第一印象は大切だ。 しかめっ面の彼に対しても彼女は笑顔を作り、握手でも、と右手を差し出す。 「……」 だが彼は、その手に目をくれようともしない。 (無視?まさか無視?) 腹が立つ。 せっかく人が友好関係を作ろうとしているのに。 あろう事か、無視ですか。 そうですか。 それなら、こっちだってそれ相応の対応をさせてもらいます。 だってほら、 等価交換、でしょう? [*前へ][次へ#] |