03
視界に入る彼の腕。
それをガシッと掴みまして、その手をギュッと握ってやりましょう。
「よろしくね?」
「…テメ……」
握り締めんばかりの強さでの握手。
流石に向こうも怒りのボルテージが上昇してきたようだ。
眉間の皺が深くなっていく。
あ、これは完全に嫌われたな。
でも構いません。
先に嫌われるような態度をとったのは、そちらですから。
「まあまあ二人とも、落ち着いて。喧嘩してちゃ任務の説明も出来ないでしょ?」
「……ちっ」
「ごめんごめん。説明を始めて、コムイ」
言葉による制止に力を緩めたところで、神田が強引に手を引いた。
それにより力任せの握手は中断され、今度は相互の睨み合いが始まる。
だが本気で不機嫌そうにしている神田に対し、クライサはどこか楽しげだ。
「今回君達には、イギリス内のとある街に向かってもらう」
彼ら三人の前に立ったコムイが漸くの説明を始める。
吊された地図を使って目的地を指し示すその顔は、普段クライサが見るおちゃらけた表情ではなく、事件時の彼女の兄のような司令官の顔。
こんな表情を見てしまうと、彼が自分達の上に立つ存在なのだと改めて実感する。
「目的はイノセンスの回収ですか?」
「そうだね。事前に探索部隊を向かわせて調査してあるから、イノセンスの場所は目処が立っている」
それをエクソシストであるアレン達に回収に向かって欲しいと言うのだ。
彼らの任務のほとんどがこのタイプであるため、大した質問も文句も言わずにこの仕事に取り掛かる事になる。
ただ、今回のケースは少し特殊だ。
「イノセンスの回収に、なんでエクソシストが三人も必要なんだ?」
普段彼らは、二人で組む事はあっても三人の時は滅多に無い。
神田やアレンは実力者だ。
二人でも十分に任務を遂行出来るだろう。
「…今回の目的はね、イノセンスの回収と、クライサちゃんの実戦訓練の場を作る事なんだ」
「へ?あたし?」
「そう。クライサちゃんはまだ入団したばかりで、対アクマ武器の扱いにも慣れてはいない」
アクマとの戦いでは、イノセンスの扱いが要となる。
それがまだ未熟であるなら、命の危険に遭う前に訓練しなければならない。
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