リクエスト
権勢(冬獅郎王族→四十六室を粛正)※オリジナル表現含みます。
きらびやかな廊下を悠然と歩く。
久しいその人の訪れに、すれ違う者は皆、頭を下げた。
そんな者たちに苦笑しつつ、その人は扉を開く。
目指す先は、霊王の元。
「たいちょー……あれ?」
「日番谷隊長でしたら、先ほど隊首会に行かれましたよ」
執務室の前を通りかかった隊士がそう告げる。
礼を言いつつ、乱菊は首を傾げた。
「隊首会なんて、聞いてないけど」
「先生。今、何と……?」
「最近、流魂街の住人が増加傾向にあるらしい。よって、処分しろとの命じゃ」
「どういうことですか!取り下げてください!」
「……ならぬ。四十六室の決定は絶対じゃ」
「しかし……」
「浮竹!やめさんよ。山じいは悪くない」
浮竹は傷付いたような顔をして俯く。
他の隊長たちも口には出さないが動揺を隠せずにいた。
「隊長。お帰りなさい」
「あぁ」
「どうしました?元気ないですね」
「……松本」
「何ですか?」
「もしも俺が……」
「日番谷くん。ちょっと良いかい?」
冬獅郎は弾かれたように声の主を見る。
「……京楽か。分かった」
「あっ!隊長」
京楽の元へと歩き始めた冬獅郎を、乱菊は呼び止める。
「仕事しとけよ」
いつもの台詞、いつもの表情に、乱菊は小さく頷いた。
「さっそく明日からだってさ」
「そうか」
「ありがとう。助かったよ」
「何がだ」
「あの件は隊長格だけで、って意見してくれたでしょ」
「当たり前だ。松本たちにさせられるかよ」
「そうだね……」
京楽は憂いたように空を見上げる。
「調子に乗りすぎだな」
冬獅郎の小さすぎる呟きは、誰にも聞こえなかった。
「ほう。で、お前はやっと帰って来たと思ったら、何をする気じゃ?冬獅郎」
「四十六室への介入の許可を」
「どの面下げて言っておる。死神になると、ここを去っておきながら」
「別に良いじゃないすか」
霊王は大きな溜息をついた。
「王族の中でも特別強い霊力を持っておったお主には、期待をしていた。可愛がっておったはずなんじゃがな」
「立派に隊長になったんすけど」
「知っておる。最年少で隊長となった神童じゃとな」
「……どうも」
「はっ!誉めたら誉めたで照れるくせにな」
「うっせぇな!」
「分かった分かった。何だかんだでお主のことは気に入っておる。良かろう」
冬獅郎は憮然とした表情で部屋を去った。
とん、とつま先をつく。
入口の光に影が差して、人々はそちらを見た。
円筒状の部屋の主たちは、一様に渋い顔をする。
「許可なく入ることは許されんぞ!日番谷十番隊隊長!」
その言葉に反応を示すことなく、銀髪はゆっくりと階段を降りはじめた。
「隊長といえど、この場所では無力であることを分かっているのか?」
比較的落ち着いた声音のそいつが長(おさ)だと見当をつけ、冬獅郎は顔を上げた。
「十番隊隊長としてではなく、訪れたとしたら?」
隊首羽織を身につけていないその姿に、幾人かが理解を示す。
「それは、王族として、か?」
「やはり、俺の素性は知ってたんだな」
冬獅郎は嘲るように笑った。
「好き勝手してくれたな。……覚悟しておけよ」
急速に上がった霊圧に、部屋の者たちは息を呑む。
どこからともなく、ぱきぱきと渇いた音が響いた。
「では、急に取り下げになったとおっしゃられるのですか?」
卯ノ花の驚愕を含んだ確認に、総隊長は頷く。
「ついさっきじゃ。よって、昨日の件は終いとする」
ほっと安堵の息を零す隊長たちの様子に、冬獅郎は微笑んだ。
「隊長。昨日の話の続きは……」
乱菊にしては珍しい、おずおずとした問い掛け。
「何でもねぇよ。忘れろ」
背を向けた冬獅郎に、乱菊は呟く。
「どこかへ行っちゃったり、しないでくださいね」
権勢
(隊長!「もしも俺が、お前を好きだと言ったらどうする?」ですかぁ?)
(違う)
めちゃくちゃオリジナルでした!ごめんなさいm(_ _)m冬獅郎の流魂街での生活、を完全に覆してしまいました(≧ヘ≦)王族一筋で行こうと思ったんですが、死神な冬獅郎が好きなので。苦情はいつでもお受けします。
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