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リクエスト
風邪薬(稀羅さんへ)
微かなきぬ擦(ず)れの音に目を開ける。

視界の端に、綺麗な白が見えた。

「……浮竹?」

掠れた声で名を紡げば、白がふわりと揺れる。

「やぁ、目が覚めたのかい?日番谷隊長」

浮竹は朗らかに笑った。



「何か飲むかい?」

「何で居るんだよ。ここは俺の部屋だぞ」

「松本副隊長に、君が風邪で寝込んでるって聞いてね。お見舞いに来たんだけど、返事がなかったから」

「だから入ったのか?」

「いけなかったかい?」

「別に」

「それは良かった」

浮竹は微笑むと、布団の傍らに膝をつく。

額にそっと触れる、掌(てのひら)の冷たさに目を閉じた。

「やっぱり熱いなぁ。つらいかい?」

「……いや。そこまでじゃねぇよ」

「嘘が上手だなぁ」

浮竹は苦笑気味に笑いながら、立ち上がった。

「水でも持って来るよ」

台所へと消える浮竹に、舌打ちを漏らす。

「……大丈夫だっつってんだろ」

ムスッとしていると、二つの霊圧を感じた。

「日番谷くんはもう少し人に頼ってもいいと思うよ」

部屋へと入って来たのは京楽と朽木。

朽木は真っ直ぐに歩いて来ると、ずいっと何かを突き出す。

でかい緑色の物体。

無駄にきりっとした顔には、覚えがあった。

「……わかめ大使」

「うむ。わかめ大使の抱きまくらだ」

見舞い品と言われれば、いらないとは口に出せず。

渋々受け取れば、満足げな表情をされた。

「似合うじゃないか!日番谷隊長」

戻って来た浮竹が、嬉しそうに笑う。

「嬉しかねぇぞ」

京楽が俺を見て吹き出した。

何だかムカついて大使を投げつければ、ぱふっと軽い音がする。

顔面をさする京楽を鋭く睨んだ。

「馬鹿にすんな」

京楽ははいはい、と適当な返事をしやがる。

尚も文句を言おうとしたけれど、頭痛が襲ってきて口を閉じた。

悪化してきたかもしれねぇ。

目に映る三人に、溜息を漏らしたとき。

「病人の傍ではお静かに」

静かな、けれど人を従わせるような声音が響いた。

ゆっくりと歩み寄り、穏やかに微笑む卯ノ花は、俺の頬に掌を当てる。

「あまり熱は下がっていませんね」

卯ノ花は眉間に皺を寄せるとそう言った。

「まさかとは思いますが。日番谷隊長の迷惑になるようなことは、していませんよね?」

三人はばつの悪そうな顔をする。

卯ノ花はにっこりと笑った。

「あなた方には、病人への配慮についての説明が必要そうですね」

ゆるりと始められた、卯ノ花の説明という名の説教に、俺はぽかんとする。

大人しくしている三人に、つい笑みが零れた。

「やっと笑ったね」

浮竹のほっとしたような声が頭に心地良く響いた。



風邪薬

(こんな特別なひとときが、俺を元気にしてくれる)





冬獅郎が風邪で寝込む→隊長格がお見舞い
でした( ̄○ ̄;)遅くなりまして申し訳ないです!ギャグにしたかったんですが思い付かず……。冬獅郎が病人っぽくない。隊長格も一部しか出せず(>_<)どうかお許し下さい(∋_∈)



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