リクエスト
神威(しんい)#2
甲高い、金属と金属が擦れ合う音が響く。
本人たちが楽しそうだからか、それは軽やかなリズムとなって耳に届く。
「えろう楽しんではりますなァ。十一番隊長はんは」
ギンは、つまらなそうに壁に寄り掛かった。
「結局は、更木の独り占めかぁ」
「あれだけの実力、見せられちゃねぇ」
浮竹たちが会話を交わす間も、戦いはヒートアップしていく。
振り下ろされた刀を紙一重でかわした冬獅郎は、すかさず左下から上へと刀を払う。
二人の髪が何本か、はらり、と舞った。
「やるねぇ」
京楽の呟きが合図かのように、二人は同時に動き出す。
突き出した冬獅郎の刀を左手で掴んだ剣八は、刀を突き出す。
「ちっ!」
冬獅郎は軽く跳躍すると、掴まれた刀を軸に、くるり、と一回転してそれをかわした。
「すばしっこい奴だなぁっ!チビ」
ぱき、と音がした。
とん、と着地した冬獅郎は、深く俯いている。
「あぁ!?もう終わり、とか言うんじゃねぇだろうなぁ?」
微かだった音が、だんだんと大きくなっていく。
剣八が驚いたように、左手を見た。
刀を伝う氷が、剣八の左手を飲み込んでいく。
「終わりにしてもらえると、思うなよ?」
顔を上げた冬獅郎は、怒りに満ちた声を発しながら笑った。
総隊長は、頭を抱える。
「春水、十四郎。日番谷を、止めるのじゃ」
いきなり大役を任された二人は、意味が分からないと総隊長を見た。
「あの言葉は、禁句なんじゃ」
あの言葉。
ますます、意味が分からない。
けれども、止めなければまずい。
ぴしぴし、と肌に刺さる霊圧が、そう告げていた。
剣八を助けなければ、と思ったのは、初めてのことかもしれない。
当の剣八は、心底嬉しそうに笑った。
「おもしれぇ!久々に、楽しめそうだぜ!」
左手を覆う氷を刀で叩き割り、そのまま眼帯の紐を切る。
霊圧が、爆発した。
冬獅郎は、慌てて飛び下がる。
そして、同じように笑った。
「化けもんかよ」
刀を構え、神経を研ぎ澄ます。
霊圧が高まっていくのを感じて、冬獅郎は突っ込んだ。
「ちょっ!日番谷くん!?」
京楽が止める隙(ひま)もなく、銀髪は霊圧の波に消えていく。
「山じぃ!」
総隊長は京楽の声に、のほほんと返す。
「もう、止めれんわい。放っておけ」
放っておけ、って。
浮竹を見れば呆れたように笑っていて、京楽も諦めた。
激しい霊圧の渦の中で、剣八の笑い声が聴こえる。
霊圧の渦にとぐろを巻くように現れた氷龍に、皆は、ぽかんとするのだった。
「楽しかったぜ。日番谷」
「そりゃどうも」
ひとしきり暴れた剣八が、刀を担いで去っていく。
冬獅郎は大人気ない行動を悔いており、ふて腐れたように言葉を返した。
「楽しんでおったのぅ」
胡座(あぐら)をかいていた冬獅郎が、後ろを仰ぎ見る。
その行動の可愛さに、総隊長は眉尻を下げた。
「つまんなくは、なかったっすよ」
どこまでも素直じゃない冬獅郎に、総隊長は笑みを漏らす。
「帰ろうかのぅ。日番谷」
「はい」
よっこらしょ、っと立ち上がった冬獅郎を確認して、総隊長は歩き出す。
刀を背に納めた冬獅郎は、少し早足で追いかけた。
「日番谷くんか……。隊長に、なるかもしれないね」
藍染の言葉に、浮竹は嬉しそうに頷く。
「そうだといいなぁ。仲良くなれそうだ」
「どんな根拠だい?浮竹」
京楽は、浮竹の能天気さとぼろぼろになった修練場に、溜息を零した。
神威(しんい)#2
(冬獅郎!お菓子、持って来たよ!)
(……また、来たんすか?浮竹隊長)
結局、剣八としか戦ってなくてすみません!戦闘描写、少ないし。もっと、精進します。ウチの冬獅郎は、一番隊第三席設定です。
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