リクエスト その先は未来#1(決戦後/冬獅郎は潤林安へ) きん、と冷える空気に、浮竹は空を見上げる。 「浮竹たいちょー!」 ふと聞こえた元気な声に振り向いた。 「やぁ!松本副隊長じゃないか」 駆けてくる乱菊に、浮竹はにこりと笑う。 「浮竹隊長!今日のクリスマスパーティー、来ていただけますよね!?」 「あぁ、そういえば今日だったな。毎年楽しみにしてるんだぞ」 「ありがとうございます!この行事だけは、やめたくないんです……」 浮竹は静かに笑みを浮かべる。 「日番谷も喜んでいるんじゃないカネ?」 二人は一瞬驚いたように肩を揺らすと表情を緩める。 「そうだな。今夜はきっと……」 「はい。今夜はきっと、雪が降りますね」 横を通り過ぎた人物の後ろ姿を見ながら、浮竹は小さく呟く。 「変わったな、涅は」 昔を懐かしむように、つい一年前のことを、浮竹はゆっくりと辿りはじめた。 話し声の漏れる研究室を少しだけ覗く。 パネルに向かうマユリとその隣に立つ白銀。 「……日番谷隊長?」 低く紡がれるそれと後ろ姿は確かに冬獅郎で。 「あとどれくらいかかる?」 「君の働きのおかげで復旧の手間がだいぶ省かれているからネ。予定よりも早く済ませそうダ」 「そうか。……ありがとな、涅。助かる」 ふっ、と冬獅郎の肩から力が抜ける。 マユリはそれを横目で見ながら問うた。 「……やめるのカネ?」 「何で分かった?」 冬獅郎が微かに笑みを漏らす。 「復興ではかなり関わっているからネ。少しは理解したつもりダヨ」 「みたいだな」 二人の間に流れる意外に穏やかな雰囲気に、浮竹は良いことだと笑う。 不意に振り向いた冬獅郎と目が合った。 「悪りィ、涅。また来るな」 踵を返して扉に近付いて来る冬獅郎に、浮竹は声をかける。 「やぁ、日番谷隊長」 「あぁ。傷はもう良いのか?」 「もちろんさ!」 浮竹は元気良く頷くと、歩き出した冬獅郎の隣に並んだ。 「何か用か?」 「……雛森副隊長のお見舞いに、ね」 「行かなくて良いのか?」 「君に聞けば分かるかと思って。さっきもその件だったんだろう?」 冬獅郎は少し困ったように頷く。 その表情の意味を、そのときの浮竹は読み取れなかった。 あらかたの復興が終わった、雛森の副隊長職復帰の頃、冬獅郎は瀞霊廷を去る。 その先は未来#1 (君の痕跡はまだ、人々の心に残っている) 2011.9.1 [*前へ][次へ#] [戻る] |