リクエスト 氷は溶ける#2 思い知らされた。 俺は本当に「子供」だ。 肝心な時には、何も出来やしない。 数日を冬獅郎の傍で過ごして、至った結論はそれだった。 相変わらず昏々(こんこん)と眠り続ける冬獅郎。 力無く投げ出された腕に触れてみれば、確かに温かい。 冬獅郎特有の、低めの体温。 力を分けてやりたくて、冬獅郎の掌(てのひら)を包み込む。 こんな行動も、ひどく子供っぽいと思った。 ――子供ね……。 乱菊さんの言葉が、脳内を駆け巡る。 俺が「子供」じゃなかったら、冬獅郎は目を覚ますのかよ? ……違うだろ? 誰にも、救えない。 こんなにも近くに居るのに……。 この手を強く、握っているのに……。 俺にはただ、願うことしか……。 祈ることしか……。 「冬獅郎……頼むから、起きてくれよ」 ……逢いたい。 いつものように、過ごしたいだけなんだ。 他愛のない俺の話に、面倒そうに、けれどきちんと相槌(あいづち)を打ってくれる、お前に逢いたい。 「冬獅郎……」 絞り出せたのは、その名だけだった。 「何で……泣いてる……」 掠れた声が届く。 それは、一番聴きたかった低音。 いちばん……。 「……冬獅郎」 いちばん、見たかった翡翠。 真っ直ぐに煌めくその瞳は、俺を見詰めている。 「何で泣いてんだ、って聞いてんだよ……」 俺、泣いてたのか……。 急に恥ずかしくなって、慌てて袖で頬を拭う。 「な、泣いてねぇよ!」 「そうかよ」 見なかったふりをしてくれる、そんな気遣いが懐かしく思えた。 「……良かった。……奇跡、起きてくれた……」 自分でも分かるほどに、安堵した声音。 聡い冬獅郎はすぐに気付くと、申し訳なさそうな表情をする。 「迷惑かけたな。悪い」 「迷惑なんかじゃねぇよ!……俺は大丈夫だから」 「だが……少し痩せた」 両手で包んだ左手が、ぴくりと動いた。 「わ、悪ぃ!」 ぱっと手を離すと、冬獅郎は緩く笑う。 「……ありがとう」 あまりにも、自然に言葉にされた思い。 「どうしたんだよ?」 何に対してのお礼なのか解らなかった。 「お前が連れ戻してくれたような気がしたんだ」 まるでそれが真実かのように、冬獅郎はいつも通りの凛とした声で言う。 待ってるだけじゃなくて、迎えに行けたなら……。 そう言ってくれるなら……。 まだ、こんな自分を嫌わなくても良いだろうか? お前がお礼を言ってくれるほどの、男になれたなら……。 氷は溶ける#2 (仕事……溜まってる……よな……?) (……さ、さぁ?) (術中にはまるor誰かを庇う)冬獅郎重症→ひとり冬獅郎の生を信じる者 でした。なんかばりばり一日ですね……。苦手だったらごめんなさいっ!そして乱菊さんが……十番隊夫婦がモットーのウチはびっくりしてます( ̄○ ̄;) [*前へ][次へ#] [戻る] |