短篇 怪現象(冬獅郎+白哉) 「白哉様、日番谷様がお出ででございます」 「……通せ」 清家(せいけ)が、丁寧な動作で襖を開く。 そこから顔を出した冬獅郎に、白哉は声を掛けた。 「どうした?兄(けい)が、ここに来るなどと」 「あー。屋敷にまで押しかけて、悪かったな」 「気に病むことはない。兄一人ならば、静かだ」 冬獅郎は、乱菊を思い出して苦笑した。 「この書類、今日中にお前の判が必要なんだ。六番隊に行ったら、休みだって聞いたからよ」 「それは、すまなかったな」 「いい。息抜きになった」 白哉が書類を読みはじめたため、暇になった冬獅郎は、静かに腰を下ろした。 「これで、良いか?」 「あぁ、十分だ。……邪魔したな」 冬獅郎は、襖を開いた。 「そういや、朽木。池の鯉(こい)、なんか減ってねぇか?」 その言葉に、白哉は眉をひそめた。 「どうしたのだ?急に」 「別に。ここまで来る時に、思っただけだ。じゃあな」 「……消えたのだ」 「はぁ?」 襖を閉めようとした手を止めて、白哉を見る。 「話では、甲高い笑い声と、桃色の何かが通ったと聞いている」 「それって……」 怪現象 (……草鹿じゃねぇの?) (……) (お前って、意外と抜けてるよな) (気付かなかったわけではない) (気付かなかったんだな) [*前へ][次へ#] |