短篇 いろんな表情(冬獅郎+京楽+七緒) 「お願いだよぅ。日番谷くん!」 「だから、何で俺なんだよ!伊勢でも、連れてけよ」 「だってさ、七緒ちゃんたら……」 「もう春だねぇ」 「……そうですね」 珍しく、仕事してください、という言葉じゃなかったことに、京楽は驚く。 窓の向こうで咲く桜は、見惚れるほどに美しい。 そんな光景に目を細める七緒に、京楽は声を掛けた。 「お花見でも、どう?」 しばらく、ぼうっとしていた七緒は、その言葉に青筋を立てた。 「何、言ってるんですか!?仕事してください」 京楽は、いつもの台詞に溜息をついたのだった。 「と、いうことなんだよ」 「俺、関係あったか?」 何だかんだで話を聴いている自分に呆れつつも、冬獅郎は言った。 「日番谷くんからも、言ってよ。真面目な君が言えば、来てくれるからさぁ」 「京楽と花見に行くんだが、お前もどうだ、ってことか?」 「さっすが、日番谷くん!神童だねぇ」 「俺も、忙しいんだがな」 冬獅郎は、今も逃亡中の副官に、溜息を漏らした。 「そこを、頼むよ。……息抜きさせてやりたくてさ。七緒ちゃん、たぶん桜がすっごく好きなはずなんだよ」 冬獅郎は、ふっと笑った。 「そういうところを見せれば、伊勢も見直すんじゃないか」 大人の表情で微笑んでいる京楽を見遣る。 「仕方ねぇ。今回は、特別だからな」 冬獅郎は、かたん、と席を立った。 いろんな表情 (七緒ちゃん。この桜も霞んでしまうほど、君は綺麗だ) (何だか気持ち悪いので、やめてください) (えぇっ!) (京楽。そういう意味じゃねぇぞ) [*前へ][次へ#] |