短篇 甘美な夕食(冬獅郎+乱菊) 「お邪魔しまーす!」 「何がお邪魔します、だ!勝手に入って来るな!」 冬獅郎の制止も虚しく、乱菊はするりと部屋の侵入を果たした。 十番隊隊舎、冬獅郎の自室。 「良いじゃないですかー!今日仕事頑張ったんだし!」 「あれが普通なんだ!てか、ここに来た理由になってねぇぞ」 「それはお腹が空いたからです!」 「はぁ?ガキか、お前は」 「ガキにガキって言われた!」 二人はムッとした表情で睨み合う。 「帰れ。あいにくガキは寝る時間なんでな」 ごそごそと冬獅郎は布団を取り出す。 「根に持たないでください!あたしはどうすればいいんですか!」 「知るか。また明日な」 電気を消そうとする冬獅郎に、乱菊は襲い掛かった。 「うおぉっ!怖えーよ!」 乱菊を押し戻しながら、冬獅郎は大声を出す。 「仕事終わった時にはもう食堂が閉まってて!お腹ぺこぺこなんです!」 冬獅郎はぴたりと動きを止める。 「自分で作れば良いじゃねぇか」 「……あたし、家事苦手なんですよ」 ぼそりと呟かれた言葉に、冬獅郎は笑った。 「仕方ねぇなぁ。簡単なもんしか作らねぇぞ」 「作ってくれるんですか!?」 きらきらと瞳を輝かせる乱菊を押し戻し切ると、冬獅郎は台所へと足を進めた。 「今日頑張った褒美だ」 甘美な夕食 (隊長、おいしいですー!) (そりゃ良かったな) (あたしの主夫になってくださいよ) (お前みたいながさつな嫁はいらん) [*前へ][次へ#] |