短篇 隊長としての(十番隊/冬獅郎独白) 例えばだ。 高慢で傲慢な貴族と、勇敢に戦って息絶えそうな死神が、虚に襲われていたとする。 どちらかしか助けられないと言われたならば、前者を選ぶのが当然のことだ。 しかし、もしもその現実に直面した時、俺は果してどうするだろう。 当然のことだと割り切って、前者を選べるだろうか。 もしも、その死神が十番隊の隊士だったら? 否、俺は後者を選ぶかもしれない。 それは許されないことだ。 この世界で死神として、隊長として生きる限り、そんなことは断じて許されない。 けれど、それでも。 譲れない想いがある。 人を蔑むことしかできない高みに座す貴族と、自分を目指し走り続ける部下。 秤にかけるまでもない、と思うんだ。 どちらも護ってみせるなんて言うつもりはない。 どちらを選ぶこともできない。 こんな俺は狡いかもしれない。 それでも、この腕に抱える全てを護りたいと。 今日も、愚かな俺は考える。 隊長としての (俺の役目は必死で追いかけてくるあいつらを、護ることだろ?) [次へ#] |