[携帯モード] [URL送信]

岡田以蔵
岡田以蔵(仮)
「時は今から少しばかり遡りまして、風潮乱れる江戸末期」
「後に幕末、と呼ばれる時代ですな。」
「貴方は幕末の志士、と聞くと、一体誰を思い浮かべるでしょうか。」
「例を挙げるのならば、坂本竜馬や中岡慎太郎。」
「桂小五郎に、西郷隆盛…と言った所でしょうな?」
「が、しかぁ〜し!(カカン!)今回お話する人物は、そんな表の顔を持った人ではぁ御座いません。」
「陰に生き、陰に散った、ある独りの人斬りの物語。」
「彼の名は、岡田以蔵。(客席の真ん中に立っている以蔵。台詞後、ピンスポ)またの名を」
「「人斬り以蔵。」」
(刀を抜き、構え)
「何故彼がそのように呼ばれるようになったかは…ま、いずれ本文で話すと致しましょう。」
「まぁ長話も何ですし!そろそろ幕を上げさせて頂こうと思います。」
「舞台は土佐藩。今の高知県がある所に御座います。」
「それでは皆々様!「」特と!」
「「御照覧あれ!!」」
井上、かなり酔った様子で出てくる。       井上「いやぁ〜悪いな!料亭であんなに奢って貰うなんてなぁ!」
以蔵「いぇ。私も貴方とお話出来て光栄です。なんて言いましても、我が土佐藩の下横目ですからね。(台詞を言いながら舞台に上がる)」
井上「(照れて)そ、そうか?…それにしても、今日は何故某を呼んだのだ?何か話が…」
以蔵「それは…(刀を抜いて)こうする為ですよ。井上佐一郎さん。(切りかかる)」           井上「(避けて)なっ…!?」
隠れていた以蔵の仲間(2人)、出てくる。     以蔵「死んで貰いますよ。武市様の為に。」
殺陣。井上、必死に抵抗するが刀を弾かれ斬られる。
以蔵「邪魔者1人、消去…これも全ては…武市様の為…(何かに取り付かれたように去る)」
暗転。井上ハケた後サスQ。サスの中で将棋盤に駒を並べている武市。 武市「井上の暗殺に成功したか…して、死体は?」
家臣「は。道頓堀川に捨てたそうです。」
武市「(手を止めて)そうか。御苦労であった。下の者達に褒美を渡しておけ。」
家臣「は。」
家臣去る。
武市「さて…また早々に働いて貰うとしよう。」
武市、将棋盤に駒を打つ。武市「駒には上手く動いて貰わねば、な。」
武市笑う。暗転。

〜第二章〜
袖から出てきて、センターに座る。刀を磨き始める以蔵。暗い表情。すると、物置である襖から声が。
○○「また人を斬ったのか?」
以蔵「(磨きながら)…あぁ。」
○○「人斬りなんて止めちょけ。あまりいい仕事じゃあないぜよ。」
以蔵「だが!…オレに出来るのは、こんな事位しかないから仕方なぃ…(はっと気づいて)誰だ、てめぇ?何処にいる?」
刀を持ち、いつでも抜ける状態に構え、当たりを見ながら歩き出す。
竜馬「(開けると同時に)儂じゃ。」
以蔵「ぎゃあ゛!!」
竜馬「んな驚かんくてもえぇじゃろ。」
以蔵「竜馬ぁ!?ば…ばっかてめぇ!いつからそこにいた!!」
竜馬「ずっと前。お前が帰って来る前からずっとじゃ。」
以蔵「不当侵入すんなよ!土足で!しかも押入に隠れやがって!」
竜馬「それゆーなら不法侵入な。んな事よりよーなぁ以蔵。」
以蔵「無視するな。」
竜馬「おめぇに頼みたいことがあるんじゃ。」
以蔵「何?」
竜馬「勝海舟さん、って知っちょるか?」
以蔵「かつ…?武市先生から聞いたことはあっが…」竜馬「実はな。おめぇにその人の護衛を頼みたいんじゃが…」
以蔵「やだ。」
竜馬「速球!?いやもうちょい考えてくれよー!」
以蔵「お前、誰に何頼んでるか分かっちょるのか?俺は人斬りじゃ。人斬りに人の稽古を頼む奴がどこにおるぜよ。」
竜馬「警護な。警護。ここにおるき。」
以蔵「あんなぁ…」
竜馬「頼むぜよ以蔵〜おまんしか信じられる奴がおらんのじゃき!な、この通り!な?」
以蔵「…信じる?この俺を?」
竜馬「うん?な〜に驚いちょるが。親友を信じるっちゃー、当たり前のことじゃろ?」
以蔵「そう…なのか?」
竜馬「そうじゃ!」
以蔵「そ…そうか!(嬉しそうに)分かった!護衛、やっちゃるよ!」
勝「(物置から)おぉそれは有り難い!これから是非とも頼みますぞ!!」
以蔵「ぎゃあ゛あ゛あ゛!!」竜馬「勝先生じゃき。」
以蔵「何でもういるんだよ!そして何でお前と同じ所から同情すんだよぉ!」
竜馬「それを言うなら登場じゃ。いゃあ…だっていちいち呼びに言ったんじゃ危ないしめんどいじゃろ。」以蔵「いや…て言うか俺が断ってたらどうしてたんだよ!」
竜馬「さぁ?考えちょらんかった。」
以蔵「おい…」
竜馬「儂は以蔵を信じてた。それだけじゃダメなんか?」
以蔵「…いや。」
竜馬「(笑って肩をたたく)それじゃあ、頼むぜよ!グッドラックじゃ、以蔵!(去る)」
以蔵「…ぐどらぐ?何じゃそれ…」
勝「メリケンの言葉だ。グッドラック、幸運を祈る。」
以蔵「幸運を。」
勝「ま、これから頼むよ。岡田以蔵君。」
以蔵「あ…あぁ。」
暗転。
            その後勝の護衛をする事になった以蔵は、勝によって護衛と共にいろんな物を見ることになる。時には船に同伴する事もあった。

波の音。船の上。
甲板にそれぞれ倒れている勝と以蔵。船酔いしているのだ。
勝「あっはっは…ど〜だ以蔵、初めての船に乗った気分は〜?」
以蔵「気分〜?…最悪じゃ…うっ!(吐く)」
勝「はっはっは…俺もだ。何回乗っても慣れないんだよなぁ〜船酔…ウェッ」
以蔵「何でも良いが、頼むからこっちに吐いてくれんなよ。」
勝「わぁってるわぁってる…ウッ」
以蔵「言ってるそばからぁ!吐くならあっちで吐いてこーい!」 勝「いやぁ大丈夫だ…それより以蔵、この船が何で動いてるか知っているか?」以蔵「え?…さぁ。」   勝「これは風で動いているんだ。まぁいわゆる追い風ってやつだ。上に帆があるだろう。あれで風を受けて進むんだ。」      以蔵「へぇ。」      勝「すばらしいとは思わんか?」         以蔵「は?」       勝「見えなくともこの様なでかい物も動かす力を持っている。すばらしいとは思わんか?」       以蔵「…さぁ。」     勝「私もああいう風になりたいものだ。」     以蔵「風にか?」     勝「あぁ。だから…ウッ(口を押さえる)」      以蔵「いぃ!続きは後でいいから向こうで吐いてこい!ここで吐くな!!」   勝「(OKサインを出しながらはける)」        以蔵「(勝がはけたのを見、上を見上げる。)…風、ねぇ…」         暗転。

袖から出てくる勝。その後にムスッとした表情の以蔵が出てくる。
勝「おい以蔵!なんて顔してんだ。護衛最終日なんだぞ?ほらもっと明るい顔せんか!」
以蔵「やかましい!昨日儂は夜までおめぇさんの番をしていて寝不足なんじゃい!昨日の船酔いも残っとるし、しかも朝っぱらから行きたい所があるからと引っ張りおって…言っとくがな、儂はおまんを認めた訳じゃないからな!」
勝「お前がそう思うならそうおもえばいいさ。私は守って貰っている以上、何も口は出さん。実はな、最後にお前さんに見せたいものと渡したいものがあるんだよ。どうしてもな。」
以蔵「ならいっそ、今渡せ…(何かを感じ取り、黙り込む)」
勝「んだよお堅いなぁ〜もっと気楽に…」
以蔵「黙れ勝!刺客じゃ!!」
たちまち3人の刺客に囲まれる。刺客(3人)vs以蔵の殺陣。以蔵、一人を切る。
以蔵「去ね!…死にたくなきゃな。」
刺客「ひ…ひぃぃ!!」
刺客、逃げる。
勝「…今のは。」
以蔵「ん?」
勝「殺さなくても追い払えたんじゃないのか?脅すだけで、十分じゃなかったのか?」
以蔵「…なにが言いたい。」勝「以蔵よ。お前は少し人を斬るということを考えた方がいい。」
以蔵「…(少し笑い)でもな、もしあん時儂がいなかったら、あんたの首が飛んでいただろうよ。」
勝「(驚く。が急に笑い出して)そうだ。確かにそうだ。私の負けだな。(景色に気づいて)そんな事より、着いたぞ。ほら!」
以蔵「…何だ?」
勝「何って、丘だよ。んなこともわかんねぇのか?重傷だな…」
以蔵「そりゃ俺だって分かるわ!…何でこんなとこに連れてきたかって聞いてんだ。」
勝「以蔵。この丘から、何が見える?」
以蔵「え、京の町と…海?」
勝「そうだ。して、お前はこの海の先に何があるか知っているか。」
以蔵「…知らん。何があるんじゃ?」
勝「国だ。」
以蔵「国?」
勝「そして、その国は日の本とは全く違う文化を持っている。食べ物や服装、そして言葉にいたるまでな。」
以蔵「それって竜馬が前にいっていた、あれか。ぐど…何とか。」
勝「あぁそうだ。そして今その国が、日の本を侵略しようと乗り込んできて飲み込もうとしておる。幕府内はもうてんてこ舞いだ。そんな余所者に日の本が飲み込まれんように幕府に変わって対処しようと考えてるのが、今の私と竜馬なんだ。分かるか?」
以蔵「?…??」
勝「ははっ!まぁ急にこんな話されても分からんわな。まぁ…要するに俺達は追い風になろうとしてんだな。」          以蔵「追い風?」     勝「そうだ。今のみだりに乱れた日の本を良きものとするように後ろから後押しするんだ。ほら、先刻乗った船あるだろ。あの時の風のようにな。」
以蔵「…俺は馬鹿だから、政の事はよう分からん。だから、俺は今俺の出来ることをやるだけだ。風になどならん。」
勝「そうか。(少し景色を見て)…先刻の話の続きだが。」
以蔵「へ?」
勝「刀は何の為にあると思う。」
以蔵「悪い奴に、天誅を与える為じゃ。儂はそう思う。」
勝「…私はな、刀は活人剣だと思う。」
以蔵「かつじんけん?って何じゃ。」
勝「人を活かす剣、すなわち人を守る剣だ。」
以蔵「活かす?守る?誰を?」
勝「そんなん、人それぞれだろ。現に今、お前は私を守っている。」
以蔵「それは!竜馬に頼まれた事だし…友の約束は、守らん訳にはいかない。」勝「結局守ってんじゃねぇか。」
以蔵「は?…は?」
勝「竜馬との約束を守るために私を守る。十分じゃないか!」
以蔵「そうなのか?」
勝「あともう一つ。活人剣というのはだな、斬っても殺さない剣ということだ。」
以蔵「斬るのに殺さない?」
勝「人を殺したとなれば、どんな理由であれ立派な殺人者だ。良いことではない。真の武士たるならば、人斬りなんぞしない。」
以蔵「でも武市先生は!武市先生は、悪い奴を斬るならそれは殺人なんかじゃない、それは天誅じゃと言っていた。それが真の武士じゃと言っとった!」       勝「それは違う。」    以蔵「違わない!」    勝「それは。只武士になりたがっている奴のいうことだ。」
以蔵「武市先生を馬鹿にすんなぁぁぁ!!(抜刀)」
勝「…以蔵。(懐からピストルを出す。)」
以蔵「何じゃ!(発砲)わぁ!?」
勝「お前に渡したかったものだ。リボルバーという。形は違えど、刀と同じ人を殺める事が出来るものだ。」
以蔵「り…りば…?」
勝「これで「人を守る刀」の意味を少し分かって欲しい。なぁ、お前は人を斬る時何を考える。」
以蔵「何を…?分からん。儂は只俺を信じてくれる者の為、無我夢中で人を斬っていた。考えなぞ覚えていない。」
勝「そうか。だが、活人剣が分かればおのずと自分と向き合えるはずだ。」
以蔵「儂は馬鹿じゃから、あんたの言うとることはよく分からん。」
勝「そのうち分かる。その時まで、馬鹿は馬鹿らしく馬鹿のまま生きてりゃいい。」
以蔵「…何か、そぅ馬鹿馬鹿何回も連呼されると、自覚してでも腹立つのな。」勝「ま、要は考えるんだ。考えて考えて答えを出す。そうすれば、おのずと答えなんざは出てくるもんさ。」
以蔵「そうか。うん。よく分からないけど、何か分かった気がする。有り難う、勝…先生。」
勝「(笑いながら)勝でいいよ。そっちの方が、馬鹿なお前らしい。」
以蔵「…そうだな。」
勝「お、もう暗くなってきたな。じゃあ宿屋に戻るか。」
以蔵「あぁ。」
勝、はける。

To be continue...

[次へ#]

1/5ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!