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時代劇ファンタジー
画竜点睛( 台本)=四章=
季節は変わって秋。木枯らしが吹いている。

照明がつく。布団が敷いてあり、お咲が寝ている。

龍吟「じゃあ、大人しくしてるんだよ。」
お咲「ん。」
龍吟「なるべく早く帰ってくるから。お土産は何が良い?」
お咲「金平糖!」
龍吟「あはは…お咲は変わらないねえ…外見はこんなに大人びて、身長も伸びているのにさ。」
お咲「龍吟は出会ったときから変わらないわ。」
龍吟「そりゃそうだ。変えてないものさ。昔変えたら龍吟じゃないって言って泣いたのは誰だい?」
お咲「だって歳をとるんじゃなくて姿を変えちゃうじゃない!龍吟は…(せき込む)」
龍吟「おいおい!大声出すんじゃないよ、風邪気味なんだから。」
お咲「うん…ケホッ」
龍吟「具合が悪くなったら下にいる主人方を呼ぶんだよ。あんまり動き回ってはだめだからね。あとちゃんと薬は飲みな。それと…」
お咲「もぅ分かったってば。龍吟は本当にお節介焼きね。」
龍吟「本当…に?言われてみれば確かに…お咲と一緒になってから、お節介になったかもなぁ。」
お咲「私はもぅ大人よ?龍吟はずっと大人だけど…だから大丈夫だから。ね?ほら早く仕事に行きなよ。」龍吟「ずっと大人、ねぇ…そういえばアタシは、何時に大人になったんだか…」
お咲「たまにそんな事言うのは、変わってないわね。(笑って)ほら、早く行かないと暗くなっちゃうわよ?」
龍吟「あぁ、そうだね。じゃあ行ってくるよ。」
お咲「(笑って)うん。行ってらっしゃい。」
龍吟「(外に出る)…早いねぇ…あれからもう13年か。しかし、身はやっぱりお咲だね。お土産は金平糖に、着物は絶対に赤だものなぁ」
お咲「(窓から顔を出して)龍吟!行ってらっしゃーい!(手を振る)」
龍吟「!あぁ!…土産に、金平糖買ってくるからな!(手を振る)」

二人、笑いながら手を振った。

龍吟「…笑顔も変わらないな。(はける)」

はけた後、不気味なBGMがF.I

一瞬の暗転。宿の入り口がボロボロになっている。龍吟、機嫌良く帰ってくるが、宿の異様な雰囲気に気がつき、宿に入ると部屋の隅で主人達がガタガタと震えている。


龍吟「…何があったんだい。」

主人達、混乱していて中々話が出来ない。

使用人「ぞ、賊…が…」
龍吟「賊…?(はっと二階をみる)お咲っ!」

二階に駆け上がる。部屋は荒れ、人影は無い。

龍吟「お咲…お咲!何処だい!」

ガタガタという音が聞こえる

龍吟「!…小鬼だね。お咲は何処に行ったかわかるかい」
小鬼1「お咲さん、浚われた、浚われた」
小鬼2「こわい人間、連れてった、連れてった」
龍吟「何だって!?お咲が浚われてった方は分かるかい!?」
小鬼3「あっち、あっち」
小鬼4「あっちにいったよ」
小鬼、上手を指さす。

龍吟「…そうかい。ありがとよ。これはお礼だ(袋から一掴みの金平糖を渡し、指を指した方を見る)…頼む、無事でいておくれ…」
龍吟、走り出す
暗転

光がつくと龍吟が走ってき、止まる


龍吟「…随分走ったね…ここらは随分と寂れてるじゃないか。店も家も少ないし、人とも滅多にすれ違わない。目の前には…太い川に架かる橋が見えるね…もう少しで町から出ちまうじゃないか。まさか、町から出たんじゃないだろうね…」
また走り出そうとしたとき、男達とすれ違う。男達は商人が扱うような大きな籠を背負っており、その籠からは、何やら布のような物がはみ出している。

龍吟足を止める。

龍吟「…ちょいと、そこのアンタ達。」

男達、足を止める。
「あぁ?」「何だ。」と言う台詞を吐きながら振り返る。


龍吟「その籠に入っている、赤い着物はどうしたんだぃ?」

男達、にやにや笑い始める

男1「どうしたってなぁ。」
男2「拾ったんだよ。」
男3「あぁ拾った。」
男4「それがどうしたっつうんだよ。」
龍吟「…お咲は…お咲はどこだい。」


男達、龍吟を面白そうに見る

男1「さぁなぁ。」
男2「その着物をくれたら、教えてやるぜ。」
男3「着物をよこしな!」

龍吟、男達を睨む。その瞬間、龍吟の直ぐ後ろでカッと雷が落ちる。


龍吟「(ドスの利いた声で)あたしは気が長くはない方なんだ…黒こげになりたくなければ答えな。お咲はどこだ!」

雷の音と同時に、一瞬暗転


明かりがつくと、辺りに立っているのは龍吟と一人の男だけになっている。ほかの奴らは全員、龍吟によって伸されてしまっている。無事な男でさえも、腰を抜かして震えている。


龍吟「…もう一度だけ問うよ。お咲は何処なんだぃ。」
男4「あ、あの女ならな。こ、殺して埋めちまったよ!あ、あんまり暴れるもんだからよ…着物にす、すがりついて「これは大事なものだから」って…だ、だから…(龍吟、睨む)ひっ!」
龍吟「…!」

次の瞬間、ドス、と言う鈍い音が聞こえたかと思うと、龍吟はぐらりと体が前に揺れ、倒れる。


男3「は、ははは…!油断したな、化け物!俺達をなめんじゃねぇよ!」

他の男達も起き上がり、笑い始める。
しかし、刀を握り一気に引き抜き、ゆっくりと起き上がる龍吟を見るなり、男達は顔をひきつらせる。

男1「お、起きやがった!」
男2「やはり化け物だ!」
化け物、化け物と男達が叫ぶ中、龍吟が男を睨むと水の激しい音(滝のような)が鳴り響く。

男3「な、何だ…」
男4「川から水柱が…?」
男2「し、しかも…龍みてぇな形になってきてるぞ…」
男1「あいつがやってるのか…?…」
龍吟「どうしても死にたいようだね…じゃあお望み通り、地獄に送ってやるよ!」


その瞬間、龍の水柱が男達を飲み込む。男達の叫び声と共に暗転。



明かりがつくと、辺りは何もなくなって龍吟だけが膝を突いて荒く息をしている。

龍吟「はぁ…はぁ…」

ふらり、ふらりと男達が背負っていた籠に近づいて開き、赤で金の鶴をあしらった着物を取り出し、広げる


龍吟「…あぁ、本当にお咲は…殺されてしまったのか。嘘では、ないんだな……っ(駕籠を蹴る)何故…守れなかったんだ…あたしは…妖怪なのに…守り神なのに…なんて…なんて出来損ない…!…」



龍吟、胸を押さえ一瞬うずくまるが、やがて着物を持ち、立ち上がる。

龍吟「…っ…ぁあ…ああああああああーーー!(叫ぶ)」

ガクッと膝を突き頭を抱える。

BGM(RADWIMPS・有心論)が入り、起きあがった龍吟にサス。龍吟は目を瞑っている。後ろはブルーシルエットでお咲らしき人が立っている。


龍吟「…あたしは…これからどうすればいい?お前無しじゃあ、『しあわせ』なぞ見つけれやしない…兎に角今は、自分に腹が立って、悔しくて、辛くて、哀しくて…淋しくて。…お咲、助けておくれよ、お咲…!」

後ろのお咲がぼんやり浮かび上がる

お咲「…大丈夫、だって龍吟はずぅっと大人でしょう?」
龍吟「一緒にいてくれると言ったじゃないか…」
お咲「龍吟、神様はね、生きている時間を大切に出来るその為に、人間の命に終わりを作ったの。だからね、いつかは必ずお別れをしなきゃならなかったのよ。私の場合、少し早くお別れしなくちゃならなかっただけ。」
龍吟「お前がいなきゃ無理なんだよ!」
お咲「大丈夫、大丈夫。きっとまた、私と会ったみたいに誰かと巡り会えるわ。」
龍吟「…お咲と…会ったみたいに…?」
お咲「そう。出会いはいつも一期一会なのよ、龍吟。だから龍吟、人との出会いを大切に…一期一会の為に生きて?私は龍吟が信じてくれれば、いつも近くにいるから。…ね、龍吟…龍吟は、いつまでも今のままの龍吟でいてね…」


お咲、消えていく。龍吟は只、黙って見送る。やがて赤い着物を羽織り、正面を見る
曲、フェードアップ!


龍吟「…お咲」


セリフと共に曲・照明同時カットアウト。


暗転


語りにサス

語り「私が語れる物語は、これで本当におしまい。しかしながら、物語に終わりというものは御座いません。果たして龍吟はどうなったか…」



龍吟歩いてくる。と、子供にぶつかる

龍吟「おっと。…すまないね。」
子供「い、いいえこちらこそ…!…あの、間違ってたらすみませんが…貴方妖怪じゃないです…?」
龍吟「えっ何で分か…」
手代「若ぁ!どちらに行かれましたか?若!」
手代2「若!お遊びがすぎますぞー!」
子供「まずい…(龍吟を見て)私は菓子屋を商っている店の若旦那ですが、訳あって妖怪とは親しいのです。良ければ一度立ち寄って下さいな。店の名は咲福屋…」
手代二人「若ぁあ〜!!」
子供「うわっ!そ、それでは失礼します!(逃げる)」
龍吟「あ、おい…」


子供がはけた後に手代が入ってくる


手代1「…全く、逃げ足の早い…」
龍吟「あの、あんたら今の子供の…てか、あんたらもあやかしか…?」
手代2「ん?…あぁ、あんたも若旦那に目を付けられたんかい?」
手代1「へぇ、そりゃあ大変だ(笑う)」
龍吟「いや…え?」
手代2「かくゆう俺たちも、若旦那に拾われたんだけどねぇ」
手代1「あの坊ちゃんは手ぇやくぞ?」
手代2「でもま、ふらふら何百年とこの世を生きるより、よっぽど楽しいけどね。」
龍吟「いや、まだ行くと決めた訳じゃ…」
手代1「来るも来ないも勝手だが」
手代2「そんな顔してずぅっと暮らすより、よっぽど良いとは思うがね」
龍吟「…(顔に触る)」
手代1「店の名は咲福屋。ま、気が向いたらおいでな。じゃ。」

手代達、去る


龍吟「…咲福屋…ねぇ。」


羽織っている赤い着物を握る


龍吟「…分かっているさね。出会いは一期一会、なんだろう?お咲。」


手代達が去った方へ歩き出す。


語り「(龍吟が去った方を見つめている)…それはまた、別の話なので御座います。此度は御視聴、ありがとうございまする。また…貴方様方とお会いできる日を、心待ちにしております。」


語り、一礼する。
音響アップで照明F.O






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