[携帯モード] [URL送信]

時代劇ファンタジー
黒猫変化
序章〜運命の出会い、救いの光〜

(真ん中に黒猫が立っている)
「見て、黒猫だ!」
「おぉ、なんと禍禍しい姿。」
「薄気味悪い奴だ。」
「あぁ恐ろしい、死の使いじゃ。」
「村から追い出せ、きっとこいつは災いを呼ぶ。」
「否、生かしては世界に災いを呼ぶ。」
「追い出せ。」
「取り殺せ。」
「殺せ。」
「「コロセ!」」
(倒れる黒猫。すると宇助に光が射す)
宇助「(手を差し伸べ)…やぁ、素敵なおチビさん。…俺達、よく似てるな。」
(暗転)

一章〜平和な生活、一筋の闇〜

 何かぶつぶつ言いながら文を書いている

宇助「…拝啓、夏様…本日はお日柄も良く…うーん、これじゃあ堅苦しすぎるかな…(くしゃくしゃに丸め、投げ捨てる)…よっ夏っちゃん!元気!?…俺は相変わらずだよ〜あっはっは…馴れ馴れしすぎるな。(捨てる)…やぁ!今日の朝飯何だった?…意味分からんな…(以下、続く)」
黒猫「(紙くずが頭に当たる)…ったぁく、まだやってんのか?」
宇助「五月蝿い。関係ないだろう。」
黒猫「関係ない訳あるか。お前が働かんと俺は飯も食えん。」
宇助「毎日ちゃんと出してるだろう?」
黒猫「小魚一匹で一日生きていけるかっ!大体お前こそ食ってないだろう。恋文なんぞ夜通し書きやがって…(一枚紙を開く)…拝啓…」
宇助「あーあーあー!(殴る)馬鹿声に出して読むんじゃねぇー!」
黒猫「ぃ゛っで!こんのやろ…」
宇助「今俺は忙しい。邪魔をするな。」
黒猫「…はぁ…ったく…(空中にゆっくりと何かを書く)」
宇助「…!(手が勝手に動き出す)お、おぃこら…止めろ!」
黒猫「止めねぇよ。お前がそれを書き終わらんと俺は飯を食えねぇ。」
宇助「勝手に食べてこい。金は机の上に…」
黒猫「そーいう意味じゃねぇ。お前がそれを終わらせて飯を食うまで俺が安心して飯を食えねえっつってんだよ。」
宇助「…っ…。」
黒猫「(手を止める)ほら、終わったぜ。これでどうだ?」
宇助「(手が止まる)…(読む)…うぉ…すげぇ…!」
黒猫「これでいいだろ?ほら、飯食いに行こうぜ。」
宇助「おぅ!いやー助かった助かった!今日は何でも食わしてやるからな!!」
黒猫「うは!マジで!?やった♪(歩き出す)」
宇助「その前にコイツを夏に渡してからな。」
黒猫「(コケる)」
(暗転)
宇助「いゃー今回はお前に助けられっぱなしだったな!お陰で全て上々だ♪」
黒猫「フツー手紙渡すだけに一刻以上かけるか…?結局渡したのも俺だし…(ぶつぶつ)」
宇助「何にせよお前には沢山助けて貰ったしな!今日はじゃんじゃん食ってくれ!」
黒猫「いや、じゃんじゃんっつーけどよ…金あるのか?ろくに働いてないのに…」
宇助「無いよ?」
黒猫「はぁ?!?」
宇助「後払いだよあ・と・ば・ら・い!金入った時に纏めて払うから!」
黒猫「ふざけるなよ!後々食っていけなくなるだろうが!」
宇助「大ー丈夫だって!何とかなるよ!…多分。」
黒猫「多分っつったな?!今多分っつったな!?」
宇助「何だよ、結局食うのか?食わねぇのか?」
黒猫「食う。」
宇助「そーこなくっちゃ!親父!うな重くれ!」
黒猫「俺二つ!」
宇助「そんなに喰えんのかぁ?」
黒猫「じゃんじゃん食えっつったのは何処の何奴だよ。」
宇助「しょーがねーなー、親父!うな重四つな!」
黒猫「お前も二つ食うのか!」
宇助「良いじゃねぇかよ、俺だって頑張った!自分にご褒美!(運ばれてくる)おし、食うぞー!」
黒猫「(ため息)」
(以下、黒猫にスポット)
「見つけたぞ、黒猫。」
「化け猫世界の恥めが。」
黒猫「!!」
「お前ほどの奴が、あんなヘマをおかすなんて。」
「しかも人間に飼い慣らされるとはな…気でも違ったか。」
黒猫「…五月蠅い…」
「しかし、このままのうのうと過ごせると思うなよ。」
「お前がここにいる事で、こちらの世界が乱れ始めてる。」
「早々に戻らぬとお前の命も危ない。」
黒猫「俺など…どうなっても構わねぇ。」
「お前だけでは済まぬぞ。」
黒猫「何っ…?」
「そこにいる人間…宇助、とか言ったか?」
「お前に関わっている以上、コイツも消さなくてはならぬな。」
「いや、むしろコイツを殺せばお前は生き長らえられるやもしれぬ。」
黒猫「そ、んな…止めろ!コイツは、コイツだけは!」
「ほー?そこまで情が移ったのか?」
「死神とも呼ばれたお前がここまで落ちぶれるとはな…何とも哀れな。」
黒猫「黙れ!俺などいつ死んでも構わぬ身…だがコイツは!コイツは許してやってくれ!頼む!」
「頼む、と言われてもなぁ…」
「儂等は御上の命で動く。貴殿等の処分は全て御上の決定により決まる。」
「儂等に決定する力はない。」
黒猫「…ならば、去ね。去って御上に伝えよ。『黒猫は帰らぬ。死神ではなく、天に仕えるものになると申し候』とな。」
「…フン。せいぜい武運を祈るぞ。」
「じゃあな、黒猫。」
(照明、戻る)
宇助「黒猫?」
黒猫「(ハッ)あ、あぁ?」
宇助「どうしたんだ?ぼーっとして。食わねぇの?」黒猫「あ、あぁ食べる食べる!(がっつく)」
宇助「(笑い)ゆっくり食べろよ〜…(欠伸)…あぁ、腹一杯になったら眠くなってきたなぁ…」
黒猫「全部食い終わってたのか…少し寝たらどうだ。俺が食い終わったら起こしてやるから。」
宇助「うーん…そう…す…る…か…(寝る)」
黒猫「(宇助を見て)…守りきるさ、この命に代えても…。」
(暗転)
宇助「あー動くな!被写体が動いては描けぬだろう!?」
黒猫「…あのさ、実はこの格好もの凄く辛いって分かってる?」
宇助「絵が描けんと金が入らん。とすると飯が食えなくなると言うことだ。飯が食えんのと今辛い思いするのどっちがいい。」
黒猫「…ったく…」
(暫く無言で描く)
宇助「…どうしたんだ?」
黒猫「へ?何が?」
宇助「お前、元気がないようだが。」
黒猫「な…っ…ばっか言うんじゃね…」
宇助「誤魔化すな。…お前が嘘を付くと…バレバレだぞ。」
黒猫「…はぁ…お前にはかなわねぇな。実は…」
宇助「恋の悩みか?気になる猫がいるとか?まぁどの生物にも恋はあるものだしなー!力になれるか分からんが、俺に出来ることがあれば何でも…」
黒猫「ちゃうわー!お前と一緒にすんじゃねー!」
宇助「は!まさか逆にモテすぎて困るとか!?確かにお前はそこらの人間より美男子で男前だが…そ、そんなもん、羨ましくなんかないんだからねー!」
黒猫「一人勘違いで突っ走るなー!戻ってこいやぁ!」
宇助「何だ、違うのか。」
黒猫「人が深刻な話しようとしてる中、一人妄想に走るんじゃねぇよ。良いから聞け。こりゃ俺とお前の生死に関わる問題だ。」
宇助「なぁ〜にぃ〜!?俺とお前の!?」
黒猫「そうだ。だから大人しく聞…」
宇助「心中でもしようってのか!?」
黒猫「何が悲しゅうてお前と心中しなくちゃならねーんだよ!」
宇助「生活苦?」
黒猫「俺は一人でも十分生きていけるわぃ!」
宇助「まぁ落ち着け。(茶を出す)」
黒猫「誰の所為だ!!…はぁ…疲れた…」
宇助「まぁそうカッカするな。気楽にいこう、気楽に。(ニコニコ)」
黒猫「…脳天気だな、アンタは。(茶を飲む)」
宇助「そこが長所なんでね。」
黒猫「(ふっと笑う)…でも、俺はそこに惚れたんだよなぁ…」
宇助「あー…ごめんなさい。」
黒猫「誰も告白なんかしてねぇよ!」
宇助「え、だって惚れたって…」
黒猫「受け取り方がちげぇぇ!俺が言いたかったのは…っ!(何かを察し、辺りを見渡す)」
宇助「?くろね…」
黒猫「喋るな!黙ってろ!!」
宇助「!!(黙る)」
(不気味な雰囲気が漂う)
「見つけたぞ、黒猫。」
「裏切り者め。」
「死にたくなくば、人間を渡せ。」
「そこにいる人間の、魂を渡せ。」
「出来ぬなら、二人仲良く地獄行きだ。」
宇助「!?」
黒猫「先刻ぬしらには伝えたはずだ。俺はもうそこには戻らん。こいつを命かけて、守りきる。」
「戻らぬのなら、殺すまで。」
「渡さぬなら、殺すまで。」「「さらばだ、黒猫。(手を翳す)」」
黒猫「っく!」
宇助「待てっ!」
「「!(止まる)」」
黒猫「宇…助?」
宇助「待て待て待て!俺には全く話が見えんぞ?お前等は誰だ?どうして俺らを狙っている?」
「「…。」」
「黒猫から、聞いていないのか。」
「ならば、聞かせてやろう。」
「冥土の土産に、教えてやろう。」
「そこにいるのは黒猫。」
「言わずもがなとは思うが此奴は。」
「見ての通り聞いての通りの化け猫妖怪。」
「此奴は、その中でも化け物中の化け物。」
黒猫「…っ。」
宇助「どういう意味だ?」
「此奴の姿は、闇夜を移したような漆黒の姿。」
「闇は全てのモノを飲み込む。」
「漆黒は災いの種と言われる。」
「人の世界でも妖怪の世界でも、何処に行っても此奴は一人。」
宇助「そんな…姿だけで、区別するのか!?」
「だが此奴は、術に関しては一流だった。」
「そこを見抜いた俺達の主…御上が此奴を拾った。」
宇助「御上?」
「拾った後、御上は此奴に色々な命を出した。」
宇助「命?どんな命だ?」
「それは時に人を惑わせという命だったり、」
「時に人の魂を取ってこいという命だった。」
宇助「…と、いうと…?」
黒猫「…つまり、人類に混乱を起こせという命だったり、人を殺して来いっていう命だって事。」
宇助「そんな…!」
黒猫「好きでやってた訳じゃねぇ。でも仕方がなかった!こうでもしねぇと…俺の存在理由が消えてしまうと思ったから…。」
宇助「黒猫…。」
「黒猫は御上から受けた命を易々とこなしていった。」
「そうしてその仕事っぷりから、『死神』という異名が付いた。」
黒猫「決して良いなじゃないって事は分かってた。だけど俺は嬉しかった!皆が俺を知っている。俺は此処にいるって分かっているんだ!と…。」
宇助「だ、だがそんな事続けたら…」
黒猫「そう。人間世界でも噂になり始めた。『死人居る所に黒猫有り』…ってな。」
「そんな日々が続いたある日。」
「此奴は此処らしくもない過失を犯した。」
黒猫「いつもの通り、仕事をしようとした時だ。大勢の人間に見つかり、袋叩きにされた。…どうせ、死んでも誰も悲しまない存在だ。俺は死を覚悟した。と、その時…」
「「お前が現れた。」」
「化け猫は、人に懐いてはいけないという掟がある。」
「掟を破った以上、消えて貰わなくてはならぬ。」
宇助「なんと勝手な…!」
「卑怯だろうが勝手だろうが」
「これは此方の世界の決まり事。」
「決まり事は守らなくてはならぬ。」
宇助「だがっ…!」
黒猫「止めろ、宇助!話の通じる相手じゃねぇ!」
「賢いな、さすが黒猫。」
「ならば、そのまま賢いまま死ね。」
「「さらばだ。」」
黒猫「っく…(印をきる)此処じゃ分が悪い、一旦逃げるぞ!目ぇ瞑れ、宇助!」
宇助「あ、あぁ!(瞑る)」
「逃がすか。(術で捕まえようとする)」
黒猫「雷(ライ)!(叫ぶと同時に雷光。雷光の後、舞台が暗くなる)」
「ぐ…!」
「目が…っ」
黒猫「行くぞ!(宇助を引っ張り、はける)」
「…逃がしたか。」
「案ずるな。たかが2人だ。所詮は多勢に無勢さ。」
「そうだな。」
「フフッ…せいぜい逃げ回るが良い。運命の時が来るまでな。」
(暗転)
黒猫「はぁ…はぁ…ここまでくりゃーひとまず大丈夫だろ…大丈夫か?宇助。」
宇助「いや…大丈夫ってかさぁ…ひとまず頭が要領一杯で…」
黒猫「…まさか…さっきの話、半分も理解出来てないとか?」
宇助「あ…あはは(笑)」
黒猫「分かったような掛け合いしてなかったか!?」
宇助「あ〜あれはだな…ノリだ、ノ・リ☆」
黒猫「…(ため息)じゃ、まず全体を簡単に説明しようか。黒猫であるこの俺はどの世界でも嫌われてるの。そこは理解したか?」
宇助「理解出来ません!」
黒猫「いや、あのな…」
宇助「だって何で黒いってだけで特別扱いすんだよ!おかしいじゃねーか!差別じゃねーか!クソだなまったく!」
黒猫「それ、言い過ぎ。」
宇助「だって黒くたって中は他の猫と変わんないんだぜ!?何でそんな…」
黒猫「生物は暗闇を恐れる性質がある。それ故、自然と黒色に恐怖を感じるのさ。」
宇助「そう、なのか?」
黒猫「お前だって、前も見えないような暗闇に行くと怖くなるだろ?」
宇助「あ、なるほど。」
黒猫「そんな訳で、全身真っ黒い俺は怖いって自然に思っちゃうわけ。分かったか?」
宇助「何となく。」
黒猫「…で、そんなだったから俺は何処からも受け入れてもらえなかった。そんな俺を拾ってくれたのがさっきの奴らの主…まぁお前等で言うと大将みたいなもんだ。」
宇助「ほぅほぅ。」
黒猫「で、俺は拾われた代わりにやりたくもない仕事に就いた。」
宇助「うんうん。」
黒猫「…ちゃんと分かってんのか?」
宇助「え?あ、あぁ、もちろん?」
黒猫「なぜ疑問系…まぁいい。とりあえずそのやりたくもない仕事を続けてたある日…」
宇助「俺と出会った。」
黒猫「そうだ。そこは分かったんだな。」
宇助「うん。あの日俺は写生の練習の為外を歩いてたんだ。そんな時に人集りを見つけて、何事かと思って近づいた。その時、初めて黒猫に会った。」
黒猫「何とか人が去ったが、瀕死状態だった俺に手を差し伸べたのはお前だけだったな。そしてお前はこう言った。」
宇・黒「『やぁ、素敵なおチビさん。…俺達、よく似てるな。』」
宇助「覚えてたのか。」
黒猫「当たり前だろ。あんな優しくされたのは生まれて初めてだったからな。」
宇助「そっか。」
黒猫「…一つ疑問なんだが。」
宇助「ん?」
黒猫「あのとき、何でお前は俺と『似てる』何ていったんだ?似てる要素なんて何処にもないだろ?」
宇助「う〜んそうだなぁ…独りぼっち、だった所とか?」
黒猫「え?」
宇助「俺はね、運動はダメ、頭も悪い。おまけに仲間と喋るのも苦手。何も出来ない奴だったんだ。だからいっつもバカにされて、いっつも一人仲間外れだった。」
黒猫「…。」
宇助「そんな俺にも、一つだけ得意な事があった。絵を描くことだ。絵を描くことだけには絶対の自信があった!」
黒猫「…あぁ。」
宇助「だから俺は大きくなったら、有名な画家になろうと思った!有名になって、皆を見返してやろうと!…そして俺は村を出た。誰にも知らせず、一人こっそりと。」
黒猫「独りで…」
宇助「旅して、旅して、そしてこの場所にたどり着いた。此処なら、少しは俺の才能を認めてくれる人達がいたんだ。だから、こうして暮らせてる。」
黒猫「…何で」
宇助「ん?」
黒猫「何でそうも明るく過去を話せるんだ!?辛かったんだろう?寂しかったんじゃないのか?何で今、こうして笑ってられる!?なぁ、何でだよ!!」
宇助「そんなの、決まっているだろ?今が幸せだからだよ。」
黒猫「(動きが止まる)…今が…幸せ…?」
宇助「そうさ!今が幸せならそれでよし!過去がどうであれ、今が良ければそれでいいんじゃないか?」
黒猫「…。」
宇助「過去の嫌な事なんて思い出さなきゃいい。それよりも前を向いて、明日に向かって歩いていくことが最優先だろ?…それに、今はお前が居る。お前には、俺が居る!独りぼっちじゃないじゃないか!」
黒猫「…あぁ…」
宇助「(笑いながら手で黒猫の顔を挟む)しけた顔をするな!黒猫!」
黒猫「(顔を挟まれる)ぶっ!」
宇助「大丈夫、どんな奴が襲ってきても絶対に死なない!2人で生きよう!な!?」
黒猫「…(苦笑)…あぁ…!」宇助「(欠伸)」
黒猫「…疲れたか?少し寝ろ。多分、これから慌ただしくなるからな。」
宇助「うん…」
黒猫「(息を吐く)…(チリン、という音)!何だ…(首から下がっている鈴を触る)鈴?」
(宇助を見、笑う)
黒猫「消えるの防止、ってか…何だかんだ言いながら結構寂しがりだよなお前は。…安心しろ、お前を独りになんかさせないからな…。」
(暗転)





[次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!