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ZS置場2
世界が終わる
プチ企画の趣旨とはズレてるのですが記憶喪失繋がりでUP。何故なら記憶喪失が発覚した場面がないからです。
その後の場面から始まっています。あの・・・時間が取れない中で焦って書いてたのでそんな感じの出来です(










部屋の中、誰も見ないのに付けっぱなしのTVが途方に暮れた様子でインタビューに答える姿を放送している
このところしょっちゅう見るその風景は 既に自分達の生活に馴染みつつあった

「今日もまた消えたらしいな」
「また?」

ニュースを見たのか呟いたのはこの部屋の家主であるウソップで、答えたのは俺。
拾って貰った代わりにこの家の家事を引き受けているのだが、やはり自分の家ではないからか
どうにもしっくりこないキッチンで作り上げた朝食を運んで 自分もテーブルについた

TVが伝えていたのは失踪のニュースで、家出したりする必要も原因もない人間が姿を消す事が最近増えているのだ
あまりにも続くので、大掛かりな人身売買などの事件かもしれないと噂になりはじめていた
「案外、おまえみたいになってるのかもな?」
ウソップの案に そうかもしれないけど・・・と顔を曇らせながら呟くと、だってそうだろう?とウソップが手を伸ばす
ひょいと頭にのせられたのは、彼と出会った時に被っていた背の高い白い山高帽(コック帽)で、それに因んで自分は今
料理長と呼ばれている
「まだ、何も思い出せないのか?」
「・・・なんにも。」
ウソップに拾われた時、"料理長"は自分の事を何も覚えていなかった
生活習慣だとか、生きていくのに必要な最低限の事は理解していた。なのに、自分の家も、名前も、何もかもが
頭からすっぽり抜け落ちていて、途方に暮れていたところを彼に助けられた
ウソップの言う "おまえと同じ" というのは、忽然と姿を消した人間が 実は自分のように記憶を失っていて
それぞれがどこかの街で暮らしているのではないかと考えているらしい
「でも、家族の届け出で捜索してんだろ?」
警察の手を借りての捜索で見つからないなんておかしいじゃねぇか。 消えているのは1人や2人じゃないんだから。
誰一人足取りを追えないのは有り得ない
そう主張する料理長を眺めたウソップは にこりと口角を引き上げた
「頭はきちんと働いてるみたいだなぁ」
「ちょ、俺ぁ別に自分の事を思い出せないだけでパーになったわけじゃねぇぞ?!」
馬鹿にすんなよと鼻息を荒げた料理長に 冗談だ、そんなに怒るなよと諫めたウソップから 冷める前に喰おうぜと言われて
むくれながらパンに手を伸ばす
おまえの届けも出してるのに連絡来ないなぁ、という呟きには無視を決め込んで 料理長は手にしたパンに齧り付いた

考えられる事は2つ。
自分には失踪届や捜索願を出すような家族がいない
或いは、届けが出された場所はここから遠く離れた(例えば他の国だとか・・・)土地で、こんな所にまで問い合わせが来ない
そのどちらだとしても、身元をはっきりさせる術はないように思われる
(だから、俺が思い出すのが一番手っ取り早い)
問題は どうやったら記憶が戻るのか、その1点だけなんだがな・・・と、小さく溜息を吐いて 冷めかけた紅茶をごくりと飲み干す

それを見ていたウソップは 相手が落ち込んでいるとでも思ったのだろうか、何やら思案顔で口を開いた
「うちで籠もりきって考えても状況は変わんねぇだろ。何かの切っ掛けで思い出す事もあるだろうし、気分転換に
出掛けてみるか?」
少しばかり焦りを感じていた料理長も その提案はなかなか良い考えに思えて そうだな、と同意する
こうして、その夜 ウソップの仕事がはけての帰宅を待って 料理長とウソップは 夜の街へと繰り出した






その日、ゾロは女と別れた

そもそも別れたというよりもゾロには付き合っていたという覚えがない。
何よりも、ゾロは ごく一部だけだが記憶喪失に陥っていて、自分の名前も覚えちゃいなかった
幸いだったのは記憶を失ったのが女と一緒に居る時で、名前も自宅も、女からの情報で得たものだった
女によると 少し前に自分達は付き合う事になったらしい
まだ付き合い始めて日も浅いというものの、ゾロの家には既に女の服やなんかがそろっていて、
同棲とまではいかないがある程度親しい付き合いをするつもりだったと窺える
その部屋で、女に示された学生証には確かに自分の顔写真が貼ってあった

"ロロノア・ゾロ"

どうにも馴染まないその名前は自分のものだという自覚が薄い
「ねぇ、ゾロ・・・」 と、撓垂れ掛かって甘えてくる女にも、"これじゃない"という思いの方が強く感じられ、
その熟れたボディが自慢らしい女の身体にも3日で飽きた
「悪いけどよ、」
ゾロの無くした記憶を補うのを手伝ってくれた女に悪いと1週間は耐えた
だが、日増しに募る "こいつじゃねぇ" という思いに とうとうゾロは痺れを切らした
「別れてくれ。 我慢して付き合うのだとか、多分俺の柄じゃねぇと思う」
うまく言葉を飾る事も女のプライドを壊さずに別れを切り出す事も自分には不得手だろうなと思った時には
後の祭りで、散々喚き散らした女のヒステリーに堪りかねて追い出した後の部屋の惨状は、
片付けようという気にもなれないほどの散らかりようで。
女からの開放感もあったゾロは、一人の夜を謳歌しようとそのまま部屋から街へと出て行った




「よう、ゾロ。もう別れたのか?」
一人で外を歩けば あちこちから声が掛かって苦笑する
どうやら自分が「一人で夜の街を歩く事=女と切れた」ことになるらしい
「おまえまた綺麗に切れてねぇんだろ。サンジも居ないのに、どうやって部屋片付けんだぁ?」
俺ぁ手伝いなんかごめんだぜと笑って手を上げた友人の一人に言われて眉間に皺が寄る
今、聞き覚えのない名前を耳にした気がしたんだが。

"サンジ? 誰だ、そいつ"

聞こうとしたその一言は、何故か口に出すのが躊躇われて声に出さずに呑み込んだ
(どっちにしろ、今は居ねぇんだろ。 なんかあったらそん時はそん時だ)
ぶる、と首を振って先程の疑問を追い払う
今夜はどこかで好きなだけ旨い酒を飲むかと切り換えたゾロは、昨日までの女やその女の知り合いと
顔を合わすのも面倒だと普段使う場所を避けて目に着いた店の扉を開けて入っていった

(こんな時、鼻の効く奴が居たと思うんだが・・・)
初めての店でも不思議と雰囲気の良くて旨いところを選ぶのが得意な誰か。
一緒に居る事に馴染んだ相手が誰かいたような気がするのに、思い出せない
(失くした記憶は"俺"の事だけじゃねぇのか?)
出されたグラスに口を付けながら、そういえばさっき 誰だかの事も分からなかったなと思い出す
そいつが帰ってくれば何か分かるかもしれねぇな。
・・・なら、気長に待つまでだ
酒を呷るゾロはあくまでも現実を楽観視していて、今は自由の身を楽しもうと余計な事は隅へと追い遣った






「って、聞いてるか?」
豪快に笑って隣の人間の肩を叩いたゾロは、痛ぇって!と言う声で我に返った
店に入った時は一人だってはずだ。暫くはそのまま一人きりで飲んでいたはずの自分が、肩を組まんばかりに
している相手は誰だ?
ぐっとそちらへ顔を向けて見れば、生意気そうな男が 困ったような顔でゾロに肩を組まれていて、
「てめえ酒癖悪いなぁ」 と話すと 苦笑のようなもの浮かべた
苦笑・・・と呼ぶにはその笑顔は どこかゾロの不躾さを赦していて、興味の湧いたゾロが男の顔をまじまじと見つめる
な、なんだ? とゾロに見つめられて居心地悪そうに目を瞬かせた相手を、不意に、手に入れたくなった
「へえ・・・あんた結構美人だな。 試しに、俺と付き合ってみねぇ?」
「はぁ? 美人って、俺、どう見ても男なんだけど」
あんた相当酔ってるだろ、と笑った顔が ゾロの目には本当に好ましく見えて 嘘じゃねぇよと相手の肩を引き寄せ、
笑ってられんのも今のうちだけだぞと思いながら唇を奪う
ねっとりとしつこい口付けを与えて、最後にぺろりと唇を舐めて身を離すと驚いた顔の男が ひっく、としゃっくりのような声を立てて
目をぱちぱちと瞬いた後、じっとゾロの顔を覗き込んだ
「・・・てめえ、本気か?」
本気と思えるまで何度でもキスしてやるぜと笑うと、男は何か言い淀むように口を噤んだ後、あのさ、と話し始める
「俺、男とどうこうする趣味なんてねぇんだけど・・・」
んだよ、押せばイケルと思ったのに予防線かよと舌打ちしたい気分で眉を顰めたゾロの隣で 男はやけに真剣な声を出した
「なんか、予感がする。 あんたなら、いいかもって気がする・・・」
どこか懐かしいっていうか、てめえの事知ってるような気がすんだ
「今も。ほら・・・こうすると、何かを思い出しそうになる」
男がゾロの手を握って言う。
彼の言葉にのせられてなのか違うのか、その手を懐かしいと感じた気がして、知らずのうちに 握る手に力が籠もっていく
「なぁ。冗談じゃなくホントに付き合ってみねぇか」
思わず口を突いて出た言葉に自分で目を瞠る
男の方も 考えるより先に口が答えを出してしまったようで、「うん・・・」 という返事に目を上げて見つめ合った途端に、
「あっ」
何かが脳裏を過ぎって 二人は同時に声を上げた

「ゾロ!?」
「サンジじゃねぇか!」

それまでの口説き、口説かれていた雰囲気が一瞬で瓦解する
「え、うそだろ、なんで・・・・ってか、俺、・・・えぇっ!?」
全部思い出したかも・・・と呟くサンジはまだ動揺が収まらないらしい
ゾロの方はといえば、漏れ聞こえる言葉の端々から なんとなく、想像が付いて 一人納得していた
気付いてみればサンジの向こうには彼の連れらしい男が不審そうに自分達を見ていて、
「なぁ、こいつ。 もしかして記憶喪失だったり、しねぇ?」
酔っ払ったゾロと ただならぬ雰囲気だったサンジに口を挟めずにいたらしい相手に聞いてみる
案の定、男は戸惑ったようにだが、それでもゾロの言葉に肯いた
「原因もなんとなく分かる。サンジ、てめえ あの女になんか言われただろう」
突如話を振られて 「え、」と 慌てたようにサンジが顔を左右に揺らす
ゾロと一緒に暮らしたいと思ったであろう女がルームシェアの相手のサンジを邪魔に思ったのは簡単に想像がつく
「あの女とは別れた。それと、1つ言っておくけど、おまえが居なくなると同時に俺も記憶を無くしちまってた」
弾ける勢いでゾロを振り返ったサンジの驚いた顔を、暫くの間眺めずに居たなんて、そりゃ、しっくり来ないはずだ

「なぁ、それで。 気付いちまったんだけど」
「な、なにが」
顔を寄せたゾロから 少しばかり距離を取ったサンジに にやりと口角を上げる

「俺とおまえ。くっつくべき相手が離れちまったから、世界が歪んだんだ」
帰ってこいよ。 それで世界は元に戻る。これ以上いたずらに行方不明者を作るのは罪だろ

むちゃくちゃな理屈で追い詰めながら、これ以上逃げようがないくらいに椅子の端まで身を引いたサンジの腕を掴んだ
「俺も、よぅく分かったぜ? 女じゃなくったって構わねぇ。おまえじゃなきゃ、駄目だ」
言うべき事を一気に告げると、真っ赤な顔で言葉を無くしているサンジと、もう一度、深く唇を合わせた







 おまえがいないと世界が終わる














詳しく練ってなくて細かい設定は決めてないのですがもし本当にくっつくべき二人が間違えて違う相手と付き合った為に
歪みが生じたんだとしたら、間違いが正されるまで一人また一人と人間が消えていき最後に二人だけが残ったりしても
面白いかなー?


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