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SS置場5
逆輸入 天使3

今回の件を見逃す変わりに"ある男"を改心させてみろ

神の用件というのはティーチという男を改心させて真っ当な道へ導け、という事だった

あぁ、俺の苦手な仕事。
とはいえ、命令受けちゃったからには仕方ない
諦めて俺はティーチという男に近づいた・・・・・・んだけど。


「って!!あのひげ親父!とんだ曲者じゃないかっ」
これ絶対難しい類の仕事だよ
まさか無理難題押しつけてやっかい払いとか考えてないよな?

ティーチという男は信念を持って数限りない悪事を働いていた。
こういう人間を改心させるというのはかなり至難の業だ
まず、自分が大切に思っている人がいない
そして良心・・という物を持っていないように見受けられる
これで、どこに訴えかけて改心に持ってけっての?

なら・・・この男を改心させる事が不可能だったなら――
せめて今この男が陥れようとしてる人間を救おう
白髭の親父の命令を叶えるとまではいかないけれど、せめてこの人間を助けたい
エース、という そばかすの男が 今まさにティーチにはめられて無実の罪を着せられようとしている
(しかも、この人。薄々ティーチの本性に気づいてる。)
だけどまだ信じたいんだ。
でも。ダメだ、ティーチはもうあんたの事は駒としか捉えていない
むしろ信用したいという気持ちを利用して罠にはめようとしている

キャスケットは羽を隠してエースに近づき、何度も忠告した
だけどその努力もむなしく空ぶってしまい、
遂に―――キャスケットの目の前でエースは殺人の罪を着せられてしまう
本当の殺人者はティーチなのに

ここに至るまでに、キャスケットはエースに忠告する傍らティーチの罠を暴こうとしてみた
何重にも巡らされた罠。
一つを解いても別の策が張られていた
(こいつ・・!)
まともな方向へ頭を使えば相当のところまで上り詰める事が出来るのに。
加えて悪事に手を染める事に何の躊躇いもないんだから、そりゃ飛ぶ鳥を落とす勢いで頭角を現しても不思議じゃない
せめてキャスケットとエースが協力する事が出来ていれば凌げたのかもしれないけど。
エースは最後までティーチを信じるという態度を貫いた
自分一人の力ではエースを救う事ができなかった――
(いや、諦めるもんか、まだ判決は出ていないんだ)
手っ取り早いのは証拠をつき付けてやる事・・・でもあのティーチが証拠なんて残してるはずもない

或いは――殺人自体を、止める・・・?

浮かんだ考えに思わずごくりと唾を飲む
まさか。それは、出来ない相談だ。
俺達にそんな権限はない
天使が勝手にそんな事をやっちゃったら、世界が混乱を来す
そんなの、絶対、やっちゃいけない事だから・・・


何度自分を諫めても、一度浮かんだ考えは消えなかった
それでもキャスケットは其処に目を向けないように、必死で彼を救おうとあがいた
だけど、とうとう、助けることが出来なくて――
「あんた。悪かったな。色々とありがとう。」
最後にできた事はエースと面会して、力が及ばなかった事を詫びる・・くらいだった
キャスケットは唇を噛んでかぶりを振る
「なんにも、手助けできなかった。全部、分かってたのに」
ごめんなさい、と力なく謝る俺に気を遣ったのか、仕切の中のエースはからりと笑う
「俺、あんたの言ってる事が正しいってなんとなく分かってたんだ。でもさ、信じたいじゃん?仲間の事。
だから、あんたのせいじゃないよ」
この人、ホントに強い人なんだ。
"ティーチの事は信じてもいい、犯人は暴かなくてもいいから俺の言う事を信じて"
最後の手段として、そう逃げ道を用意して、なんとか罠から救いだそうとしたんだけど、エースは
そんな欺瞞みたいな言葉には縋り付かなかった
人であれば誰だって楽な道を選ぶのに。それも、ここまで追い詰められている時なら。
・・・・信じるって、そういう事かもしれない。
ティーチみたいな人間を悔い改めさせるには それくらいの強い意志が必要なんだ
(だから、俺のような生半可な決意じゃ、改心させる事なんて最初から無理だったんだよな)
人間に教えられているようじゃ、いつまでたっても落ち零れでも仕方ない
(こんな人を、亡くしてしまってはダメだ)
キャスケットは自分の不甲斐なさに零れそうだった涙を抑えて、エースに向かって微笑んだ

「大丈夫。助けてあげる。」
これは、俺が信念を持って行う事だ
後悔なんてしない
その言葉に え、と不意を突かれたような表情を見せたエースに向けて
ひらり、と手を翳す
背には羽根が見えているかもしれない

(時間を、戻す)

キャスケットは、殺人が行われた時までの時間を、違反なのを承知で 自らの力を使って ゆっくりと、遡った






天使に使っちゃいけない能力を与えたのは何故なんだろう
自制を促す為だろうか。常に意志の力を試すように。
それとも、ルールを破るような弱い者を、篩に掛けるため・・・?




白ひげの親父がため息を吐くのが見える
『馬鹿なことをした。これで、お前は追放だ』
少し悲しそうに見えるのは俺の願望かもしれない
でも後悔してないんだよ。おやじさま、ごめん。
最後に見せたキャスケットの笑顔で、今度こそ神の顔が僅かに歪んだ
『あんたがその手の仕事苦手なのは知ってるぜ。肩入れしすぎるんだよな』
どこかからドフラミンゴの声が聞こえた気がする

キャスケットは その特徴的な姿を発見する前に そのまま地上へと堕とされた―――





 落ちこぼれ堕天使

神の試練は誰にでも平等



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あきゅろす。
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