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SS置場5
逆輸入 美容師 L

ちょっと仕事がバタついてて書く暇が取れなかったので夢から逆輸入。すごく古いです。3年ちょい前のもの。
2009年5月、パラレルの6と番号ふってあったのでパラレルを書き始めて6つ目のものですね













「おまえ!」
後ろで誰かの呼ぶ声が聞こえるのをぼんやりと聞きながら足を進める
別にどこの誰が叫んでたって構わない。ここは天下の公道なんだし

「そこの――待てよ!」
誰だか知らないけど早く返事してあげればいいのに、無視でもしてんのかなぁ

「おまえだよ」
そう言われて肩を掴まれたのは、
・・・・俺?!

ぐいと引かれて、目を丸くして振り返った先にあったのは、見たこともない顔。
え? え? 誰だ コレ?

「おまえ、その髪全然似合ってねぇ」
その見知らぬ男は、初対面にしては あんまりな言葉を放った
内心、むっとしながら
「大きなお世話です」 と言い捨てて通り過ぎようとする


なんだこれ。下手なナンパより始末が悪い。変なのに絡まれちゃったなぁ
今日は朝からついてないんだから これ以上妙なことに関わりたくない

スタスタと歩き去ろうとしたキャスケットの足が、がくんと止まる
腕!腕掴まれてるんですけど!何この人?!

「いいから来い」
「はぁ?!」
そのまま腕を引かれてすぐ近くの建物に連れ込まれる

まずい、この人、細身の見掛けと違って力が強い!

振り解けない、と慌てるキャスケットは 助けを求める声を出す余裕もなかった
当然 他の通行人は知らん顔――というより、自分達は連れにでも見えてるのかもしれない

あぁ、やっぱり今日はついてない。俺これからカツアゲにでも遭うんだろうか。
ぐいぐいと腕を掴まれ引き摺られながら キャスケットはつくづく本日の己の不運を嘆いた





連れていかれた先で、部屋の隅に ぽつんと置かれていた椅子に強引に座らされた
訳の分からないまま きょとんと座るキャスケットに向かって、ばさりと布がかけられる
(!? これ・・・って、よく美容室にある・・・アレ?)
巻き付けられた布をまじまじと見ているうちに上から声が降ってくる

「ワックスの類は何もつけてねぇな。都合がいい」
男はキャスケットの髪をさらりと指で確かめている
「な・・・、」 
面食らったキャスケットが なにするんですか、と言う前に
ぷしゅっ と何かが吹き付けられた 

・・・あ、霧吹き。


あんぐりと口を開けたまま、固まっているキャスケットに向かって その男はにやりと笑ってこう言った
「俺に任せろ。――すぐに終わる 」

言うと同時に、男はカット鋏を手に髪をつまむ
(ちょ、ちょ、ちょ! なんか、この人に刃物持たせるのって ヤバイ感じがするんだけど!)
拒否する間もなく、耳元でシャキンとハサミを入れる音がする

ぱさり。 ぱさり。

切り落とされた髪が床に舞い散った
耳元ではシャキシャキとハサミがシャープな響きを奏でている
髪にさくりと入って流す指。
最初の印象と違って、小器用に動く男の指は、とても優しく心地よい

(あー、なんだか気持ちイイかも )

そういや理髪店でも友達にでも、髪いじられるのってスキなんだよな、俺。
流されるまま髪をカットされながら、キャスケットは うっとりとして目を閉じた






「できたぞ」
耳元で聞こえた声に瞼をあげる

少し離れた位置にあった壁に据え付けられている鏡の前に連れて行かれたキャスケットは、
バンッ!!
目に映ったモノが信じられず、思わず鏡に近寄って手をついた

「こ・・・これ・・・っ 」

これが、俺?

「いいだろ 」
笑いを含んだ声で 背後から覗き込まれる
わかった!この人、カリスマ美容師とかだ
なんかよくわかんないけど、さっきのは強引な客引き?

「・・・っすごい!これ、ホントに、俺ですか?! っていうか、これならいくらぼったくられても払いますよ!」
手でも握りしめそうな勢いのキャスケットに、その男はきょとんとした表情を見せる

「は? いや、・・・ここが美容室に見えるか?」
言われてみれば、確かにそこは美容院でもなんでもない、ただのガレージで・・・
いやいや!ガレージ美容室とかそんなの? 青空美容室?
きょろきょろと見回して首を傾げるキャスケット向かって、男が苦笑する
「俺、美容師でもなんでもないんだけど」
その顔に どきりとしたキャスケットは 自分のその反応に慌てふためく
や、男相手に何を俺、慌てて・・・って、でも落ち着いて見ればこの人、すっげぇ整った顔立ちしてねぇ?
「え、あ、でも!貴方の技術に是非料金を支払わせて下さい!」
動揺したキャスケットは自分でも何言ってんだと突っ込みたくなるような事を叫んでいた

さっきから苦笑を零していた男が 今度こそ、はははと声を立てて笑い始める
全開の笑顔だと 初めの印象よりも爽やかな好青年に見えて、そのことにもキャスケットは動揺してしまう
「なら、めしでも喰いに行こう 」
まだ収まらぬ笑いにくすくすと口元をゆるませながら 肩に手を回す男に誘導されて通りへと戻る

なぁ、おまえのそれ、ナンパのつもり?

とんでもない事を言われて「ちがっ!俺別にそんな!」と慌てて否定しながら、キャスケットは名も知らぬ男と
肩を並べて街へと消えていった






 突然の専属スタイリスト












ちなみにガレージはローさんの家、っつーかアトリエ。アートな人なんだ、このぱられるローは。ローがキャスに
声をかけたのは髪型以外は合格(ロー基準)なのに惜しいと思ったからです。 これ、ちょっと某サイトD様の
ロペン?ペンロ?風の現代パラレルと似た設定だなって思いました。コラボじゃないんですよ、偶然なんです




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