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SS置場5
最後の恋 L

「先輩転校するって本当なんですか?」
使われていない空き教室に呼び出したのは先輩の方だったのに、用件を聞く前にキャスケットは先刻耳にした噂の真偽を尋ねた。
聞かれた先輩の方は浮かない表情で、答えを聞くまでもなくそれが真実だと知って顔色が変わる
「本当だ。引っ越すんだ、親の転勤で」
続けられた地名は簡単には行き来できないような遠い地で、寝耳に水だったキャスケットは絶望の表情を浮かべて絶句する
「こうして会えるのも今日で最後だ」
びくり、と身を竦ませたキャスケットの肩に手が掛かる
次に何を言われるかが容易に想像出来て 聞きたくない、と強く願いながらぎゅっと目を閉じる
それでも、残酷な現実は待ってはくれない
「まだ学生のおまえに着いてきてくれだなんて言えないから・・・」
ぐ、と喉の奥が音を立てたキャスケットの眉が、泣きそうなのを堪えて歪む
「別れよう」
突きつけられた言葉は予想したとおりの結論で 溢れた感情が一雫だけ、キャスケットの目から水滴を零した



「せ・・・んぱい、・・・ここ、学校、」
最後の口付けだと思っていた冷えた唇が首筋へと滑って抱かれていた肩が机の上に押しつけられた
忍び込んできた手を服の上から押さえるキャスケットの手も、ショックが大きいのか抵抗する力が弱い
「最後・・・だから」
そう耳元で囁かれては尚更で、迷っているうちに先輩の手はどんどん先に進んでしまう
「でも、」と言う間にもキャスケットの前ははだけられ、冷えた空気に尖った粒を指先でこねられ、
慌てて唇を噛んで声を押し殺した
こんな場所でコトに及んだのは初めてで、竦む気持ちと同時に今日で最後なのだという思いが思考を放棄させる
「・・・ぁ、っ」
下着にも手が掛けられ、脱がそうとする腕を止めようにも もうキャスケットの力は抜けてしまっていて――
与えられる刺激に身を震わせるだけで精一杯の唇から 途切れ途切れに声が漏れ始める
必死で抑えた声が喉から零れるのをなんとか噛み殺す事に気を取られ、襲いくる悲しみを堪えるのでいっぱいいっぱいで。
「・・・最後だけど、解放なんかしない」
そう呟いた先輩の声を、キャスケットは拾い損ねた


"今日でお別れ"という悲しい事実が抵抗を弱くした
いつもなら絶対にこんな場所で抱き合う事はしないのに。
乱れたシャツ一枚で机の上に転がって
押し入ってきた先輩の熱がゴムを着けていない事にも気付いていたけど、それを咎める気にもなれなかった
声を抑えて隠れるように交わる行為は今日で終わってしまう関係を余計に意識させて貪るように互いの熱を求めさせ
「―――あ 」
その日、初めて、
キャスケットは先輩の迸りを体内に受けたのだった

(熱・・・い、)
再奥まで届くかと思うほど深く押し込まれての放出に勝手にびくびくと体が震える
ぬぷりと音を立てて先輩が抜け出ていくのが分かっても、膝を立てたまま動けなかった
まだ体をひくつかせながら机に沈むキャスケットはいつの間にか涙が流れていて
手で拭いたいのに腕を上げるのも出来ないほどに力が抜けている
受け入れた時の格好のままを先輩の目に晒すのが恥ずかしくて せめて閉じようとした膝に暖かい手が触れた
涙の浮かぶ目でそちらを見れば足に手を掛けた先輩が濡れた箇所を覗き込んでいて それを恥ずかしいと思う前に
「ひぁっ」
入り込んできた指の感触で声が飛び出た
「な、せん・・・ぁっ」
まだ敏感になっているナカを掻く感覚に声が漏れる
どうやらゴムを着けずに出したものを掻き出しているのだと分かっていても、体は勝手に反応してしまう
いやらしい体液に濡れて、ひくひくと震えるそこを先輩に見られているのに、同時に果てたはずの萎えたそれが
恥ずかしげに頭をもたげはじめる
「ゃ、や・・・っ」
やめてと言うつもりなのかイヤだと言うつもりだったのか、自分でも分からずに首を振った
刺激に耐えかねて自然に閉じていく膝も 先輩の手は容易に開いてしまう
「まだ、足りない? もう一度、しようか」
今度はゴムを着けるから、という言葉と同時に落ちてきたキスが意識を奪う

(これで、最後・・・)

ぼろりと零れた涙は生理的なものなんかじゃなくて
キャスケットは、もう一度、先輩の熱を受け入れ深く交わった






今日から先輩が居ない
どれだけ恋しくても顔を見ることは叶わないと重い気分で登校したキャスケットを待っていたのは、もっと重い現実だった
担任に呼び出され、親まで呼ばれての厳重注意。
数日間の停学が解けても学校に顔を出す勇気が持てずに結局キャスケットは別の高校に転校する事になった
登校したところで友人達からは冷たい目で見られるのは分かっていたし、よく知りもしない生徒は好奇心に満ちた目で
自分をじろじろ見ただろう
先輩がばらまいていった写真がどんなものかはよく知らないが、あの日自分の演じた痴態はキャスケットが一番知っている。
学校でそんなことをしたのは初めてだとか、言い訳する気力もなくて黙って停学を受け入れた
親には泣かれ、友人を失い、教師からは冷たい侮蔑の目で見られ。
写真を見た生徒の中にはそういったいやらしい目でキャスケットを見る者もいるだろう
相当数バラ撒かれた写真が全て回収されたとも思えない。
この事実はキャスケットの汚点としていつまでも残る
恋人だった相手からのその仕打ちは、新しい恋をする気力を根こそぎキャスケットから奪った

(全てを預けて他人に心を寄せる恋なんて、もう出来そうにない)

それこそが先輩の望みだと、その時のキャスケットが気付くには まだ経験が不足していて
受けた傷が癒えるまでに長い時が必要に思えた





 最後の恋

何もかもを奪う事が 恋という一言で許されるのか
それを決めるのは 自分でしかない







後に先輩がキャスの前に現れたとして、再び信頼を得る事ができるんでしょうか。先輩って誰だ。こんな事が
出来るのはローか。突然降ってきたこの場面、もしかしてY様宅の書店パロから発想が横滑りしたのかなw
タイトルの響きは切ない系を連想させるのに内容はこんなでしたw ちなみに第一変換が「最後の濃い」で
おい、発音次第じゃなんてえろす!みたいな。「さいごの・・・濃い・・・」? 普通薄いんですけどね(
自分のものにしたいからってキャスの人生めちゃめちゃにするローとかいいなぁ。今回両想いで書いちゃったけど
ロー→キャスの一方通行だと尚よし。



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