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SS置場5
初夜 P
へたれペンでも大丈夫な人のみ先に進んで下さい。









(ヤバイ、俺めちゃくちゃ緊張してる!)

付き合い始めてもう半年。
出会った頃からを考えると 優に5年にもなる相手と肩を並べて歩いているだけなのに、キャスケットの心臓は
さっきからばくばくと激しい音を立てている

デートなんて何度もしているというのに、今日のこの緊張はただ事じゃない
だって、仕方ないじゃないか

今日は、はじめてのお泊まり付きのデートなのだ。

多分、今日。・・・スルことになる
(いや。 "多分"なんてもんじゃない。それを前提に立てた旅行計画じゃないか)
手を繋ぐところから始まって、別れ際のハグに慣れるまで1週間。
(マウス・トゥ・マウスのキスに至ったのは一月後、・・・だったかなぁ)
頬に触れる唇にだって、照れ臭くって仕方なかった2人が 初めてしたキスは触れるだけのバードキス。
腕を掴むペンギンの手がやたら熱くて力も強かったのが強く印象に残ってる
触れた互いの唇が震えていたのはご愛敬。
思ったより柔らかくて ぷにっとしてるんだな、なんて感想が浮かぶようになるのはそれからさらに数回のキスを
こなしてからだ

ちらり、と隣を歩く恋人を覗う
緊張で浮き足立って落ち着かない自分と違ってペンギンは流石に冷静だ
(なんだよ、緊張してんの俺だけかよ)
俺なんて ドキドキして昨日ほとんど眠れなかったってのに。
寝不足の顔でデートだなんて格好悪いと必死で目の周りをマッサージしたりなんかして、大騒ぎして家を出てきたのだ
今日、ホントに、やっちゃうの?!
あああ、どうしよう。 うまくできなかったら。 それとも、やっぱり男相手じゃ勃たないとかって言われでもしたら、
俺泣いちゃうかもしんない
テンパってる自分がどんな反応するかだなんて想像つくもんか
どきどきどき。
口から心臓が飛び出しそうって表現が まさか自分に当てはまる日がくるなんて思ってもみなかったキャスケットが、
立ち止まった瞬間 どきん!と、大きく跳ねた鼓動に自分で驚いて苦笑する。
ペンギンと並んで 目の前の建物を見上げたキャスケットは、その笑いが引き攣っていたかどうかを心配する余裕も
ありやしない。

「ここに、今日、泊まるんだよな?」
「あぁ。」

緊張するキャスケットが思わず確認するまでもない事を聞いてしまっても、笑ったりせずにペンギンは答えて
行こう、と足が竦んで佇む恋人の腕を引いた









「お先。・・・ごめん、時間掛かった、かも・・・」
この後に備えてやたら丁寧に体を洗った後、ドキドキする心臓をなんとか落ち着かせ、今夜抱かれるんだと
決意を固め直していたら 思ったよりも時間が経ってしまった気がする
待ちくたびれたペンギンが怒ってないかなと おずおずとシャワーから出てみれば掛けた言葉に応じる声がない
「ペンギン? 空いたよ?」
どうしたんだろう、と訝しみながら脱衣室を出たキャスケットは、答えるはずの相手がベッドに沈んでいるのを見つけた。

え、と見直しても、ペンギンが起き上がる気配は無い
目を瞬かせながら近付き、濡れた髪からの水滴が落ちないように気をつけながら覗き込むと、シャワーが空くのを
待っていたはずの恋人は穏やかな寝息を立てて眠っている

「えー・・・ まさか、寝ちゃった?」
規則正しく上下する胸を眺めて思わず漏れた声は気負っていた分だけ脱力した情けない声で、なんだか足の力まで
抜けてきたキャスケットは ぽすんとベッドに座り込んだ
一緒に寝るはずで、男2人でどうなんだと躊躇いながらも予約したダブルベッド。
気遣う余裕がなくて普通に腰掛けた弾みで揺れているのに横たわる恋人は起きる様子は欠片もない
「あ、はは・・・ ホントに、気が抜けちゃった」
ほっとしたような残念なような、複雑な気分で呟いて ふぅ、と息を吐いて初めて今日一日を振り返る余裕が生じた

「あ。 そういえば、少し、顔色が良くなかったかも。」
光の加減だと思ってたけど。 帽子に隠れたペンギンの横顔が、少しいつもより白く見えた気がしたんだった。
もしかすると朝一番に触れた手が冷たいと思ったのは、気分の昂ぶった自分の体温が高いんだと思ってたけど
あれは気のせいなんかじゃなくって――
「ペンギンも、緊張・・・してたんだ」
それに気付いて、気負っていた肩から力が抜ける
目を閉じた端正な寝顔を眺めてみると、ほんのすこし、目の下に疲れが見えた

「ばかだなぁ。 俺と一緒で、おまえも眠れなかったんだ」

シャワーを終えて出てくるキャスケットを待っている間に、興奮で乱暴にならないようにと気持ちを落ち着かせようと
ベッドに横になって
「その間に、眠っちゃったんだ?」
なんだ、ペンギンも 可愛いとこあるじゃないか

「大好きだよ」

ぐっすりと落ちた眠りから朝まで目を覚まさないだろうなと思うと 現金な事に残念だという気持ちが沸いてくるのだけど、
別に機会が今日しかないわけじゃない
それよりも、この幸せそうな寝顔を壊したくなかった

すーすーと規則正しい寝息を立てる恋人の頬に軽く口付けて、
その隣に そっと横になる

"ケイケン"するのはまた今度になったけど、こうして、寄り添って眠るだけでも ドキドキして幸せだよなぁ

ペンギンの肩に頭を乗せるようにして目を閉じたキャスケットは その肩口に甘えるように頬を擦り寄せ
微笑みを浮かべたまま眠りに就いた






 たとえばこんな初めての夜









翌朝目覚めて
「え…………(しばらく静止)」
ええ――?!
と真っ青になるペンさん。『彼女をベッドに誘っておきながらぐっすり眠ってしまた情けない男=俺?!』
すやすやと眠る天使(?)の寝顔を見ながらすまないという気持ちと同時に 惜しい事を…!という後悔。ペンさんだって
オトコノコなんです。やっぱり恋人とはヤりたい年頃なんです。普段何事もソツなくこなすペンさんの「ペンギンも人並みに
人間(?)だったんだなぁ(キャス談)」ってとこが好きです



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