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SS置場4
逆輸入SSS 邂逅 (L)

ドリームから拍手用にするつもりで逆輸入した短文。昔書いたやつだから古くさい。キャスケットがハートの
海賊団に入っていません。













地に伏していたキャスケットは血の海の中に動くものを見つけた

どうやら起き上がろうとしているらしいソレは、さっきまでの戦闘の中、一際激しく戦っていた人物。
「周りの死体の仲間入りしちゃうよ」
見た目もボロボロ、怪我からの出血も相当酷い
無理に動いたら死んでしまってもおかしくない
そう助言したのに、その人物――トラファルガー・ローはキャスケットを無視して起き上がった

あぁ、ほら。その体から ボタボタと血が落ちていく
なにを考えているんだか、トラファルガーは起き上がるばかりか立ち上がろうとしていた
「ちょっと、その怪我で動いたらホントに死んじゃうって」
しかたなく、キャスケットはずりずりとトラファルガーに這い寄り、手近に重なっている死体からなるべく綺麗な布を
破り取って止血してやることにした

くそ、片手じゃやりにくい
右手と、口を使って一つずつ止血していく

「・・・あんた、左手どうした」

やっと口を利いたな。
俺の事なんて目にも入ってないって感じだったのに、こうして手当を始めて漸く彼の視界に入ったらしい

「そこらに落ちてるだろ」
止血に口使ってるんだから今頃話し掛けないでくんないかな、と思いながら布を巻き付けていく

「見あたらねぇ」

いいよ、そんなの、もう。

目立った出血元はだいたい止血した
・・・といっても元の怪我が酷いのでうまく止まっちゃいない

「・・・動いたらまた出血すると思うけど」
再度助言したのは、やっぱりトラファルガーが動こうとするからだ

「構わねぇ。船に戻る」
先程と違って今度は返事があったのは止血の相手に礼を尽くしたってとこか


キャスケットが言葉でしか止めないのでトラファルガーはそのまま立ち上がった
怪我のせいだけでなく血が足りないのだろう。 見て分かるほどにふらふらしている

「そんなので街を歩いたら狩られちゃうぜ」
キャスケットの言葉にトラファルガーが振り返ってにやりと笑う

「狩られるもんか」

これ以上は止める言葉もなかった。
溜息をついてキャスケットも立ち上がる
あぁ、腕だけじゃない。 足もイっちゃってる
(骨・・・か)
舌打ちしてすぐ傍に落ちていた剣を杖代わりにと引き寄せた

「・・・あんたこそどうすんだ」

まだ居たのか。 さっさと帰るんじゃなかったのかよ
まぁ、血が足りなくて 立ち上がって直ぐには動けないのかもしれないな

「決まってる。船に戻るんだよ」
かしらの知らないところでぐずぐずしてるわけにはいかない

「あんたこそ、血が止まってねぇ。動いたら死ぬぞ」

・・・それこそあんたに言われたくないね

くす、とお互い「死ぬぞ」と言い合う現実が可笑しくて笑いが零れた。
笑顔のまま、持っていたナイフを火で焼く
「何を・・・」と、トラファルガーが言い終える前に、キャスケットは歯を食いしばって千切れた腕に押しあてた
じゅぅ、と肉の焦げる嫌な臭いが辺りに広がる
とりあえず簡易止血は済んだ、とナイフをポケットに仕舞って剣を使って立ち上がった

「あんたの船はそっちか」

トラファルガーとはまるで逆方向。
頷いてキャスケットは背を向ける
一瞬、自分の体に流れる血をトラファルガーに分けてやってもいいかな、と思ったのは 少しだけ気弱に
なっているんだろう

トラファルガーも 今度は止めなかった
お互い 別れを告げる事無く背を向けて離れていく

――なんとなく、分かっていた
自分の体が船に辿り着くまで保たないだろう事を。
それでも、海を目指さずにはいられなかった

しばらく行ったところで、足が動かなくなった
ぽたぽたと、体から血が流れ落ちる
そのまま何度か先へ進もうとしたけど、結局キャスケットは自分の流した血溜まりの中へ、びしゃりと音を立てて倒れた

(トラファルガー・・・船に帰れたかな)

地面を流れる血を土ごと掬って握りしめる

もったいない――やっぱりトラファルガーにくれてやればよかった

もう目を開く事もできずにキャスケットの意識が拡散していく
森を抜けるところで、やはりキャスケット同様動けなくなったのか、トラファルガーが木に凭れて立っているのが
見えた気がした
その体は 止血したはずのところから新しい血が滲んでいる

(ほら、やっぱり血が足りないんじゃないか)

そのトラファルガーが、顔を上げて前方を見た

(あぁ―――あれは、彼の船の船員だ―――)

助かったんだ。 よかったじゃん。 やっぱり、あんた 俺と違って運がある

トラファルガーが助かった事が嬉しかったのか、自分の無力が悲しかったのかは分からない。
キャスケットの瞼から一滴、涙がすぅっと流れて落ちた






その手の中から命を散らそうとしているキャスケットの脳裏に何かが映る

――トラファルガーが船員に何か指示している

「その先に男が一人倒れてるから回収してこい」

彼の唇がそう動いた事までは、意識の無くなりつつあるキャスケットには読み取れなかった





 邂 逅 の 瞬 間














最初の予定では両方とも死んじゃうつもりで書いてましたが結局変更。離れた場所で2人とも同時に倒れて
絶命する――ってつもりだったけど、コレどっちも助かってるような気がする。キャスケットが助かってるかどうかは
読んだ人の解釈次第。だってローが船員と出会うのがキャスの見た幻覚じゃないって言い切れないですし。
それか最後の指示こそキャスの見た夢かも。なので解釈は各自で。(因みに元の話では主人公はキッド海賊団員。
きっと常日頃 「俺の知らないところで死ぬな」って言われてるんだろうなー)多分、乱闘後だけど相手は海軍とかで
このキャスケットとローは敵対していたわけじゃないんだと思います。この後ハートに入るんだとしたら残念ながら
キャスが居た海賊団は潰されちゃったか人数が減ってバラバラになって解散の憂き目に遭うかするんでしょうね。


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