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SS置場4
逆輸入SS 通学電車 L


先日に引き続きポメラが消えてくれちゃったので(これは多分 電池切れますよの合図が出てたのに「もうちょっと、
もうちょっと」って粘ってたからポメラが反乱起こしたと思われ)急遽ドリームより逆輸入SS。連載を終えてパラレルや
海賊の読み切りを初めて書きだした頃のSS。なので非常にベタです。2年と1ヶ月前くらいのもの。書き方が初々しい











――その電車に乗った途端、ものすごい吸引力で目を引く男が居た
整った顔立ちで、薄く隈の浮いた目をしている、黒青色をした髪の 冷たそうな印象の男。
何気なくしている様子なのに、近寄ると切れるような冴え冴えとした雰囲気。
(大学生、くらい――かな?)
あまりじろじろ見るのもヤバいような気がして、その男から剥がれそうにない目を意志の力で無理矢理引き剥がした

鞄から取り出した読みかけの本に視線を落とす
なのに全然文字に集中できない。頭がどうしても男の気配を窺ってしまう

その日、キャスケットが電車を降りるまでに読めたのは、わずか数行だけだった



*



次にその男を見かけたのも、同じ電車の中だった
そいつは 今日は一人じゃなかった。 熊のように大柄の、童顔の男と一緒に居る。
意外なことに、その様子は先日感じた印象をまるっきり裏切るもので、連れの男と楽しそうに話す彼からは
先日の冷たさなんて微塵も感じられない。
どちらかというと、快活に話す魅力的な大学生。 きっと仲の良い友達なんだろう

キャスケットは先日感じた印象を塗り替えて 彼の笑い声に耳を傾ける
今日も無理矢理彼から剥がした目を閉じて、低くて 耳に心地よく響く声に聞きいる
きっと、今日も本はほとんど読めないだろう



*



あれから何度か見かけた彼と、電車以外の場所で初めて会った
飲み会の帰りの、夜の街。
"電車の彼"は数人のグループで歩いていた。その中には以前一緒だった童顔の男も居る

(あぁ、やっぱり、こういう雰囲気が良く似合う)
昼の光の中よりも、電車で快活に話す時よりも、今の夜の街の方が彼にはぴたりとくるように見えた
囲まれるように、輪の中心で軽く笑顔を浮かべて話しながら歩く彼。
すれ違いざま、一瞬視線が絡んだように感じる
(だけど、たぶん、気のせいだ)
彼の目は留まることなくそのまま横へと流れていく
連れの男の一人が、キャスケットの行く手を見て『あ。』という顔をしたけど、結局 彼等はそのまま擦れ違った

振り返りたい衝動を押さえながら、曲がり角を曲がる
――と、そこには、折り重なって倒れる男達が転がっていた

(え。)
何だ? これは。 今 あいつら、こっちから曲がってきたよな、確か?

「・・・うぅ・・・ちくしょう・・・〜〜〜ァルガーのヤツ・・・・・」
倒れた男達が呻く。
これはやっぱり、彼等の仕業か? でも、息を乱した様子もなく、ごくごく普通に歩いてたのに。

思わず後ろを振り返る。
彼等の姿はもう人混みの中に紛れて見えなくなっていた


(今 微かに聞こえたのは、彼の名前――?)



*



次に彼を見かけたのは、いつもの電車の中だった
今日は一人。 
少し離れた位置に座って、彼は本を読んでいた

ここからじゃ背表紙は見えない
様々な印象を与える彼は 一体どんな本に興味を持って読むのだろう。 
視線が本に落ちているのを幸いに、密かに彼の方を見る

ぱらりと本をめくる 細くて綺麗な指。 その指と 手の甲に、タトゥがあるのにはじめて気付く
ピアスは、左右、二つずつ。
――やっぱり、目が離せない。
彼が本から目を上げる素振りが見えて、キャスケットは慌てて 手に持っていた本に目を落とした

心臓が どくどくと騒ぐ
なるべく表情を変えないように気をつけながら、本に集中するふりをする。
今日も本はほとんど読めないだろう

彼の気配に意識を集中しつつ、キャスケットは本を見つめ続けた



*



扉が閉まる寸前、慌てて電車に飛び乗った

(この電車に乗れないとあいつに会えない)

――徹夜明けの重い体にこの運動はキツイ。
階段を駆け上がったせいで弾んだ息を慌てて整える

ふぅ・・・
なんとか落ち着いた呼吸に胸をなで下ろして、車内へ視線を彷徨わせる


―――居た
今日は大勢で電車に乗ったようだ。 いつかの夜に見掛けた顔ぶれ。
がやがやと話す声の中に、彼の声はほとんどない

キャスケットは、できるだけその集団が見える席に座って カモフラージュの本を膝に乗せる

(・・・・カモフラージュって何。 読むために本を開いたんだろう、俺?)
本に目を落として意識を耳に集中すると、少しずつ耳に馴染んだ彼の声が聞こえ始める
その声を もっとよく聞くために、キャスケットはそっと目を閉じた




「降りねぇの?」
突然聞こえた声に覚醒する
え? ―――あ! 声を聞くうちに、眠ってしまっていたらしい。
それよりも、今の声!?

がばりと顔をあげ、目を見開いて上を見上げる ―――あいつだ!
口を開けて呆然と彼を見上げる俺。
そいつは、その俺の腕を掴んで立たせ、閉じかけたドアからホームへ押し出した

「―――――ぁ」
声を発する前に扉がしまる。
ドア越しに見える彼の姿。その彼の顔に軽く笑みが浮かぶのが見えてキャスケットが顔を赤くした途端、
電車がホームを滑り出た。 

(俺、お礼も言えなかった!)

っていうか、俺の降りる駅知ってるのか? それって・・・それって・・・・・・?!
俺がこっそり見てる事に気づいてたんだ―――

(どうしよう、もうこの電車乗れねぇ!)

キャスケットは、ホームにとり残されて 顔を真っ赤にしたまま呆然と立ちつくすしかなかった



*



(どうしよう。 お礼言いたい。 ・・・でも!)
翌日、ホームで電車を待ちながら、キャスケットは乗るべきか否かまだ迷っていた

決めきれないうちに電車が来てしまう
迷っていたキャスケットは、窓から 座って本を読む彼の姿が見えた途端、答えも出ないうちに電車に乗り込んでしまった

(声を、かけるか――?)
まるで体中が心臓になってしまったかのように激しい心音が煩くて、考えがよくまとまらない。
視線を感じた男が、本から顔を上げてこっちを見た

「・・・借りてるぜ?」 
そう言って彼が持ち上げたのは、

(あの時 俺が落としていった本。)
それを見たキャスケットは、勇気を振り絞って、彼に 震える声を――


『・・・・ぁ、・・・・あの・・・・』










 どうか最後まで言えますように!











キャスケットがナチュラルに男に一目惚れしてるのはスルーしてやって下さい(なんたって元が夢小説ですから
主人公女の子なんですよ)ちなみに童顔の大きな男は言うまでもなくベポ擬人化です


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