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SS置場4
転校生6 (L)



このところずっとサボりのなくなっていたローが久しぶりに学校を休んだ

休んだといっても、体調を崩したとかじゃなくて、単なるサボり。
キャスケットが何故それを知っているかというと 朝、家を出る前にメールがあったからだ

『今日学校行かねーから』

こうしてキャスケットのところに連絡が来るのはローも食べるだろうとお弁当のおかずをいつも多めに
詰め込んでいるからで、本当はローが居ないなら居ないで余りそうなら誰にでも分けるから構わないのだけど、
(なにせ自分達は育ち盛りの高校生なんだし!) 毎回急に休むときはこうやって連絡をくれる

『具合でも悪いの?』

まだ 起きたきり顔も洗っていないキャスケットは とりあえず短い返信を送った

『サボり』

返ってきた答えはさらに短いもので、朝に弱い彼らしい、と笑いが漏れる

『了解。フラフラ出歩いて補導されないようにね』

また図書館にでも行くのかな、と 興味が湧けば専門書にでも手を出して読みふける彼の癖を思い浮かべながら
そろそろ起きないとやばいかなとキャスケットはベッドから降りた








学校の帰りに買い物に出掛けたキャスケットは、だから、ハンズの前の通りでローの後ろ姿を見た時は 一瞬、
よく似た別人かなと思ったのだ
自分やキラーなんかは割とこの手の店を見て歩くのが好きで、キャスケットや仲間内の誰かに付き合って来る時
くらいしかローが店内に居るのを見た事がない
こういう便利グッズや変わり商品を喜ぶのは、自分や、意外とキッドなんかもそうなのだが、基本的にローは
在れば使うのだが わざわざ自分からそういうものを探して歩く事をしない
(・・・珍しい。今日のサボりって、買い物だったのかな。あ、でもこんな時間だから、どこかに出掛けた帰り?)
店の中じゃなくて前に居るのだから、たまたま通り掛かっただけかもしれない

「ロ・・・、」
珍しいところで会ったのだから どうせなら一緒に見ていかないかと声を掛けようとして、キャスケットの舌が凍り付く。


高校生の服装規定に思い切り違反したピンクの長い髪の、スタイルの良い女の子。
後ろからじゃ顔つきまでは分からないけど、細くくびれたウェストとそこからすらりと伸びる綺麗な足は
確かめることなくとも美しい顔だと確信させる
その、目立つ女の子が 親しげに近寄ってローの肩に手を掛けるのを見たキャスケットは、声を掛ける事なく
くるりと背を向けて足早に歩き出した

(デート、だったんだ!)

その言葉だけが ぐるぐると頭の中を駆け巡る

久しぶりのサボり、どこに行くとも言わなかったメール。
そういえば、結局自分はローに彼女が居るのかどうかを聞けないままでいた
・・・さっきのが そうなのかな。
はっきりと見てはいないけど、後ろ姿だけでも似合いのカップルだと思える
(美男美女で お似合いじゃないか)
逃げるように真っ直ぐ駅までやってきたキャスケットは、改札をくぐって漸く人心地ついた気分で肩の力が抜けた
(あっ・・・、買いたい物、あったのに)
我に返ってみれば、結局店に足を踏み入れる事なく駅まで来てしまった
でも、今更戻って買い物をしようという気にならない
さっきの出来事で 妙に気分が重くなっていた。
目にした瞬間、自分は 呼吸を止めてしまうほどの衝撃を受けた気がする
(・・・何が、ショックだったんだ?)
見てはいけないものを見てしまったような罪悪感のようなものを感じているのだろうか
ローの、完全なる、プライベート。
別に彼女が居るからって何が変わるわけじゃなし 自分は何を気にしてるんだろう

彼女の存在を教えてくれなかったからって、拗ねてるわけ?
まさか ローにだけ彼女がいて自分にいないのが悔しいとか?

嫉妬・・・とかじゃない、よな、違うよな
ローにだけ彼女がいて、自分が置いかれたみたいで、だから、ちょっとだけ妙な気がするだけ・・・だよね
(それだけだ。)
・・・と思うのに やけにキャスケットの気は重い。

「なんでだよ」

ぽつりと零れた一人言は、何に対してだか、キャスケットにも分からなかった









「昨日どうだった。小テストとか宿題とかあったか?」
「え・・・、き、のう・・・?」
翌日登校してきたローに声を掛けられて、ぼんやりしていたキャスケットは惚けた声を出した
「おい、まだ寝惚けてんのか? 昨日だよ。何か連絡事項とかねぇか」
続けて問われて 昨日、きのう・・・・と思考を巡らせたキャスケットの頬に さっと赤みが射す
"昨日"と言われて即座に思い出すのはあの後ろ姿で、一晩経ってもまだ動揺が抜けきれないでいたキャスケットだったが、
目敏いローは様子がおかしい事に気付いているはずなのに ひょいと片眉を上げただけで何も言わなかった
「え、と・・・、別に、何も・・・?」
なかったよな?と自信なさげに辺りに視線を送ったキャスケットは、前の席の生徒が何か言いたげな顔をしているのを目にした
「何か、あったっけ」
聞かれた事でホッとしたような顔の生徒が 英語が次の授業で小テストやるんだよ、と教えてくれる
「あ。ごめん、そうだっけ? ありがと」
言われても尚よく思い出せないでいるキャスケットの顔を、眉を寄せたローが覗き込む
「何か変だな。ゆうべ寝てないのか? 隈、出来てんぞ」
「ぅ・・・、なんか、寝付けなくて。」 まだ頭がぼーっとしてるみたい、と言いながら さり気なく視線を外す
ローの強い視線は昨日の出来事すら見透かしてしまいそうで どうにも視線が合わせ辛い
途端、今度は物問いたげな視線が突き刺さって、キャスケットは ぎくりと肩を強張らせた
(今の、失敗した!)
きっと 自分の様子が変なのはローに関係した事だと、気付かれてしまった
「あ・・・の、・・・」
何か言い訳しなきゃという強烈な焦りに突き動かされて口を開いたものの、昨日からの自分の異変にキャスケットだって
はっきりとした理由を思いつけずにいるのだからうまい説明が出てくるはずもなく、途中で言葉を切ったまま言い淀む。
どうしよう、と眉尻を下げたキャスケットの頭に、ぽん、とローの手が乗った
「授業だ」
「え。」
目線を教壇の方へ送るローにつられてそちらを見れば、やってきた教師が出席簿を広げたところだった


最初の対応を失敗したキャスケットは、その尻の座りの悪いような微妙な状況のまま昼休みまで過ごした。
教室の移動があったり、なんやかんやで高々10分の休憩時間じゃきちんと話も出来やしない
結局、ローの方からも話を振ってくることなく過ごした2人が纏まった時間を過ごせるのは昼休みで、
惰性に従って机にお弁当を広げたキャスケットは、箸を手にしたものの気になって食が進まない
「寝不足で食欲ねぇのか?」
ローの言葉で、ぴくりと手が動いた
そうなんだろうか。
いや、寝不足だから・・・というよりも、昨日の事がわだかまっていてローの隣が落ち着かないんだと自覚する
「・・・違うみたい。調子悪い、だけ、だよ。・・・体調とか関係なく。」
まだ解析中で自分でもどうしようもアリマセン、と落ち着くまで待ってほしいと正直に言ったら、ふん、と隣で
息を吐く音が聞こえて 恐る恐る目を向ける
「なんかあるなら俺に直接言えよ?」
その一言で すっぱり割り切ったように声の調子からガラリと変えたローに、ほら、喰えと促されて、ほっとした気分で
弁当に手を伸ばす
とりあえず、今は見逃してくれるらしいと胸を撫で下ろしながら、キャスケットも出来るだけ普段通りにと声を張り上げた
「あ、それ、新作なんだ。初めて挑戦してみたんだけど、味、どうかな」
「旨いぜ? こっちは何だ」
「それ、この前作ってきたじゃないか。あ、ロー食べてなかったっけ」
幾分 わざとらしさが残るような気がするけど、続けて話すうちに調子が戻ってきた感じがして、漸くいつもの笑顔が
浮かんだキャスケットの足を、ローが げしん、と軽く蹴飛ばす
『さっさと調子取り戻しやがれ、ばーか』
という声が聞こえたような気がして、キャスケットも苦笑を浮かべて蹴り返した





少々ぎこちないながらも帰る頃には普段のように振る舞えるようになっていたキャスケットは、いつものように部活は
サボる方向で ローと他愛ない会話をしながら教室を出ようとしていた
話の流れで何気なくといった感じのローの、「おまえ、この前なにやら欲しいっつってたろ。あれから ハンズ、行ったか?」
という言葉で どきりと心臓が跳ね足が竦んで立ち止まる
「・・・? なんだ?行ったのか?」
どうして、ローは 今、そんな事を聞くのだろう
もしかして俺、昨日、帰るところをローに見つかっていた?
「え・・・え? や、行って、ない、けど?」
どもりながら挙動不審に答えるキャスケットは明らかに嘘を吐く人の見本のようで、バレバレだ、どうしよう、と
冷や汗が背中を伝う
「行ってないのか」
確認するように言ったローがどこか安心したような顔に見えるのは自分の気のせいだろうか
(ローも、確信はない、とか? だから、確認する為に 今話題に持ち出した?)
どうしよう、嘘がバレるのが怖くて目が合わせられない
というか、目が合ったら絶対にバレてしまう気がする
ドキンドキンと大きく跳ねる心臓が今にも口から飛び出しそうで 助けを求めるように目を彷徨わせたキャスケットは
見知った顔を見つけて咄嗟に声を上げていた

「キラー!!」

突然呼ばれて、何事だと目を瞬かせる相手に勢い込んで畳み掛ける
「キラー!ちょっと待って、話が!」

ごめん、ちょっとキラーに用があって、と辛うじてそれだけを言い置いて急いで相手を追いかける
その際ちらりと見えたローの顔は なんだあれ?という毒気の抜かれたような表情をしていて、キャスケットの嘘を
疑っているようではなかった事に少しだけ安心して追いついたキラーのシャツを掴むようにして友人を捕まえる
「一体何だ、どうしたんだ」
キャスケットの剣幕に素直に驚きの様相を示すキラーと並んで歩きながら、
「あ、・・・うーん・・・・ そうだ。 話があるって、咄嗟の言い訳だったんだけど。キラー、ちょっと、・・・話聞いてくれる?」
ローとも親しいキラーは口も固い。相談するには最適の相手だったと気付いて そう持ちかけたキャスケットを見て、
「・・・いいけど。 普段はローに話すくせに、珍しいな」 と、ただならぬ物を感じたのかキラーもOKの返事をくれた









 混乱の行き着く先

そこから先に踏み込むには、とびきりの覚悟が必要













・・・相変わらずベタですね。まぁ 最初からそっちに持って行くつもりで始めたシリーズなので予想通りの展開を
なぞっております。今回珍しく1話完結にならなかった!でも次回結末だけだからきっとすごく短いです。
そして今週やけに職場のクーラーきついなと思ってたらやっぱりダウンしました。熱!また熱か!連休ですが
多分でかける元気ないサイアクだ




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