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SS置場4
ひずみ L

これ、0707の3人にも使えそうなシチュだなーと思いつつ、使いませんでした。だってあっちはペンギンが
自覚しちゃったんだもの←  なので改めてSSSに起こしてみました。学パロかな。junkにある寮とは別の
シチュエーションです。設定似てるけどw や、ペンとキャスが同室ってとこだけですが。













「よぉ。邪魔するぜ」
こちらの返事も待たずに入ってきたのは、同じ学部の同級生。 家が近い為 自宅から通っているそいつは、何かというと
寮に住むペンギンの部屋にやってくる。
というのも、彼の用事は自分にあるわけではないが、この部屋の住人にあるのだ

「ロー!いらっしゃい!」
レポート明けで、仮眠を取ると日の高いうちからベッドに潜り込んだはずの相部屋の彼が 声を聞きつけて起き上がる
彼が横になってからまだ10分も経っていない
眠くて堪らないはずのキャスケットは、嬉しそうに頬を薔薇色に輝かせて いそいそと上を羽織りながらやってきた
・・・何のことはない。
(少々の寝不足など、ローの顔を見れば吹っ飛ぶというわけだ)
自宅通いのトラファルガーがしょっちゅうこの部屋を訪ねてくるのはペンギンではなくキャスケットが目当てで、
やけに彼にちょっかいを出すなと思って見ていれば いつの間にか2人は付き合うようになっていたらしい。
――いくら反応が素直で可愛いからといっても、相手は男だぞ
見た目は、まだ大人になりきれていない分、線は細いかもしれないが、それでも女に見間違える事はない
整った顔立ちのローは、それこそ女なんて黙っていてもあちらから寄ってくるし、見た目そこそこのキャスケットは
愛想の良さと機転の利く立ち居振る舞いで女友達なら山ほどいる身だ。
その中の何人かといい雰囲気になる事だってあるだろうに、彼等が選んだのは同じ性を持つ互いだったのだから
腑に落ちないものだ
どうしてわざわざ面倒な相手を・・・と、ペンギンなんかは思うのだが、あんなに幸せそうな様子を見せられては
口に出して言う事も憚られた

(女を選べばいいのに)

彼等を見ながら時折思う戯れ言は、このところ頻繁にペンギンの脳裏に浮かぶ
今日も、レポート明けで疲れているだろうと知っているくせに もう少し気を遣って会うのなら明日でもいいじゃないかと
詮無いことを考えながら眺めていると、生クリームに目がないキャスケットの為に手に入れたのだろうロールケーキを
手渡したローが、歓声を上げて箱の中身を覗き込む恋人の表情を 目を細めて見ていた
傍若無人で有名なローが恋人の機嫌を取るような行動をとるという以前の彼を知る人間からは珍しい場面だが、
多分、ローの方もそんなつもりで買ってきたのではないのだろう
骨抜き・・・というわけでもないのだろうが、彼にしては珍しく今度の恋人に入れ込んで可愛がっている
レポートから解放されて、やっと時間が自由になった恋人の元へ来る途中で見掛けた店。
『そういえば、あいつこういうのが好きだったな』
と、キャスケットの喜ぶ顔が浮かんだローが、思わず買い求める様が手に取るように分かって口角が上がる。
何故そんな事が分かるのかというと、
多分、自分がローの立場だったら、きっと同じようにキャスケットの好物を選んでしまうだろうと思うからだ

「ペンギンも食べるだろ?」
気付けば、既に取り出したケーキを切り分けようと包丁を手にしたキャスケットが自分に話し掛けている
「紅茶と珈琲、どっちが合うかな」
楽しそうに思案しながら3人分を切り出そうとするキャスケットを、ローが押しとどめた
「まぁ待てよ。先にペンギンの都合も聞いてみろ」
おまえは好きだがあいつはあんまり甘い物は得意じゃないだろうと言われて考え直したようにキャスケットが
ペンギンの顔を見上げた
「んー、どうする? ケーキ、やめとく?」
少し 首を傾げるようにして下から覗き込んでくる友人の顔を眺める
確かに、この顔が女に見える事はないが、彼特有の生き生きとした表情は可愛らしく思えてペンギンは目を眇めた
ローの言うとおり、こんなに生クリームがたっぷりと入ったケーキの類はあまり自分は得意ではない
だけど 彼につきあって食べるのであれば 少々なら食べてもいい、と考えてしまう

どうしようかと思案したペンギンは、自分を覗き込むキャスケットの後ろにいる友人が目に入った
キャスケットの向こうで目配せを送ってくるローの言いたい事はすぐに分かる。
『久しぶりにゆっくりできるんだ。少しくらい気を利かせろよ』
彼の言いたいのはそんなとこだろう
このところ締め切りに追われていたキャスケットは、ローと一緒に居る機会も少なく、だからこそ彼の訪問を
こんなにも喜んでいるのだ。
(キャスケットだって、2人きりになりたい・・・よな)
久しぶりの機会に 自分が部屋に居ては邪魔だろう

(俺だって、このまま部屋に居て彼等にあてられるのは御免被りたい)

ローも、キャスケットも、ペンギンにとって親しい友人で、それぞれと一緒に過ごすのは面白い
だが このところ、彼等2人と一緒に居ると、時々 息が詰まるような心持ちがするのだ
(・・・きっと、付き合い初めの恋人達の甘い空気にあてられているのだろう)
うらやましいのなら自分も誰か周りにいる女性達の中から彼女を作ればいいのだ
彼等が男同士であって 付き合いを隠さなければいけないからダブルデートというわけにはいかないが、
2人がこの部屋でデートに勤しむ間、自分にもどこかへデートに出掛ける相手が居れば こんな疎外感は
感じなくて済む
(あぁ、そうか。 "疎外感"が原因か)
このところたまに感じる心苦しさは 親しかった友人達が離れていくようで少し淋しかったのかもしれない
ならば、本当に自分も彼女を作ればいい
誰か 感じの良い娘は居たか、と知人の顔を思い浮かべようとして、どうしてだか失敗に終わる。
彼女達は確かに自分も嫌いじゃないが、いざ恋人としてどうかと考えるとどうも違うように感じる
――そもそも、自分は本当に彼女が欲しいのだろうか
何かが違う気がする
では、自分は何が欲しいのだろう?


「・・・ペンギン?」
返事を返さずに考え込んでしまっていたペンギンは、キャスケットに呼ばれて我に返った

「あ、あぁ。いや・・・甘い物は苦手だし、少し出てくるから、俺の分はいい」
どうせ自分も課題があるのだ。 彼等の逢瀬の間に、仕上げてしまってもいいだろう
机の上に広げた勉強道具をいくつか手に取り、図書館に行くから暫く戻らない、と言いながら立ち上がる
気を遣わせちゃったかな、とキャスケットが申し訳なさそうな顔になるのを制して、ぺちりと彼の頬に手を当てた
「俺も課題があるんだ。仕上げてしまわなくても、ある程度目処の付くところまでは進めたいから」
ペンギンの言葉に肯いた彼が 夕食はどうするかと聞いてくる
どちらも寮に居る時は時折外食する以外は食堂で食べるのが常だが、ローと一緒なら外に食べに出るのかもしれない
どうせ食券制度なのだ。寮で食事を取らなくても構わないのだから。
「遅くなったら外で摂るかもしれないから気にするな。戻らずに直接食堂に向かうかもしれないし」
そう言って、もう1度彼の頬を撫でてから傍を離れた
「悪いな」 とローの口から出て来た言葉に軽く首を振って部屋を出る
ペンギンが外に出た後の部屋で、ローの手が恋人の頬をなぞっているなんて事には気付く事はなかった




(無意識なんだろうが触りすぎだろ。あいつにしちゃスキンシップ過多だ。キャスケットに接するあいつの態度は
友人に対するそれじゃねぇぞ。)
ペンギンが部屋を出た途端、どちらともなく距離を詰め自然と唇を合わせたローは、先程出て行った友人の事に思考を飛ばした
気付かない方が幸せだろうなと 引き寄せたキャスケットの肩を抱いて 数回、軽く口付ける
何も言わずに身を寄せた恋人は、まだそんなに回数をこなしていないキスに上気した頬で照れ臭そうに目を伏せている
ちゅ、と最後に頬に口付けて、さらりと離れるローの手を握ったキャスケットは、目を合わせると、へへ・・・と笑って声を出した
「明日にでもさ、ご飯食べに行こうって誘うつもりだったんだ。今日会えると思ってなかったから、嬉しい」
(こんな事を言うから、離れ難くなるんじゃないか)
一旦放した腕をもう1度引く
「ろ、・・・」
驚いた顔のキャスケットと再び合わせた唇を 今度は噛み付くように激しく貪る


ペンギンが気付いていない事を知っていて追い払うロー

本当は自分も欲しいという事に気付いていないペンギン

ローと恋人だからか、それをなんとなく感じてるのに指摘しないキャスケット


絶妙のバランスで成り立っている友人関係が、いつか崩れる時がくるのだろうか
(あいつが気付いたからといって、譲る気は毛頭ねぇけどな)
崩れるとしたら、キャスケットとペンギンの関係だろう
同じ部屋が苦しくなった時、ペンギンがどういう行動を選ぶのか
(こいつを泣かせる事だけは 絶対にさせねぇ)
出来ることなら、誰も苦しむことがなければいい

(気付かなければ いいんだが・・・な)

時間の問題だろうと思いながらも 彼等の為に そう 願わずにはいられなかった








 心の片隅、まだ気付かぬ想い

育つ気持ちに静止は効かない











ん。 まぁ、千堂がこの3人で三角が好きなだけです← メインがロキャスだからペンさんが毎回報われない
役回りになるのが難点。



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