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SS置場4
転校生3 (L)

転校生シリーズ。冒頭の会話は上からペンギン、キャス、キッド、ロー。ここまで来たらついでにキラーもしゃべらせておくかと
無理矢理入れた「違いない」は予定になかった台詞でした。これ入れるとどうにもギャグっぽい雰囲気になっちゃうから入れたく
なかったんだけど、このキラーさんは無口キャラじゃないですよとアピール。ホントは「違いない」だけにしたかったんだけどw 
どうにもギャグキャラに見えてしまって台詞を付け足しました。バンやワカメはキャラがこのシリーズに合わないので登場見送り
です。ローとキャスを丁寧に書きたい。でも日常をテーマにすると気をつけないとダラダラgdgdになる罠が。このシリーズには
大きな盛り上がりはありません。今回、船という括りを取っ払った学生ルーキーズが仲良かったらいいなというだけの話













「あぁ、空気が変わってきたな。あとどれくらいで着くんだ?」
「まだ この後 乗り換えがあって在来線で30分だから、えーと、乗り換えまであと何駅だろ?」
「本ばっか見てないで景色にも目を向けろよ、トラファルガー。山間やまあいに海が見えてるぜ」
「んなの、着いたらいくらでも見れるだろ」
「・・・違いないが・・・道中の景色も旅行の醍醐味だろう?」

学生ばかりで電車に乗って、思ったよりも人数の増えた集団で祖父の家を目指す
あまり話した事はなかったけど何度か見掛けた顔ぶればかりで、それぞれが貫禄在る存在感を持つ彼等は
学内ではかなり有名らしい


『おい、今朝の。 どういう事だよ』
詳しく話す前に学校に着いてしまい、そのまま試験とあってはじっくり話せない
あるいは、学校を移って初めての試験であるキャスケットに気を遣ってくれたのかもしれなかったが、
ローが朝の話題を持ち出したのは昼休みに入ってからだった
『んー・・・、でも。ローが海で泳いでるとこ想像つかない』
やっぱり嫌・・・かなぁ、と思いながら 半分一人言めいた声を出したキャスケットに、『ぬかせ。誰がヒキコモリだ。』 と
げんこつを落としたローは 『それ、何人くらい大丈夫なんだ?』 と意外に乗り気な様子を見せた
話を聞くに、仲間内で休み中にどっか行こうぜという話が出ていたようで、キャスケットを紹介ついでに海もいいかと
昼休みまでの間に頭の中で算段をつけていたらしい
『てめえ人見知りしねぇだろ?良い機会だからおまえも誘おうと思ってたんだ』
そんな感じで とんとん拍子にローの友人達と一緒に海に行く事が決定したのだった



「海と空以外なんにもないとこだけど、長閑でいいところなんだ。夜は静かで波の音しか聞こえない。」
近所にコンビニとかもないから必要な物は駅で買っておいたほうがいいよ、と話しながらも心がうきうきと弾む。
都会の喧噪を離れての町はみんなのお気に召さないかもと思ったのだけど 寧ろそういうのを楽しもうと誰もが言って
あっさり行き先にキャスケットの祖父の家を選んでくれた。
静かな場所で1人過ごす事も楽しめるローはともかく、見た目活発そうなキッドなんかは"つまらない"と言うかもと
密かに心配していたのだ
「酒とか、やっぱり駄目か?」
そのキッドからの大人の監視の目があるとこじゃそう羽目を外せないかと気にした質問に 思わず笑みが漏れてしまう
「あの辺りの人達って割と未成年でもビールくらいなら平気で飲んじゃうみたいでさ、多分そう煩くは言われないと思うよ。
大広間に全員で寝る事になるだろうから少々騒いでも大丈夫じゃないかな」
まぁ 推奨はしてないから飲むなら自分達で用意していくしかないけど・・・と、駅前にあった雑貨兼食料品販売店を
思い浮かべながら言ったキャスケットの目に にっかり笑ったキッドの顔が飛び込んでくる
「そりゃぁそうだろ。買える店ぁあるんだな? なら、缶ビール、箱買いするか」
冷蔵庫に突っ込んでも文句を言われないというのならそれでいい、と剛気な事を言うキッドの横で ローが口を挟む
「ビールばっか買うなよ。甘くて飲みやすいのも入れてやれ」
「チューハイか? んだよ、おまえ酒苦手じゃねぇだろ、トラファルガー」
2人の会話に、"あ。" と、目を向けたキャスケットを、案の定 ローの手が指さしていた
「俺じゃねぇ、こいつ。 どうせ、てめえはビール苦手だろ」
後半の台詞はキャスケットに向けたもので、一緒にお酒を飲む機会なんて無かったローにどうしてか見透かされていて
赤面しながらも嘘が吐けずに渋々肯く。 ここで見栄を張っても後になれば分かってしまうのだ。
「こいつ珈琲も苦手なんだ。 ビールも "苦い" んだろ?」
そこまでばらさなくてもいいじゃんか!と むくれるキャスケットを眺めた一同が、あぁ、なるほどと納得したように肯いて、
グループ内でのキャスケットの立ち位置がすっかり定着してしまった


移動中にすっかり盛り上がったUNOで最下位を喫したキラーを手伝って 駅前の店で調達したお酒の箱に手を掛ける
「ホスト役だからって気を遣わなくていいんだぞ」
「でも1人で全部は持てないでしょ」
お酒の他にもお菓子やおつまみ系の食品を買い込んで結構な量になっている。着替え等の自分の荷物もあるのに
キラー1人では手に余るだろう
「なら、おまえはこっちだ」
菓子類のつまった箱をキャスケットに手渡し、重い酒類の箱をキラーが持ち上げる
「重い物こそ敗者の罰ゲームだろ。案内役は身軽に動けるようにしていないと」
互いに荷物を持って笑顔を交わす2人に 早く来いよと離れた位置から声が掛かった
「なんだ、キャスケット。荷物運びの手伝いか?」
「重いのに偉いなー」
祖父の家まではタクシーでと親からお金を預かっていて、さっさと買い出しを終えて先に乗り場に着いた者達の声が届く。
「ちょっ、子供扱いしてるの誰?!同じ年だろ?!」
はははっ!と彼等の間で賑やかな笑い声が上がる
「そうだよな、ちびっこ!」
誰がちびだって?! と周りを見回してキャスケットは言葉を継げずに黙り込んだ
「・・・気にするな。キラーやキッドが育ちすぎなんだ。」
ぽんとキャスケットの頭に手を乗せて言ってくれるペンギンだって頭一つ分近く背が高い
彼等の中で一番背の低いローでさえ キャスケットより5センチは背が高かった
(俺だって低いほうじゃないのに!)
この学年の標準身長よりは余裕で高いのに このメンバーの中にいると自分が小さいような気分になる
「そう言いながら、頭に手を乗せるのやめてくんない?」 暗に低いって言われてるみたいじゃないか。
ぶすっとむくれながら言ったら 悪い、と笑って手を退いたペンギンは、お詫びのつもりかキャスケットの手から
買い出しの荷物をさり気なく受け取った
「おーい、キャスケット!おまえが前の車に乗ってくれよ。行き先説明できねーよ」
2台に分乗しようと荷物を積みながらのキッド達から呼ばれている
「あ、うん!そうだね。 先に乗るけど、でも地名言うだけで分かるんだよ」
「どんだけでけー家だ」
口々に笑い混じりのつっこみが入るが、特別キャスケットの祖父宅が大きいわけでもない
「この辺じゃ普通の大きさだよ。みんな畑を所有してるから家と家の間隔が広いだけだって」
「おめーんちも畑に囲まれてんのか」
「うちは米農家だ」
何故か誇らしげに胸を張ったキャスケットは そうかそうかと笑った顔に迎えられて先発組の車に乗る
(あれ? 俺やっぱ子供扱いされてね?)
ふとそう思いながら乗り込んだタクシーにはローが先に座っていて、「刈り終えた稲藁にダイブした事あるか?」 と
何気ない様子で話を振られて ちらりと浮かんだ考えなんてどうでもよくなった
「あるある。あれの上で昼寝したくなっちゃう魔術!」 小さい頃だけの特権だけどね〜と子供の頃の思い出を
尋ねられるままに話すうちに 見覚えのある祖父の家に着いていたのだった






ぼん、よぅ来たな』
目尻を下げて迎えてくれた祖父に勧められて、一息ついた後直ぐにみんなで海に向かった
散々泳いで騒いだ後はパラソルの下で気持ちよく昼寝して、穴場である浜には夏の風物詩である海の家すらない為
近くの店までたらたら歩いてアイスを囓ったりと久しぶりに海を満喫した
「なんだ、ここまで来て海に入らずに帰ってたのか?」
みんなに不思議な顔をされたけど ここ数年従兄弟達と帰省のタイミングが合わず 海に行こうと誘えるような年頃の
親戚もいなくて祖父の家で過ごしていた
「大人ばっかりだったからね」
ごろりと寝転がるキャスケットの横では半身を起こしたローがぬるくなりつつある飲み物を啜っている
"クーラーボックスでも持ってくりゃよかった" と文句を言いつつも他に喉を潤す物がなくては諦めるしかないようだ
「起きたら、もう一回買い出しに行こうか」
話しながらも キャスケットの瞼は既に半分落ちかけている
隣に並べて立てたパラソルでは 散々ビーチバレーで暴れたキッドとキラーが日影を奪い合うようにしながら大きく
寝息をたてて気持ちよさそうに眠っていた
「起きれりゃな」 と笑ったローの向こうに居るペンギンが 「つられてこっちも眠りそうだ」 と会話に入ってきたのが
聞こえたのを最後にキッド達の呼吸に誘われるようにキャスケットも眠りに落ちた



誰かに 名前を呼ばれたような気がした

水に浸かった全身運動に砂浜でのビーチバレー。心地よい疲れに泥に沈むように落ちた眠りから、徐々に
意識が浮上する
「起きないと砂に埋めちまうぞ」
「埋めるだけ埋めて掘り起こさないんだろ、おまえ」
「トラファルガーならやりそうだ」
内容よりも話す声につられて ぽかりと目が開いた
「おはよう、ねぼすけ」
上から覗き込んでニカリと笑うのは真っ先に眠ってしまったキッドだ
「あ〜〜・・・買い出し・・・」
寝惚けた声を出したら、汗のかいた冷たそうなペットボトルを手に 笑いを堪えたローから "ペンギンと行ってきた" と
言われて、あちゃぁと呻いてごめんと謝る
ん〜〜! と、伸びをして 「あぁ、よく寝た」 と起き上がったらあちこちから笑われてしまった
「キラーと"帰る前にもう一泳ぎしよう"っつってたんだ。ローとペンギンはエアーマットだと。」
おまえはどうする?・・・と言われても 寝起きの自分じゃ泳ぐ気力が湧かない
俺も "浮き輪でぷかぷか"がいいデスと手を上げて申告したら そっか、と笑ったキッドとキラーはそのまま海へ入っていった
遠くに見えるブイを目指して競うように泳ぎだした2人を眺めて 元気だなぁと思わず呟いたら 年寄り臭ぇとエアマット組から
笑われて唇を尖らせる
「そういうお2人さんだって浮いてるだけじゃないか」
「あんな体力バカとは違う」
「夜には花火をするんだろう? 疲れて眠ってしまうのも勿体ないぞ」
途端に飛んできた反論に あれ、もしかしてペンギンも負けず嫌いなのかなと思いながら ぷかりと海に浮く
「あ〜、お酒入ったら絶対寝ちゃいそう」
花火が終わるまではお茶だけにしとこう、と決心しながら波に揺られてゆっくりと瞼を閉じる
寝るなよ? という2人からの忠告に、ざぶりとしぶきを上げて浮きから降りて海へと潜ったキャスケットは
「俺もちょっと泳いでくる−!浮き輪よろしく!」
そう声を掛けて、水を掻き分け 深みのある青い色を湛える海の中へと身を沈めた









「花火。 これで最後だってさ」
一通り楽しんでしまって、石に腰を下ろして缶ビールを片手に皆を眺めていたローに "締めくくりの定番" 線香花火を手渡す
いらないと言うかと思ったローは手にしたビールを飲み干し コン、と軽い音を立てて空き缶を地面に置いた
「ん。」 と、差し出された手に 一本の花火を乗せる
隣にしゃがんだキャスケットも自分の分に火を付け パチパチと弾く繊細な光を 目を細めて眺めた

『おー、地味くせぇ花火やってんな』
少し離れた広い場所でキッドが早々に最後の花火に火を付けたこちらを笑っている
"じゃあ派手なやつぁてめえらにやるよ"
ローが にやりと口元を歪めて隠し持っていたらしいネズミ花火に点火して放った
その先では飛んできたネズミ花火と踊るように軽いステップを踏むキラーとペンギンが居て、眺めるキッドが
彼等のダンスを囃し立てている
夜に紛れた花火とのダンスを "意外に絵になってるよ!" とキャスケットも笑って眺めていた

軽く喉の奥で笑ったローが ふと感想めいた事を口にする
「すっかりこいつらに馴染んだな。まぁ、そうなると思ったが」
浮いた存在のローにも喰って掛かるし 時折訪ねてきていたキラーやキッドにも、気安く話したりはなかったが
怯えている様子もない。ちゃんと紹介すれば物怖じせずに直ぐに仲良くなるだろうと考えていたらしい。
「みんないい人だよね」
それぞれに癖はあるかもしれないけど 一本、筋の通った人間ばかりで、だから ローも面倒な事は見て見ぬ振りの
クラスメイトには目もくれず彼等を友人に選んだのだろう
我が儘と紙一重かもしれないけど、それによって生じる軋轢も全て受け入れる度量があっての事だから
ローの交友関係を外から眺めた他人がとやかく言えるはずもない
「なんだ?」
考え事をしていたら相手を凝視してしまっていたらしい
気付けば手にした花火は その花を地面に落としてしまっている
「ん。 や、・・俺は、ローの眼鏡に適ったのかなって」
ふるいに掛けたローの友人の中に混ざってもいいって 判断されたのだろうか
(なんか、初めに父とのごたごたがあって、有耶無耶のまま懐に飛び込んだ気がしなくもないんだもの)
「・・・は?」
訝しそうに聞き返されて、自分の口走った事に気がついた
はっ、と我に返ったキャスケットは慌てて言葉を撤回する
「あ!や、別に、何でもない! 花火、終わっちゃったね、ぼうっとしてて終わるところ見逃した」
突然捲し立てたキャスケットを 目を丸くして眺めるローの顔を、(あ、これで3度目だ) と思った途端、
くく・・・っ、とローの喉から笑いが漏れる
"何、バカなこと聞いてんだろ、俺" と視線を外したキャスケットの頭を 伸びてきた手が くしゃり、と撫でる。
その手が、さっきの質問の答えのように思えて目を見開いた瞬間、ぽっぽっ・・と頬に血が集まってきた気がして
キャスケットは落ち着かない視線をうろうろと辺りへ彷徨わせた

「こらそこ。なんの雰囲気出してんだ」
目敏く見つけたキッドから野次が飛んでくる
「雰囲気なんか出るかよ、ばーか」
慣れた口調で言い返したローが花火の残骸を纏め持って立ち上がった。
キッドのツッコミに苦笑を浮かべて キャスケットもローに倣って腰を上げ、そろそろ中に入ろうかと声を出す
「花火が終わって煙も消えちゃったら虫除けは何もないからね。まだ飲むなら家の中で飲んで」
立ち上がった2人が近付く迄に てきぱきと動くキラーとペンギンの手によって周囲はあっという間に綺麗に片付く
「じゃぁ続きは中でやろう」
空き缶や花火のゴミを持つキッドの後について部屋に戻る頃には すっかりいつも通りの空気で
騒ぐみんなと一緒にキャスケットも楽しそうな声を立てて笑っていた







 夏を彩る花

線香花火と手のひらの熱












ネズミ花火とダンスするキラーさんとペンギンさんの挿絵が欲しい・・・ 画力ェ(優雅だと思うんですよ。花火だけが明かりの夜のダンス)


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あきゅろす。
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