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SS置場4
狐 L




ケーン、ケーン・・・
遠くで狐の鳴く聲がする

日も暮れようとする茜空を見上げて
ローは その名前を口にする

「キャスケット!」

呼ぶ聲に応えるように ざわざわと森の木々が揺れる

ザザ、と茂みが音を立てて東から西へ次々と目にも止まらぬスピードで傾いてゆき、 ぴたりと動きが止まるやいなや、
ひらりと小さな影がローの前へと舞い降りる

足元に現れた小さな仔狐は キュン、と空に向けて喉を震わせると みるみるその姿形を変えてゆく

「キャス」
名を呼ぶローの目の前に、法被に膝までの短い履物を着けた子供が姿を現し 目を輝かせて見上げていた

「ロー!久しぶり!今回はいつまで居られるんだ?」
満面の笑顔で尋ねる子供は、初めて会った時から殆んど変わらない姿で纏いくる

「一月半だな」
「へへ、ロー また背が伸びてる!」
ぴょい、と身軽に飛び付いた子供は、腕を伝ってローの肩までよじ登り、見える景色が高くなった!と楽しそうな声を上げた








まるっきり子供のような格好のキャスケットは、それでいてローより遙かに長い時を生きている
なのに、立ち居振る舞いが大人びて見えないのは 長命の種族の為なのか単に彼の性格のせいなのかは分からない。
なにせ キャスケット以外に彼と同じ種の生き物をローは知らない
出会った時から彼は一人で、キャスケットの口から彼の家族、もしくは仲間の話を聞いた事がなかった

「半年留守にしてた割には綺麗だろう」
時々掃除に来てやってたんだぞ、と得意そうに笑うキャスケットはローの滞在中はこの家で夜を過ごす
昼間は人の目を避けて 町の外れとはいえ一応人里の中にある家には近寄らない
もし仮に誰かに姿を見られていたとしても 不定期にしか滞在しないローの連れだと思われていることだろう
「来るって分かってたら食料を仕入れておいたのに」
ごそごそと、ローの持参した僅かな食料の入った袋を覗いて 幾つかの食材を取り出したキャスケットは
"なんだよ、そのまま食える物が1つもないじゃないか" と、こぼしながらも より分けた食材を手に立ち上がる
「どうせお前が何か手を加えるんだろう?」
出来合いの物を持ち込んでもキャスケットは必ず某かの味付けを施してから食卓に出す
それならば初めから彼の手で作られた物の方が手間いらずな上にずっと旨いと このところ材料のみ持ち込む事が増えていた
「来る途中で握り飯くらいは お腹に入れた?」
放っておいたら食べないで過ごすだろう、ローは。
と、確認するように見上げるキャスケットに口の端を上げるだけで答えると 一丁前に顔を顰めた子供が立ち上がる
否、見た目が子供だから普通の仕草がどうしても 老成ませた子供という印象を受けてしまうのだが、彼的には
"しょうがないな、ローは" という心境だろう

「すぐ作るから、荷物でも片してゆっくりしてなよ」
身軽に、跳ねるような足取りで調理場に向かう姿は誇らしげで、ローの面倒を見てやってるんだと
彼のそう大きくもない背中に書いてあった
見掛け通りに甘える子供のような時もあれば世話を焼く家族か親のようにも変わり、くるくると違う表情を見せるキャスケットの
本当の顔は 実のところ夜にあるのだとローは思っている
食事も終え、持ち込んだ書物を読みふけるうちに用意されていた風呂に入れば、『旅の疲れもあるだろうから今夜は早く
布団に入れ』 と寝室へと追い立てられた
明日は薬草採取に出掛けるんだろう? と、ローの行動を把握しているキャスケットは、それでいて夜も更けた頃になると
寝具の中へと忍び込んでくるのだから先に布団へ押し込んだのはそれが目的ではないかと勘ぐりたくもなる。


「おい、今日は歩き詰めだったんだ。 ゆっくり休ませろ」
潜り込んでくる小柄な体をそう言って押し遣れば、
「そういう時にヤるのがいいんじゃないか。 すっきりして眠れば起きた時は元気になってるよ」
と子供の声で はすっぱな事を言う

実際、キャスケットを抱いた後のローの寝付きは普段よりもずっといいのだが、こうも確信されていては素直に
彼の意のままに抱いてやるのも少々癪ではある

「いいから寝かせろ」
「疲れを癒してあげるって言ってるんだから素直に受け取ったらいいんだよ」
もぞもぞと寝具の中でローの着物に手を掛けるキャスケットは 現れた性器を手で持ちながら にかりと笑った顔を向けた
その口から、八重歯のような犬歯が小さく覗く
綺麗に整った歯の奥には 小さくて赤い舌が ちろちろと見え隠れして揺れている

「全部、俺に任せてもいいよ?」
小さめの口を 精一杯大きく開いて舌を伸ばし ぺちゃりと舐めながら口内に含んでいく

あちこちにちらばる口承に拠れば きつねの類は揃って淫蕩だと聞く。
こんなガキのなりをしていても キャスケットはそのきつねの一族の者なのだ
最初に出会った時も 『ガキ相手にソノ気になんかなるか』と小馬鹿にしたローの言葉を笑って流し、手練手管でもって
全くやる気の無かったローと事を遂げてしまったのだから侮れない
彼の年齢が自分よりずっと上だとローが知ったのは その後の事だ

「・・・は。 自分てめえの上で踊るお前も場合によっちゃそそるが、久しぶりがそれじゃ味気ねぇだろ」
ちゅぷ、と音を立てて舐め上げる彼の顔を引き寄せ、口淫を中断させる
「俺の下で啼いてろ」
体勢を入れ替え キャスケットの小柄な体を寝具の上に引き倒す

ローに組み敷かれる長命の獣は、小さく唇を引き上げ、ふふ、と嬉しそうな顔で吐息を漏らした







は、と熱い吐息を漏らしてキャスケットの体が揺れる
一度 ローの迸りを体内に受けると同時果てた彼は、少し休んだ後 今度は自ら上に乗り上げてきた
自分の体重で深くなった交わりに高い声を上げたキャスケットの軽い体を下から突き上げる


きつね。 どうして、俺に抱かれる

ぁ、あっ、と声を上げて仰け反った彼は、ローの質問に目だけをこちらに向ける

・・・さぁ?

微笑むキャスケットの顔は普段と変わりなく 常に笑顔を纏う相手の表情は捉えどころがない

ローこそ、どうして俺を抱くの?
こうして交わる事でローの気を奪ってるのかもしれないよ

ほんのりと体を桜色に染めあげたきつねは 反対に質問で返してきた

有り得ないことではない
彼の年齢ならば それくらいの通力は得ているだろう。
だが、彼との交わりで通常の疲労以上の疲れを感じた事は一度たりともなかった
コレは その気になればローの寿命が尽きるまでヒトの生気を貪る事も出来るのだろうが、寧ろ自分と交わる事で
気力のようなものを分け与えているのではないかとさえ思える

奪うでもなく、こうして交わるキャスケットは 自分の何が気に入ったのか、妖狐としての顔を見せる事は殆ど無い
妙にローを構って身の回りの世話をし、夜は夜でこうして無邪気にローの腕に忍び込んで嬌声を上げ身をくゆらせる
闇夜に光る金の髪は彼本来の姿の毛並みを写した色で、夜目にも目立つその色が次第にぼうっとけぶっていく
白い肌に金の髪を持つその姿が どうしてだか夜に融けて消えてしまいそうで、その細い腕を引き もう片方の手で
小振りな尻をわし掴んだ
「あぁ・・・・っ!」
一層 深くまで押し込まれた楔に びくりと身を竦めたキャスケットが声を上げてローの腕の中へと倒れ込む
「ろ、・・・ぉ、」


 はなさないで


姿勢の変化でキツくなった締め付けを味わい、最奥へ精を放つローの耳元で
キャスケットが そう、声を漏らしたような気がした







漂ってくる食事の匂いが覚醒を促したのか、いつもよりも早い時間に目を覚ましたローは
隣で寝ていたはずのキャスケットの姿を探して起き上がった
(・・・当然だろ。この匂いの元はあいつの作る朝飯だ)
寝床に彼の姿が無くて当たり前なのだ

なのに、妙にヤツの姿を見つけなければと感じたローは、その原因に思い当たった

――離すな・・・っつったか。
多分、あの一言が気に掛かっていたのだ
キャスケットがどういう意図であの言葉を口にしたのかは知らないが、ローの腕を欲しているのは確かなようだ
(それとも 俺の質問の答えか?)
匂いの元を辿れば、鼻歌でも聞こえてきそうな様子で鍋をまぜる背中が見える

「ロー? いつもより早いね。よく眠れ――― ぅ、ひゃっ?!」
背後から近付いたローに抱き込まれ、驚いた声を上げるきつねの首に唇を押し当てる

――言われなくても、逃がさねぇよ

そう 胸裏で呟きながら さながらローの方が彼を食らうように、ぺろりと柔らかい皮膚に舌を這わせた








 存在理由なんて、知らないでしょう?

貴方に望まれるから此処にいるんだ、俺は










なんか細かな設定か因縁がありそうだなぁ、この2人(考えていません) これのみだと中途半端ですね。
そのうち番外のSSSでも書かないと・・・ って、その前になんらかの設定が降ってこないと!
ちょっとロキャスが続きますがペンキャスも今書きかけてます。まだメモ状態ですがベタなので多分
なんとかなるんじゃないかと^^



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あきゅろす。
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