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SS置場3
モデル L



(ちょ、え? パンツまで着替えなきゃいけないの?・・・って)
ぱらりと何気なく手にとったソレを広げる
「っぎゃー!何このビキニ!しかもTバック?!」
思わず漏れた悲鳴にすかさず怒鳴り声が返ってきた
「あたりまえだ、阿呆!服によっちゃ体にぴったりの物もあるんだ、下着のラインの出た写真なんか撮れるか!」
プロのカメラマンの気迫に、ひっ!と肩を竦めるキャスケットに駄目押しの急かす声が飛ぶ
(畜生、あのカメラマンめ!)
サンジ曰く、割と名の知れたカメラマンだというその男は急用で来れなくなった友人の代理だと名乗ったキャスケットを
名前すら聞く前に こんなトーシロで撮影できるかと怒鳴ったのだ
仕事が忙しいのか くっきりと隈で縁取られた目から放たれる視線は強烈で その顔にじろりと睨まれただけで
萎縮しそうになっていたキャスケットに投下された怒鳴り声は 逆にキャスケットの意地に火を付けた
"試しもする前から出来ないと決めつけるな、そこをなんとかするのがあんたの手腕だろ" と怒鳴り返したキャスケットを
面白そうに眺めたそいつは、「なら、試してやる。さっさと着替えろ」 と衣装室へと放り込んだ
名前? 友人の口から聞いた気がするけど 写真に興味の無かった自分の耳を素通りしてしまっていた。
どうせ一回きりの事なのだ。
(あんなムカつく奴の名前なんか覚えるもんか)
そんな事を考えていたら、
"さっさと着替えろ、ぐずぐずしてたらひん剥くぞ" と言われて慌てて用意されていた下着に履き替えた

下着こそ自分で替えたものの そこから先は文字通り着せ替え人形のようにあれだこれだとスタイリストの手で整えられていく。
服だけでなく髪、肌、眉と手が加えられ、目を白黒させながらスタイリングルームから送り出されたキャスケットを
さっきのカメラマンが引き連れてスタジオに通す
ライトの下に立たされ じろじろと眺める突き刺さるような厳しい視線に居心地の悪い思いでいると、不意に
"そっちから斜め気味に立て" と指示が飛んだ
訳もわからず従うキャスケットをそのままにライトや小道具がてきぱきと用意され、気付けばバシャバシャと
シャッター音が響いている
「ぼけっとするな、表情かお作れ!」
・・・と、言われてもどんな顔をしていいのかキャスケットには見当もつかなかった
それでも素の自分のままが雑誌に不向きな事くらいは分かる
(え・・・と。雑誌みたいに澄ました顔、でいいのかな)
マネキンになったつもりでいいのかなと想像しながら表情を整える。
途端、
「ばか、てめえ 何無表情ってんだ、それがおまえの顔か!笑え、ボケ!」
(って言われても!)
急遽の代理の自分にはどれが自分の顔かなんて分かるわけないじゃないか
元々キャスケットはモデルでも何でもない。
掛け持ちバイトでモデルをしているという大学の友人が、本来のバイトの方から呼び出されて急に行けなくなったとかで
白羽の矢を立てられたのがキャスケットだったというだけだ。
"ヤだよ、そんなの!" と他にいくらでもお面のいい奴がいるじゃないかと何人かの名前を挙げたのに
金髪指定なんだと強引に押しつけられてしまった。
染めてる奴くらいいくらだって・・・と、思ったものの 確かに個性的な友人達の中には金の色は自分くらいしかいない
"でも、俺の髪、おまえと比べてちょっとオレンジ系だし"
最後の抵抗も 構わない、下手に染めた髪より天然の方がいいからと押し切られて このスタジオにやってきた。
そこへ、初っぱなから頭ごなしにガンガン怒鳴りつけられて、こっちが素人だって配慮しろよと文句の一つも言いたくなるってものだ
思わず ムッとした顔になったのに カメラマンはそれに構わずシャッターをきっていく
「へ〜ぇ、てめえの笑顔ってなぁそれか」
カチンときた内心を抑えながら、畜生、このクソカメラマンめ!と笑顔を作り出せば、相手が くくっ・・・と笑いを零した
「生意気じゃねぇの」
途切れないシャッター音に あれ、怒らないのか? と意外な反応に気が抜ける
(あっ、今の顔も撮られちまった)
きょとんと目を丸くした間抜け面。
そんなの撮ってどうするんだと思っていたキャスケットへ、今度は怒鳴り声じゃない指示が掛けられた
「それも悪かねぇけどな。普段通りに笑ってみ?」
普段通りってどんなだっけ・・・
思わず躊躇いがちに、おずおずと笑顔を作る
「照れてんじゃねぇ。普通に笑え」
別に、照れてるわけじゃないけどさ。
急に普段通りって言われてもそう簡単に出来るかっての
「んー・・・、そうだな。 んじゃ、友達か彼女と待ち合わせしてると想像してみろ」
彼女。
・・・居ない、けど。 待ち合わせの相手は友達でもいいんだよな?
「で、30分経っても相手が来ない。 電話も圏外で連絡手段もなく、待ちぼうけ」
「・・・・。」
ここがスタジオの一角で、想像の相手との待ち合わせなのに なんとなく不安な心持ちになる
「そろそろ、50分。 すっぽかされちまったかな、と思い始めた頃、だな」
(あ。 俺、今すっごい不安そうな顔になってる・・・のに)
男の手は休まずシャッターを切り続けている
助手らしき人と短く言葉を交わしているのは、次の指示か何かだろうか
話の間、逸れていた視線が突然キャスケットを真正面から捉えた

「キャスケット!悪い、待たせた!」

撮影の中断を言ったのだろう彼の言葉は、それまで想像の世界に入り込んでいたキャスケットには
待ち合わせの相手が放った声に聞こえた。

ぱぁっ、と顔が勝手に笑う

パシャッ
「オーケィ、次、そっちの段差に膝ついて。視線はこっちだ」
カメラマンの声で ハッと我に返る
(のせられた!)
「今度は表情殺せ。笑うな。カメラ睨み付けて、そう。 もっと、下から見上げて」
何食わぬ顔のカメラマンから憤る余裕を与えず次々に飛んでくる指示に従ってポーズと表情を変えるだけで
精一杯のキャスケットは彼の要求に応えるのに必死で一時も気が抜けない
いくつめかのポーズを撮り終えた後、
「次の衣装の準備頼む」
という指示が聞こえて漸く、はぁぁ、と大きく息をついた



2度の衣装チェンジを終えてスタッフ達が後片付けを始める
短時間ながらも密度の濃い撮影現場に簡単に引き受けるんじゃなかった!と愚痴をこぼしたくなるくらい集中していた気がする
モデルってこんなハードなバイトなんだっけ?とへたり込みそうになったキャスケットの背後から 「おい!」と声が掛かった
「ふぁ?」
呼ばれて振り返る前に うっかり抜けた声が出てしまった
「おまえ、もう一回セットに戻れ」
ぐぁ。まだあったのか、フェイントじゃん、と戻るキャスケットとは反対にスタッフ達は銘々スタジオを出て行く
「あれ? みんな行っちゃうけど」
どうするんだろう、と首を傾げるキャスケットの腕が引かれてセットの真ん中へ据え付けられた
「あいつらもう次の仕事があるからな。少し押したからこれ以上引き留められねぇ」
事も無げに言われた言葉にぎくりと冷や汗が流れる
それって、俺が素人で手間取ったって事?
「あぁ、違う。 俺が調子にのって引っ張りすぎただけだ」
いつもはもっと短時間で撮っちまうんだ という言い分に ふぅん?とよく分からないながら相槌を打つ
話しながら カメラマンは引き上げてしまったスタイリストの代わりにキャスケットの服を弄っている
「あ。」
気付けば 胸元のボタンが4つ程はずされ 見事に着崩したスタイルに変わっていた
「きっちり整えた写真しか撮ってねぇからな。こっから崩すぞ」
「ぇ、あ、はい。」
(いつもはもっと手短に切り上げるって言ってたのに、なんで今日は違うんだ?)
そんな事に気を取られていたらまた怒鳴られるかもしれない
真剣に撮っているのが分かるから怒鳴り声も別に構わないのだけど、普通の声の方が好きだなぁ
一瞬ちらっと浮かんだ考えを深く掘り下げる時間が無かったのはキャスケットにとって幸いだったのか不運だったのか。
狭いスタジオで2人きり
そんな事実にも気付かないまま カメラマンのテンション任せの撮影はその日遅くまで続いたのだった








 自分の知らない自分

引き出してくれる腕に溺れるかは貴方次第







まぁ後日「上がった写真見ようぜー」って連絡が来て呼び出されてしまうよね。っていうか撮影の後に
ご飯食べにいっちゃったりするのかしら。あぁもうそうなったらお持ち帰りとかされてしまいますよね^^
あ、途中ローが助手と話していたのはキャスケットの名前を聞いていたのでした。あと、サンジのもう一つの
バイトは勿論レストランの厨房です。


・・・というか本当は↓こういう展開のはずでした。お昼休みに書いてたので気分にならずに中途半端な
エンディングにしてしまいましたが、本当は、↓こうなる予定だったんですよ。気になる方だけスクロール







「下のボタン2つばかり外せ」
カメラマンの指示にぎょっとする
「何とろとろしてる」
戸惑うキャスケットに 早く、と睨む目に思わず従いそうになって いやいや、ちょっと待ってよ、と顔を上げる
「だって、2つも開けたら見えちゃうじゃないか」
この場合の見えるは とりあえず下着の事だが、ブーメランとまでは言わないがビキニタイプのソレは下手をすると
危ない箇所まで見えてしまうかもしれない
「それがどうした。 何の為の見せパンだ」
「み、見せパンん?!」
そういえば何かで聞いた事があったかもしれない
でもそれって男の下着にも適用できるものなのか?
ち、と舌打ちしたカメラマンが立ち上がるのが見え、どうやら自分には考え込む時間すら与えられないのだと慌ててズボンに手を掛ける
冗談じゃない。
シャツのボタンならともかく、ズボンのものまで他人の手で外されるのなんかとんでもない。
しかもあのカメラマンの事だ
きっと自分の好きなように大きく開いて、それこそ "見せパン" が写真に写るまで広げるに違いない
「ふ、2つだけ、だからなっ!」
ささっ、と自分の手で外したキャスケットは なるべく下着が見えないように出来るだけ服が乱れないポーズを取った
相手は何か言いたげにちらりと視線を寄越したが、文句を言わずにカメラを構える
ほっとする間もなく、ポケットに親指を掛けろだの膝立ちになれだの動きのあるポーズが続いて
やばい!これじゃ見えちゃうじゃないかと服を直そうとしたら やっぱり怒鳴られてしまった
「見せパンだっつってんだろ! 隠してどうすんだボケ!おら、もう1つ外せ、ボタン」
「2つだけって言ったじゃないか!」
思わずの反論にも聞く耳持たず。
「だから最初は2つで撮ってやったろ!女じゃねぇんだ、パンツの1つや2つで恥ずかしがってんじゃねぇ」
むっかぁ〜〜っと頭に血が上る
(誰が女だ! 俺だって普通に見えるくらいじゃ気にしない。 だってコレ雑誌の撮影だろ?万が一そんなのが載っちゃったら、
それこそ恥ずかしいじゃないか!)
頭の中で怒濤の文句を繰り広げながら、そんなに言うなら見せてやろうじゃないかと3つ目のボタンを引きちぎる勢いで外してやった


バシバシと炊かれるフラッシュが眩しい
ぶすくれるキャスケットに容赦なく "表情かおを作れ" と指示を出す相手を睨み付けるようにレンズを見つめる
「あと何枚か。 最初みたいに笑え」
やけくそで にやりと不敵な笑みを浮かべていくつか姿勢を直されるうちに、宣言通り何ショットか撮影したカメラマンは
つかつかと近寄ってきて ぐい、と下着に手を掛けた
「ちょ、なっ?! 見えるってば、やめろよ!」
そんなに下げられては下生えが出てしまうじゃないかと焦るキャスケットの耳に、ふふんと声が届く
「写っても目立たないように金を指定してんだ、安心しろ」
なんだって――!?
"キンパ指定"ってのはその為か?
寝耳に水のキャスケットの驚愕を顧みず、ぐいぐいと下げられた下着から金色の毛が覗く
「あっ、あ!何やって、ダメだってば、見えちゃうだろ」
「だから、見えていいんだ。馬鹿だな」
もぉ!そんなの撮って誰が喜ぶってんだ
揉み合ううちに 大きく開いていたシャツが肩からずり落ちる
脱げた肩を直す余裕のないキャスケットに、カメラマンは "お、" と眉を上げると ずるりと更にシャツを落として
片肌脱いだあられもない格好を作り出した
「ちょ、何、」
するんだよと声を上げる前に 露出していた小さな飾りが捉えられる
"ひやぁ、馬鹿、どこ触って・・・!" と慌てるキャスケットに構わず 執拗に離れない指に つんと尖りだしたそこをくるくると
なぞって 息を詰めるキャスケットを黙らせた後、ついと彼が手を退いたと思った途端、バッ!とフラッシュが光った
(え? え? なんで?!)
スタジオには2人きり、カメラマンは手こそ退いたもののまだ自分の背後に居るのに、パシャパシャとシャッターを切る音がする
くくっ と背後で聞こえた笑いに振り返ると にやにやと笑うカメラマンが手の中の小さな方形をひらひらと振った
「リモコンだ」
ほら、やらしいヤツだなぁ、乳首そんなに勃たせて。 全部 カメラに納めちまうぞ
からかう言葉に かぁっと頬に血が上る
「やめろって」
両手でレンズから顔を隠すように遮るモデルの"服を直す"という事すら思いつかない動揺っぷりを くすくすと笑っていたカメラマンは
ぐい、と髪を掴んでキャスケットを仰向かせ ぱくぱくと声も出ない唇にぱくりと喰らいついた



「ん、んん?!ん―――っ?」
目を白黒させるキャスケットの口内を相手の舌が好き勝手に蹂躙する
普段であれば "なんで男にキスされてんだよっ" と文句の1つも出てくるはずのキャスケットの頭は先程からの無茶な事態に
既にパンク気味で 背後にいる男を引き剥がすべく動くはずの腕は ただふらふらと空を掻いただけだった
その手を掴んだ腕に縋るように掴まって 与えられる愛撫に耐える
長々と続いた口付けに思考がすっかり正常な働きを止めてしまったキャスケットが大人しくキスを受け入れる頃になって漸く
相手の男が離れた

カシャ

響いた音も耳に入らずぼんやりとするキャスケットの腕を掴んで立ち上がらせた男の 「撮影は以上だ」 の声で解放されても
まだ呆然と突っ立ったままのモデルを丁寧に衣装ルームまで運んでやり着替え他諸々を手渡したカメラマンは "お疲れ" の
一言もなく次の仕事現場へと向かって出て行った









「は〜ぁ」
堪んねぇな、とキャスケットは溜息を吐いた
友人に 撮影どうだった? 結構面白いだろ、と聞かれて 引き攣った顔で "あ、まぁ、ね" と答えるのが精一杯だった
本当は "何とんでもない仕事押しつけてくれてんだよ、えらい目にあったぞ" と文句の1つも言いたいところだったが
かといって「何があったんだ」と聞かれても答えられるわけがない
(ホントなら、こいつが脱がされるとこだったんだよなぁ) と何も知らない友人の顔を眺める
多分、サンジもあんな撮影になるとは知らなかったはずだ
(いや、脱がされたっつっても、パンツはちゃんと履いてたし! ちょっと上半身はだけてただけで 一応シャツだって
羽織ってたし!)
だから、文句を言えない一番の原因はアレなのだ

(最後にかまされたべろちゅー)
なんであの場面でキスなんだ。
俺が文句言えないようにするためか。 ありえないだろ、ふざけてる。
あの前後の機能停止してしまったキャスケットの記憶は曖昧で 一体どんな撮影になったのか考えるのも恐ろしい
急の代理で迷惑かけたなと夕食の入ったタッパーを置いたサンジが不抜けたキャスケットを置いて帰った事にも
気付かずぼんやりと教室で座りこけている
いやに騒がしくなったと思ったら次の講義が始まるようで、追い出されるようにしてキャスケットは教室を出た
ほけっとしてる間に今日自分の選択している講義は全て終わってしまったらしい
遊びに出る気にもならずに 帰って貰った飯でも食べようかと家に向かう

モデルがサンジだったら、サンジにもキスしたのかなぁ


ぽつんと降ってきた疑問は、ぶるぶると首を振って頭から追い払った









「はい、これ。」
なんとなく納得いかないような妙な気分のまま過ごしていたキャスケットに、サンジから大判の封筒が渡される
「? 何これ?」
ノートやレポートならこんな袋に入れないよなと封筒に目を落としたキャスケットは、「こないだの雑誌のゲラ版だってよ」と
言われて ぎくりと冷や汗をかいた
ちょっと待って。忘れてたけど、あれってどんな写真に仕上がってるんだ?!
「もしかして、・・・・見た?」
恐る恐る尋ねてみると、にっと笑った友人に "事務所で見せて貰ったけど中々写り良かったぜ?" と言われて 小さく息を吐く
「気になるなら開けて見れば?」
「や!や、いい。うん。 うち帰ってから見る、ありがと」
慌てて提案を却下しつつ、"何恥ずかしがってんだよ、おまえとは思えないくらいスカした顔で写ってんぜ?" という
友人の言葉にほっとしながら、がさがさと鞄に仕舞い込む
人前で 自分の写ったページを見て顔色を変えない自信がない
「あれっきりだぜ。 もう代打は引き受けないからな?」
念を押しすぎて よほど恥ずかしいのかと笑われたものの、スタジオであのカメラマンと顔を合わせたら平静で
いられないだろう自分が容易に想像できてしまうのだから仕方ない
このまま会う事なく日常に戻って忘れてしまおう
そう思っていたキャスケットが 帰宅して開いた雑誌の中には、友人の言うとおり 自分とは思えない数々の写真が並んでいた

(う、っそ〜〜。 これが、俺ぇ?)
そりゃぁ、サンジが "おまえとは思えない" と言うはずだ
自分で見てもこれが自分だとは思えない
「うわ、うわ、まるで モデルさんみたいだ」
自分の手腕でなんとかしやがれ
そう言った時の、カメラマンの ふふん、と笑った顔が思い出される
(あぁ、あいつ。本当に 凄腕の写真家なんだ)
実力を見せつけられては納得するしかないと見直したところで、雑誌の間から ぱらりと更に封筒が零れ落ちた

「何? ・・・だ、コレ?」
拾った封筒を逆さにしたら 中から バラッと写真が零れ出た
「あ。」
これ、後半の、スタッフが帰っちゃってからの写真だ
そういえば雑誌には使われてなかった
「ちょ、やっぱり!パンツ写ってるじゃないか!」
はわわわわ、こっちの写真が不採用になってて良かった!
ぶーぶー文句を言いながら見ていたキャスケットが次の写真を見て ぴきりと固まる
ずり下がった下着からチラ見えしている金色の毛、はだけたシャツから写る つくんと尖った乳首など、文句の声も出ないほど
破廉恥な写真がそこにあった
(す・・・・捨てる!こんなの、今すぐビリビリに破って捨てる――っ!)
真っ赤な顔で手にした写真を最後まで見もせずに破ろうとしたキャスケットの目に、後ろの方の数枚が意に反して飛び込んできた
「な・・・・っ!!!」
なにこれなにこれナニコレなにこれ―――!!!
多分、キスの直後なんだろう。 蕩けた目元に半開きの唇は 互いの唾液でか てらてらと光っている
"ぎゃ――――っ!!!"
いやらしすぎる。
ぶるぶる震える手で、真っ先にコレから破ろうと掴んだ写真の下に もう一枚、見る気の無かったキャスケットなのに
うっかりまともに目にしてしまった

「あの時の・・・っ!」
印画紙いっぱいに写し出されたそれは まさにカメラマンと口付けを交わしていた瞬間のアップで、静止した一枚の写真のくせに
ねっとりと熱い口付けが与える淫猥な空気まで伝わってくる
その上、写真には短い走り書きが加えてあった

『これらの写真は不採用にしてやる。代わりに、おまえは俺の個人モデル決定だ』


冗談じゃないっ
こんなの見せられて、どんな顔して会えっていうんだ
(サンジに、口止めっ・・・)
慌てて携帯に手を伸ばす
自分の連絡先は絶対に漏らすなと伝えようと掴んだ携帯は ブルブルと数回振動して止まった
「なに、え。メール? ・・・サンジ、から?」

"事務所から連絡があった。カメラマンがモデルを気に入ったとかで、おまえにコンタクトを取りたいらしい。流石に
勝手に住所は教えられないから電話だけ教えた。直接連絡があると思うけど大した気に入られようだなw 我が儘で
気難しいって評判の写真家だが、あの人、腕は確かだぜ? 奴のお眼鏡に適うとか、おまえ実はすごいんじゃねぇ?"


読み終えるかどうかのタイミングで鳴りだした携帯。

取るか取らないか、迷うまでもなく取らない事を選択する
(だって、一度電話を取ってしまったら、うまく丸め込まれてしまいそうで、)
自分だって決して口下手な方じゃない。むしろ達者な方ではあるけど、どうしてだか あの写真家には敵いそうにない気がする
(こんな時の、俺の予感は当たるんだよ!)
鳴り続ける電話を 困ったようにへなりと眉を下げて見つめるキャスケットは、
電話に出ないという選択肢を選び続けると、どうにかしてあいつが自宅住所まで手にしてしまうような予感に見舞われて
どうやったらあいつから逃げられるのか、果たして自分は本当に逃げ切れるのだろうかと いつまでも、小さな携帯を眺め続けた











 運命だなんて信じないからな!

とんだ相手に目を付けられた、その自覚は充分










これも震災前に「いつか書こう」と思っていたものなのですが、予定ではもっとえっろえろの撮影シーンを
書くつもりだったんですよね〜。 今そんな気分じゃないのでエロい撮影は書けませんでした。 く・・・っ、
本当は、書きたかったんだぜ・・・!リベンジ出来たら1場面SSSとかで・・・うーん・・・書かないかなぁ、やっぱ。



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