SS置場3 Merry X'mas!! 〔頂き物〕 P はて。 この学校はそういった宗教だっただろうか。 キャスケットが首を傾げたのは2週間も前のこと。 それから今日に至るまで、大学の正門にある大きな木には夥しい数の電飾が巻き付けられ、 日が落ちるとともに眩しいくらいの光を放っていた。 「(あそこに使ってる電力少し拝借したらうち暖かくなるよなー)」 他学部の女の子達が目を輝かせて見ているのを横目に、キャスケットはいつもそう思いながら門を通っていた。 彼が遅くまで大学に残っている理由は寒さしのぎと勉強のため。 それと、心のストレスを減らすため。 この時期になると嫌でも街は賑わいだすのだ。クリスマスという名の一大イベントに。 毎年はさほど気にならなかったが今年は事情が違った。 大学近くの少し寂れかけた街が賑わうだけでも嫌になる。雑誌やテレビは比ではない。 例えば、電車の中にはくだらない広告が出回っていた。『クリスマスプレゼントにかける金額』。男は2万5千くらいだそうだ。 「(おれ達なら互いに出して5万?ありえねー)」 加えるなら、女の方がかける額は安い。 「(ありえない…広告ではなく、この雰囲気が)」 クリスマスは、一体いつから“恋人と過ごすイベント”になったのだろうか。 クリスマスイブには相方といなきゃいけないだなんて、そうでないとそいつは寂しいヤツだなんて誰が決めた。 独りでいるヤツを笑うな。 みんな当たり前のように相方がいるだなんて、決め付けるな。 人にはそれぞれ事情というものがあるのだ。 「……あ、」 ひたすらクリスマスイブという今日に反発しながら歩いていたというのに、キャスケットは気付いたらペンギンの部屋の前にいた。 「…はー…」 玄関に背中を預けて、ずるずるとその場にしゃがみ込む。 結局街の空気に、メディアに当てられてしまった。 「(そうさ、寂しくないなんて嘘だ。だって、みんなが恋人と楽しくしてるの見たら恋しくなるに決まってんじゃん。 そうでなくても、会いたいに決まってる…好きなんだから)」 分厚いマフラーにぐりぐりと顔を埋める。 「(もう少ししたら帰ろ)」 そう、家主はここにはいないのだから。 それでも、家主の気配を少しでも感じたくてキャスケットは目をつむった。 近所の家からこどもの賑やかな声が聞こえる。 すぐ下の道を通るカップルの声が聞こえる。 幸せそうな声が、よりいっそう彼を寂しくさせた。 こつこつとブーツを響かせこちらに向かってくる音がする。 きっとこの音の主も、これから幸せな時を過ごすのだろう。 そう思ったら、音は目の前で止まった。 キャスケットが瞼を上げると、黒い編み上げのブーツが目に留まる。ブーツインされた黒のデニム、 膝上丈の細かなコーデュロイ地のコートはカーキ色のダッフルコート。襟には白いファーがついていて、 「(顔と髪はいつも通り。けど、すげーおれ好み。ついでに、その手に持ってるケーキ屋さんのケーキとファーストフードのチキンも)」 いるはずのない彼が目の前に現れるのは何度目だろう。 「餓死か?」 「…寸前」 「風邪引くぞ」 そういわれて差し出された自分専用のサンタの手を、キャスケットは迷わず握った。 Merry X'mas!! 学パロの2人、ホントらぶらぶで大好きなんです^^* クリスマスなんですもの、恋しい人に会わせてあげて下さいv 意地っ張りな時も素直に甘えたり甘やかしたりしてる時も見ているだけでこちらまで幸せになるんですよね。 今年は雪ですね!ホワイトクリスマス、ペンキャスの2人もリア充の皆様もお幸せにv メリークリスマス! 2010.12.25 [*前へ][次へ#] [戻る] |