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SS置場3
拍手ログ 親子2 L
拍手ログ。親子SSSの2人の一場面です






家族揃って(と言っても2人きりだ)の夕食の席で キャスケットが努めてさりげなく口を開いた。
「今度の土曜日、何か予定ある?」
キャスケットがこう切り出してくる時は何かある時だ。
映画に行こうだとか買い物につきあってだとかいう時は始めにそう言って誘う
それが先に俺の予定があるか窺ってくるのだから、今度は一体なんだっていうんだ
「何かあるのか」
こちらの予定は言わずにそう聞いてやる
用件を聞いてから判断するためだが キャスケットは特に気にせず話を続けた
「友達が車出してくれて、バーベキューに行くんだけど、」
「行かない」
誘われる前にきっぱりと断る
ほらな。 先に予定が空いてるって言わなくてよかった
キャスケットがこうやって切り出してくる用件は大抵ローが即答で断りたくなるものばかりだ。
「あんたの友達と行くんだろ?それっくらい一人で行ってこい」
「え〜〜、ローも一緒に行こうよ−」
どっちが子供だか分からない物言いに呆れた顔で義理の父親を見つめる
テーブルの向こうから身を乗り出すようにして駄々をこねるキャスケットは多分席についていなかったらローの腕を掴んで
行こう行こうと揺すって色よい返事を催促してるんじゃないだろうか
(お子ちゃま・・・)
「知らない奴でも来るのか? あんた人見知りするタイプでもねぇだろ」
味噌汁を啜りながら言ってみれば、キャスケットは指で頬を掻きながら首を横に振る
「知らない顔ぶれもあると思うけど 仲良くなるのは得意だ」
だろうな、と心で思いながら 誘導通りの会話を続けていく
「家族揃って参加、みたいな決まりもないんだろ? なら一人で行きな」
ぐ・・・、と言葉に詰まったキャスケットが そ、そういう決まりは 無いけど・・・と唇を尖らせる
ここで都合のいい嘘が吐けないのがキャスケットたる所以だ。
ローの母親なら "そういう決まりだから!" というすぐにバレる嘘で押し通して 当日ごめんと舌を出すところだろう
(こいつのそういうところが気に入ったのかな)
亡き母を思い出していて聞いちゃいなかったのだが、目の前のキャスケットは必死でローの説得を続けていた
「〜〜だからさ!俺が居なかったら昼を作る奴いないだろ?一緒に行けば解決じゃん!」
いつの間にか ローの食事という観点からの説得になっている
「自分で作れるし食べに出てもいいし買ってきてもいい。どうにでもなる」
おかわりどうするか、と手に持ったまま迷っていた茶碗が横からひったくられた
「一人にしといたらロー食べないじゃないか!駄目だって、一緒に行こう! な?大学行ったら参加することもあるだろ?
今から準備とかに慣れといた方がいいって」
(学校のメンツでバーベキューに行ったとしても 端で見てて焼き上がった肉を喰うだけのタイプだろ、俺は)
それくらい察しろよな、と思いながら ムキになって説得を続けるキャスケットの顔を眺めていたローは、ふと思い当たって口角を上げる
説得に夢中だったキャスケットが ローの表情に気付いて 目を瞬いて言葉を切った。
な、なに? と窺うように見てくる相手を焦らすように たっぷりと間を取って発言する

「一緒に行きたいんならそう言えばいいだろ」
虚を突かれたように固まったキャスケットが取り落とさないよう 新たによそわれた茶碗をその手から抜き取る
ご苦労さん、と茶碗の中のつやつや光る白米に箸を突き立てた段になって漸くキャスケットが解凍した
「な、な・・・っ、違うだろ!? "一緒に行こう" っつったんだよ!」
真っ赤な顔で喚けば喚くだけ本当はそうだって白状してるようなもんなのに。
("一緒に行こう" と "一緒に行きたい" は違うようなぁ)
声に出さずに ふふん、と嗤ってやれば およその考えが伝わったようで、頭に上った血が許容量を越えたらしいキャスケットが
ますます目元を赤くして口を開く
「も、もう!い・・・、」
つい、と指を出してキャスケットの言葉を封じる
叫びかけて大きく口を開けたままの若い父親に くすりと笑いを零しながら "行ってもいいぜ" と望む答えを与えてやると
逆上して "もういい!" と叫ぶところだった事に気付いたのか ふゆん、と音でもするような風情でテンションを下げたキャスケットが
「あ、うん。」 と気の殺がれた声を出して頷いた。



 

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こいつのどこに母は惚れたのだろう
数え挙げるその行為に意味なんてない




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