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SS置場2
手紙 L?

全編通しでキャスケットの一人語りです。これもまたベタな話かもしれません。そして短時間クオリティです←









今日は、帰ってくる・・・のかな

ううん。
今朝は お気に入りのシャツを着ていった
それだけなら確信は持てないんだけど、遅くなるって・・・もしかしたら帰らないかもって言って出掛けた
なら、彼は、今日はおそらく帰ってこない

分かってる
ローは また、浮気してる
浮気相手が誰かっていうのも、知ってる。
親切にも その名前を俺の耳に入れてくれる物好きな人が居るから
それが 波風立てて楽しみたいっていう意地悪な親切心からだってのも、知ってるけど。
あわよくば それで離婚にでもなれば 自分にもゴシップ種の一人になる機会に恵まれるかもしれないという、
計算によるものだっていうのも、気付いたんだけど。

(そんな 企みになんか、負けるもんか)
遅くなるからいらないと言ったローの分は必要なく、自分用に簡単に終わらせてしまった夕食の片づけを
しながら、キャスケットは頬に飛んだ泡を腕で拭う。

昔っからローの周りにはたくさんの女の影があった
彼女たちをつまみ食いするのにローが何の躊躇いも持っていないのもその頃からの事。
そんな中で、ローの遊び相手の中で、自分だけが浮いていた。
性別だとか そういう上辺的な事じゃなくて、イイ男相手ならいくらでも夜を共にできる遊び慣れた大人の
女達にまじって、うまく割り切る事もできない不器用な自分が ひときわ異彩を放っていたのは 誰だって知っていた。
彼女たちの中には、ローが重いと感じたら捨てられてしまう、と本気のそぶりを見せないようにうまく隠していた人も
少なかれ居たのは俺だって気付いてた
自分もそうしないきゃ捨てられてしまうって思ってたのに、どうしても うまく隠せなくて。
でも ローは俺のそんなところを面白がっていたんだと思う
いつまで経っても、キスだけで慌てる俺をからかうのがローのお気に入りだったから。
"純情ぶってんじゃないよ!"
彼女たちから罵られた事もある
俺だって すぐ赤くなる顔とか、慌てると余計にドジってしまう事とか、なんでも顔に出ちゃうとことか、
直せるもんなら直したかったんだけど、どんなに頑張って平気な顔をしてもローには通用しなかった。
・・・ローには なんでも、お見通しで。

"ローには、意地を張っても無駄なんだ"
そう、諦めて観念する頃には どういう奇跡か 一番最初に切られそうだった俺がステディの立場に収まっていた
卒業までの何年かを一緒に暮らして――
気付けば籍まで入れてくれて。
そんな期待なんて していなかったのに。
ただ ローが飽きるまで・・・俺なんか要らないっていうまで 彼の傍に居たかっただけだ
『死が二人を分かつまで一緒に居る』
そんな、贅沢な約束を貰って もう、死んじゃってもいいってくらい、幸せだった

ローの女遊びは それまでと変わらず続いていたけど
最後には必ず俺のところに帰ってきてくれたから
嫉妬が沸かなかったわけじゃない。 でも、待っていていいっていう、約束を貰ったから。
ローが帰ってくる場所を守るっていう役割を貰ったから、俺にはそれで充分だった


"それは間違っている。おまえの人間としての尊厳はどこにある?"
俺に向かって そう指摘したのは、学生の頃から一緒に居る、俺とローの事も全部知ってて、それでも態度を変える事なく
一緒に連れ立って行動していたペンギンだった。
"どうしてそこまで耐える? ないがしろにされて、それが普通だと思い込んで、いくら愛は見返りじゃないって言ったって
そんなの綺麗ごとに騙されているだけじゃないか。なぜ、もっと貪欲にならない? もっと、彼に求めないんだ?"
それまで俺が目を逸らしていた事実を、ペンギンは正面から突き付けた
"対等じゃない愛なんて、幸福でもなんでもない"
ペンギンの言葉に、俺は反論した
違う。 ローの傍にいられるだけでいいんだ、それで、幸福なんだって、怒鳴り返した
でも、言えば言うほど、それが本心だけじゃないって強調しているみたいで、そのうち、俺は黙り込んだ
ローの傍に居たいのも、一緒にいれば幸せなのも本当だ。
裏を返せば、俺のその言葉は 彼の居ない時間がどれだけ寂しいかって、大声を上げたのと一緒だった。
寂しければ寂しいだけ、ローが帰ってきた時の喜びも倍加する。
そんな単純なからくりを ずっと一緒に居て全部を見ていたペンギンが暴いただけだ
反論の途中で 俯いて黙り込んだ俺を、ペンギンはそっと抱き締めた
「俺は違う。そんなめくらましのような幸せじゃなくて、おまえを、悲しませたりなんかしない」
放っておけなかったって、ペンギンは言った。
俺がどんなに健気にローを待っていても、彼を信じても、ローはローだ。変わりっこない。
そんな俺が浮気にの度に傷つくのが見ていられない。いつの頃からか、そう思うようになったって、言った。
「男同士だって、人並みの幸せを求めてもいいだろう?」
俺が、ローの周りの女達相手に 男の自分を引け目に感じてるのを、ペンギンは気付いてた
ローと居るよりも幸せにしてくれるって言った。
肩身の狭い思いも、誰にも憚ることなく、引け目なんて一つも感じなくていいように、俺だけを見ているって言ってくれた

ちょうど、今度の浮気相手が すばらしく扇情的な肉体の持ち主で、俺じゃ とても敵いそうにないひとで、
またぞろコンプレックスを酷く刺激するそのひとの出現に落ち込んでいた俺を 優しく抱き締めて慰めてくれたペンギンの手を
振り払う事ができずに居た俺を、彼は優しく、でも力強い口調で説得した。

きっと、別れたいといえば、ローは俺に執着する
今まで以上に甘やかして 彼の胸から離れられなくなるような 蕩けるような幸せをくれる
(それとも、出て行きたいなら行け、と冷たく突き放すのだろうか)
いや、たぶん・・・・ローは前者だ。
俺の迷いも逡巡も、ローを愉しませる調味料の一種だ
(その上、ローは 優しくて冷たい)
俺を甘やかすのも、俺と一緒に居るのが好きだという彼の言葉も本物。ローの本心からのもの。
だけどそれを振り切って出て行く俺を止めないのも、彼の優しさであり、冷たさでもある。
引き留めて欲しいという俺の本心が透けて見えていたとしてもローは引き留めたりしない。
俺がペンギンとローの間で迷っているのに気付いていても こうして浮気をやめないように、ローは全く自分を変えない。

選ぶのは、俺だ。

その選択を俺に任せてくれるローは、優しいのだろうか。 それとも 彼の周りに集まる女達が言うように、冷たいのだろうか

それを潔いと取るかどうかは、見る側の自由。
俺にはどちらが正解かは分からない

だけど、ローが 俺なら彼の傍を離れていかないって、信じてくれたんなら。
きっと彼が俺を選んだのは そういう事だと思うから
ごめん。 ペンギン。
俺、ローの傍を離れられない、よ。

俺さ、離れるふりをして ひとときばかりのローとの甘い時間を享受するっていう事も、したくない。
駆け引きとか、そんな事 したくないんだ。
一瞬だって、ローが裏切られたって感じるようなことは、したくないんだ

ローを楽しませるすばらしい体も、恋の駆け引きを楽しむような器用さもない俺が、唯一自分に誇れるのが
彼を想う気持ちだから。

心配してくれるのも、ペンギンの気持ちも嬉しい。
ペンギンの指摘だって間違ったものじゃないのも、分かる
だけど、ずっと見ていてくれたおまえなら分かるかもしれないけど、これが俺達なんだと思う。
いつかはローも変わるかもしれない。・・・ペンギンの言うとおり変わらないかもしれない
だけど、俺は どんなローでも、傍に居たいんだ
丸ごと 彼を受け入れる。
それが俺にできる、彼にしてあげられる唯一の事だと思うから
幸せそうに見えなくてもいいんだ
『一生傍に居ていい』 って言われた時、俺がどれだけ幸福だったか 分かるかな
ローには、それと同じだけの幸福をあげたい。
それは俺が一生掛けてローにあげたいものだから


ありがとう、ペンギン。
見ていられないっていうけど、嫌じゃなければ 見届けてほしい
俺が、どうやって、ローを幸せにするかを。
どれだけ、俺が幸せを感じているかを

最後に、"ほら、結局 おまえが間違っていた" って笑ってくれてもいいよ。
でも、絶対に間違わない自信があるから




「あ。・・・うそ。ローが、帰ってきた」
手紙を書き終えて、顔を上げたキャスケットの耳に ドアフォンの鳴る音が届く
きちんと封をした便せんを漏斗に入れ、軽やかな足取りで玄関に向かう

もう、彼女と別れたのかな。 今回の浮気は思っていたより短かかったな。

『おかえり。 ロー』

キャスケットは にっこり笑って、待っていた愛しい相手を迎え入れるために 玄関の扉を開けた






 扉の先にあるもの








まぁ これを悲劇にするならローが女伴って帰ってきて別れを突き付けるとか、扉の向こうにいたのは
ロー死亡のお知らせを携えた警官ENDとかだよね。最初下衆風に 遅くなるふりをしてペンギンとの
逢い引き現場に乗り込むローにするかなって思ったんだけど キャスがなんか語り始めたらそんな展開に
出来なくなりました。(自分は浮気はオケ、でもキャスケットの浮気はダメってやつ。この二人、ローの方が
立場強いからコレもあり。もしくはその展開だけどキャスが思い込んでるだけで案外ローに大切に
されてた展開もいいなと。浮気云々は嫉妬した女達の出任せで実は本当に仕事だったとか定番
ハピーエンドね)あと、文中に書いてないけど選択を相手任せにするのは自信家なのか不安の
裏返しなのか微妙だと思います(でも仄めかすだけで書くのはやめました) ちなみにキャスケットは
専業主夫じゃなくてパートタイムかバイトに出ています。人と接するのが大好きな子ですから^^
籍を入れるってのはアレですよ。養子縁組とかそういうので最後は同じ墓に入れますってヤツです、ハイ。

すいません、また風邪でダウンしてます。講習会会場ひえっひえだった、死んだ・・・ 30分で終わると言ったくせに
2時間半も講習してました。ひょっとして;だまされた



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あきゅろす。
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