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SS置場2
SSS 冷夜 P

拍手のつもりでしたが先日差し替えたところなので(しかもストックがまだある)通常更新です。でも短いSSS!









「さっむい!もう、さっむい!!」
ほぅ、と白い息を吐きながら、星の浮かぶ空を見上げる
"寒い" と文句を言いながらも、夜半のキンと凍るような冷たい空気の中にいるだけあって目に映るのは見事な星空だった
(空気が冷たい方が星が綺麗だって本当だよな)
太陽の光を映して細く輝く月がぽつりと浮かぶ
こうして、空を見上げているものは 今この瞬間、何人いるんだろう
見上げて 星なり月なりを 身近にいる誰かに喩えているものは、何人いる?

――姿を変えて遷ろう月

――全ての旅人の指針となる、不動の星

遠く離れた故郷にいる家族の顔。或いは、親しい友人達。それとも―――

「また、そんな薄着で見張りに立つ」

想いを分け合う、恋人の、顔

「薄着じゃないよ。ちゃんと毛布だって掛けてるじゃないか」
当番でもないのに、毛布を携えて見張り台までやってきたペンギンに笑いかけながら振り返る
事実、キャスケットは自分用の毛布を肩から羽織って空を見上げていた
「今夜は冷えるって言っただろう。毛布一枚で寒さが凌げるものか。中で見張る事だってできるのに」
なんでわざわざ外に居る? と 顔を顰めるペンギンが、差し入れだ、とポットを投げてきた
「珈琲? ありがとう。」
受け取って、中の液体の熱が伝わるのか 暖かいそのポットを腕に抱える
「あったかい」
ほーんと、なんで俺こんな寒い日に外での見張り、引き受けてるんだろうねー、と 思い出したように
ペンギンに合わせて愚痴をこぼす
勿論、それが本心じゃない事なんて、ペンギンにはお見通しだ
「調子の悪いクルーと代わってやったんだろう?たまには断ればいいのに」
「息も凍りそうなほど冷たい夜ってのも、嫌いじゃないもの」
こぽこぽと音を立てて珈琲を注ぐ
空に向けて立ち上がる湯気も こんなに美味しそうに見える
「こう、さ・・・・身の引きしまるような気がしない?」
こんな空気の中ってさ、何を見てもいつもより2割り増し綺麗に見えるよね
何気なく 浮かんだ言葉を舌に乗せる
こちらに歩いてくるペンギンの目が 眩しそうに細められた
「・・・そうだな」
「何、その間。 今 適当に相槌うっただろ」
一瞬、躊躇うように口を噤んだ後、こちらの髪に手を伸ばしながらペンギンは口を開いた
「いや・・・本当に そうだと思ったから」
触れるペンギンの目は、愛おしそうに細められていて、見つめられたキャスケットの方が照れくさい
なに 気障なこと、言っちゃってるの。ペンギンて、たまにこういう らしくないこと、言うんだから・・と
声にならないツッコミが脳内を走る
「え、俺?・・・違うって!俺が言ったのは景色のことで・・・」
言いかけた言葉が、触れるペンギンの口内に消える


「っ急、なんだよ、おまえ」
「今更だろ。来るのが分かってて外で待ってるくせに。」
意地っ張り、と笑うペンギンの顔が また近付く
二度、三度と 繰り返す口吻で 少しずつ、冷えていた体温が上がっていく
キスに答えるので精一杯で、いつの間にか しがみついていた肩に ペンギンの持ってきた毛布がふわりと掛かる

――2人分の毛布
一緒に くるまる、相手の体温。

こんな、寒い夜も、嫌いじゃない

頬を撫でていた大きな手が、キャスケットの顔を持ち上げる
「ペンギン?」
こつん、と おでこをぶつけた恋人は、そのまま耳の方へと顔を滑らせた

「・・・さっきのも。」
「え?」
耳元での囁きに くすぐったそうに首を竦めたキャスケットの耳に、熱い吐息が掛かる
「褒めてるんだから、素直に受け取っておけ」
キャスケットの性格なんて、とっくに把握済みのペンギンは、それだけを言うと 反論が飛び出て来る前に
開いた唇へと己の舌を ねじ込んだ





 寒い夜には特別な過ごし方



寒いからこそ 暖かくなる 言葉と抱擁を 恋人に。






だって寒いんだ!千堂の席は冬並に寒いんだ!凍えてるんだよ、毎日!うぇーん←←


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