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SS置場12
恋愛シミュレーション(リク) P
SBSで公式にローとの出会いが明らかになりましたね。ということで!拙宅にあるお話の半分はパラレルに
なっちゃいました^^ でも公式情報嬉しいですvv ということでちょうどシャチが途中乗船する話を
書いてたところだった千堂は速攻ボツにした!確実に問題ないところで現パロを書こうということで、
リクというかコラボというか?元ネタはカラ色トリ籠さまの恋愛シミュレーション話です(リレーじゃないよ)
その設定を使って千堂が書いたらどうなるか?というのがリク内容です。つまり、第一話にあたる部分が
ここには書かれていません(不親切)前段階のお話については現在ナノによる制限中で閲覧できませんが
後日案内しますので!今は想像で補完して下さい、よろしくお願いします^^;









「ああ、酷い目に遭った・・・」

昔の友人との再会は確かに嬉しかった。だけど、間違ってもそれは恋愛的な意味じゃない。
だいたい、神様も融通が利かなさすぎる。
いくら"ゲームみたいな恋愛がしたい"と願ったからって、誰が男相手に恋愛したいっていうんだ。
(や、俺だってそういう人種がいるのは知ってるし否定はしない。けど!お願いを叶えるくらいの力があるなら
願い事をした人間が望んでいる相手の性別くらい分かれっつの!)

ぷりぷりしながら学校を出たシャチはこれから出てくる選択肢を全力で恋愛方面のレベルアップになるものを
回避すれば野郎とカップリングなどという恐ろしい事態はないだろうと改めて考えた。
事あるごとに出て来る選択肢は正直鬱陶しいけど油断さえしなければ大丈夫だろ。
(今のところ、どう転んでも好感度アップの回答しかない選択肢って出てこなかったもんな)
なんとかなるかと希望が見えたシャチは怒りから冷めてみたら喉が渇いてたと目についた自販機に足を向けた。
炭酸系がいいなと忙しく目で選びながら小銭を求めてポケットを探る。

「あ。」

ポケットから出す時に指に挟み損ねたコインが一つ、ぽろりと落ちてアスファルトに跳ねた。
2歩3歩と追い掛け、捕まえた・・・と小銭手を伸ばす。
コインしか見ていなかったシャチの視界を横切って伸びてきた手がコインごとギュッと手を掴んだ。

「え?」
顔を上げたシャチのすぐ目の前に、涼しげな瞳の学生が手を伸ばして身を屈めていた。
地毛かブリーチしたのか不明だが腰まで伸びた金色の長髪。顔に掛かる髪を水色ストライプのヘアバンで
無造作に上げているスタイルが計算したかのように決まっている。
惜しむらくはその目元のすぐ側を縦に走る傷跡だが、完璧な造形だと鼻につくところを逆に魅力的に
見せている。
(イケメンて得だよなー。何やってもそれなりにサマになるっつーの?)
そんなことを考えていると、目の前のイケメンが フ・・・ッと目を細めた。

「すまない。こちらに転がってきたから拾って渡すつもりが一瞬遅かったようだ」

微笑まれて我に返ったシャチは、掴んだ手を放す際に キュッと一瞬握られたことに気付いた。
あっちゃ〜と思ったときにはもう何度も聞いた電子音が響き、新しい出会いを祝福するシロクマが現れる。
『今度の相手もなかなかイケメンだね!選り好みしてないでそろそろターゲットを絞ったら?』
というシロクマの助言に、持っていた小銭を投げつけそうになったのを辛うじて踏みとどまった。
今そんなことをしたら間違いなくさっきのイケメンが拾ってしまう。
何がターゲットだとブツブツ溢しながらやけくそ気味にジュースを呷ったシャチは、このむしゃくしゃを何かに
ぶつけなきゃ、そうだゲーセンで発散しようとその場を離れる。

『早く絞った方がいいのになぁ・・・』
じゃなきゃ後が大変じゃないかなというシロクマの呟きは 財布の中にある資金の確認に勤しむシャチの耳には
届かなかった。




 *  *  *




げっそりした顔で帰宅したシャチは考えなしに出歩くんじゃなかったとぼやいてベッドに倒れ込んだ。

ゲーセンでも最初は楽しかったのだ。
だが音ゲーをすれば集まるギャラリーは男ばかり、対戦ゲームをすれば相手と良い雰囲気になりと
矢継ぎ早に(男との)出会いがあった。
こりゃダメだと帰る途中の電車では急カーブでガタイの良い赤毛のサラリーマンの胸に顔から突っ込み
分厚い腕で支えられる始末。
寧ろ痴漢に遭わなくて良かったかもしれないと自棄でもなんでもなく本気で考えたくらいだ。

「あり得ねーだろ。たったこれだけの時間に出会い過ぎだ」
この調子で出会いを繰り返していたらシャチの周りには恋人候補の男しかいなくなるかもしれないと気付いて
ぞっとする。
(うーわー、最悪だ。それじゃ女のコが寄ってこないじゃん!)
本来出会うはずだった運命のカノジョとの出会いを逃してしまうかもしれない。このままじゃ下手すりゃ、俺
一生独り身!?

『だから言ったでしょ。早くターゲットを決めた方がいいって。』

青褪めるシャチの耳にシロクマの声が届く。
キッ!と振り向いたすぐ鼻先に現れたシロクマは非情な現実を突き付ける。

『冗談でも何でもなくて。本当に相手を選んでゲームを始めるまで次々出会いがやってくるんだからね!』
「マジか!」

やめてくれ。これ以上野郎との出会いは要らねぇと文句を言っても一旦発動したお願いは停まらないらしい。
こうなったら早いことゲームを終えて元の平和な生活を取り戻そう。

「因みに、どうなったら終わるんだ?」
『相手を落としてカップリングが成立したら終わりだよ』

つまり、その後二人が別れようが神様は関係ないということだ。

(なら、さっさと誰か落として終わらせりゃいーんだろ)

そうするしかシャチの平穏を取り戻す術はないらしい。

「誰にすっかなぁ…」

できれば早く終わらせて、その後事情を説明して円満に別れられるヤツ。
新しく出会った知らないヤツじゃ駄目だろう。冗談で済ませてくれそうな前からの知り合いがいい。
(・・・ローはダメだな)
冗談は通じる相手だけど通じすぎて冗談じゃ済まなくなるかもしれない。
(かといってゲームが終わらなくても困る。)
とっとと終わらせて元の生活を取り戻したいのだ。いつまでも男相手に恋の駆け引きとやらを続ける気なんかない。

(ペンギン・・・か?)

長く会っていなかったとはいえ子供の頃の友人だ。すぐに落ちるかどうかはともかく、親しくなるのは簡単だろう。
それだけでも時間の短縮になる。それにペンギンなら後で事情を話せば分かってくれるはず。
良い人選だろと、暫く考えたシャチは笑みを浮かべて頷いた。
それを見守っているシロクマも頭上でにっこり笑っている。
シャチがまともにゲームに取り組むと決め、これにてようやく怒涛の出会い攻撃が止むことになった。





 *  *  *




「今日一緒に帰らないか」

こちらから声を掛ける前に相手の方からお誘いがあった。
当然、出てきた選択肢の中からOKを選ぶ。
たったそれだけのことなのに好感度が上がるのだから恐ろしい。いや、早いことクリアしたいのだから
今の場合はその方がいいんだけど。
シャチの選択がゴール(?)に向けたものに変わったせいか、今朝の質問以降新しい出会いはない。
既に出会いを済ませた相手からはいくつかのちょっかいがあったが全て素っ気ない対応でこなした。

(俺が今ロックオンしてるのはペンギンだけだっつの)

下手に手心を加えた回答だと好感度が上がってしまうから情けは無用だと気を引き締める。
どうやら初級レベルのゲームらしく、冷たい対応を好むドMがいなくてシャチ的に大助かりだ。
都合が良い事に他の相手に素っ気なくするだけでペンギンの好感度も上がる。
ゲームを楽しむのではなくクリアを目指しているのだからとシャチは駆け引きも何もなく狙った相手にだけ
好意的な選択肢ばかりを選んでいった。
事情を知らない人間が傍から見れば露骨すぎる受け答えをしているのだが、ゲームをクリアすることに
熱中しているシャチは一向に気にならない。
シャチと恋愛しようという女のコを遠ざける効果は同じなのだが、残念ながら今のシャチはそんなことまで
頭が回らず上機嫌だ。
(この分なら2〜3日のうちにゲームから開放されるんじゃねぇ?)
熱中すると周りが見えなくなる性格はシャチの致命的欠点であった。




「や、でもこうやって一緒に帰るのって何年ぶりだ?」

懐かしいなと感想を漏らす間も "急に引っ越しちまって淋しかったなー"と好感度アップに余念がない。
「まぁ、家族よりも長く一緒に居たくらいだからな・・・」と返すペンギンの目元がほんのり赤いのを見て
シャチは己の勝利を確信した――あと少しでペンギンは落ちる!
こいつ真面目だし下手をすると手こずるかもと思ったけど、予想外に簡単に落ちてくれそうだ。
(そういうヤツだから、話せば分かってくれっだろ・・・多分。)
堅いだけに納得してくれない、なんてないよなと若干の不安が頭を掠めたが、いや、ないないと
首を振る。
ペンギンは良い奴なんだ。ちゃんと説明したら分かってくれるってと隣の友人に目を向けた。
後ろに見えた景色に違和感を感じて視界を広げたシャチは、いつの間にか人通りの少ない道に
入り込んでいることに気が付いた。
今度越してきたペンギンちってこの辺か?ときょろきょろしているシャチの腕をペンギンが掴む。
"ちょっとこっちへ・・・"と先へ行くペンギンは更に人の居ない方を目指して進んでいる。
ここにきて漸くシャチもペンギンがわざとこの道へ誘導したのだと思い至った。

もしかして今日でゲームは終わりかと期待して、素直に導かれるまま着いていく。

ペンギンが足を止めたのは人通りのない絶好の告白場所で、いよいよか?!と期待に満ちた目で
彼からの反応を待つ。
突然こんな事を言われて驚くかもしれないけどと前置きをして、少し落ち着かない様子の友人は
その言葉を口にした。

好きだ、と言われて ついに来たかとシャチは目を輝かせた。
頭の中でガッツポーズをしながら、俺もだとペンギンに合わせる。
実は初恋はおまえなんだ、付き合って欲しいと言われて勿論オッケーだと答えてから、あれ?と思った。




選択肢、出てなくね?



え、これゲームの最終イベントだよな? 選択肢でてこねーけど、なんで?と疑問符を浮かべたシャチは
ペンギンの言葉がまだ続いていた事に気が付いた。

「将来は結婚前提の付き合いをとまで考えていたのに、学校に上がるやいなや親の転勤で引っ越しが
決まった時はどれだけ絶望したか」
「はい?」

ペンギンが引っ越していったのは小学生の頃だ。もう何年も前のこと。
だがシャチがお参りして神様の気紛れによりこの恋愛シミューレーションゲームが始まったのはごく最近。
いくら神様の力が働いているとはいえ、そんな過去にまで遡っての影響はあり得ない。

(・・・これ、ゲームの作用が言わせたセリフ、だよな?)

いやな予感に冷や汗が止まらない。
"ペンギンはイイ奴だ。ゲームが終わった後、きちんと説明すれば分かってくれるだろ"
そう考えたのは昨夜の自分だ。
だけど、これがゲームの作用じゃなくて、ペンギンが元から考えていたことを口にしているのだとしたら――?

「まさかこんなに経ってから再会できるなんて考えてなかった。いや、運命の再会だとか思ってるのはどうせ
俺だけだと抑えてたんだが・・・」
シャチも同じように思ってくれてたんだなとはにかんだ様子で言われてドスッと重たいものがシャチの両肩に
落ちてきた気がする。
言えない。
こんなに喜んでる奴に向かってゲームだと思って調子を合わせてただけだなんて、とてもじゃないが言えやしない。

とん、と無意識に足を後ろに引いたシャチの背中が塀に当たった。
こちらの動きに釣られたようにペンギンが歩を進めたおかげで壁際まで追い詰められたような立ち位置に
ぎょっとしたシャチの額に、ペンギンの唇が触れる。

(で・・・、でこチュー)

これ以上ない恋愛シミュレーション的シチュに、 がくんと膝の力が抜けたシャチを支えたのは目の前の友人の腕だ。
進退窮まった状況で口から泡でも吹きそうだというのに、正に春が到来したばかりの友人は感慨深そうに腕を回し
ハグを返してくる。
別にシャチは抱きついたわけじゃないのだが、告白が成功したばかりのペンギンは抱き付かれたと感じたことだろう。

(これがゲームじゃねぇってことは・・・終わんねぇの?この恋人関係・・・?)

人気(ひとけ)の無い場所で抱き合う2人が一方は天国、もう片方は地獄を味わっているとは神様も推測できまい。
気を失うしか逃避の術のないシャチの頭上で、上機嫌のシロクマが大量の花片を振り撒いていた。






 恋愛シミュレーションのススメ

〜ターゲットの選択は慎重に〜






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