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SS置場12
ペンギン予報2



ガタン!と倒れこんだ拍子にぶつかった脇机から何かが飛んでいった。

それを確かめる暇は与えられず、状況を把握した時には船長室のベッドの上に転がっていた。
身を起こせないのは既にローにマウントポジションを取られているからだ。

油断――というよりも、こんな行動に出るような場面ではなかった為、何の警戒もなかったペンギンが
なすがままに倒されただけだ。いや、手が伸びてきた時点で咄嗟の反応はしたのだが、相手がローなら
その対処では遅すぎる。
そもそも口論の最中だったのだ。その口論すら予定外に起こったもので、通常の業務連絡の際に言った
ちょっとした小言が地雷を踏んだらしい。
些細な言葉だったはずがいつしか激化していた口論の最中に、こんなに激論になるような事だったか?と
胸中で首を捻っていたタイミングで腕を掴まれそのままベッドへと引き倒されていた。

(う・・・ごかない・・・!)

ぶるぶると腕が震えるほど力を込めているのにペンギンの手は動かない。
掴まれている位置もまずいのだろうけれど、それ以前に腕力が違う。
細身の体つきながらあれだけの大振りの刀を振り回すのだ。いったいいつ鍛えているのかと、同じ船で
寝食を共にしていながら未だにクルーの間でも謎だと言われている。
ローの手に因る拘束を解こうと力を振り絞るペンギンの頭上で くすりと笑う声が響く。

「鍛えてるとはいえまだまだだなぁ、ペンギン。おまえの腕力はこんなもんか?」
槍使いのくせに少しばかり足りねぇんじゃねーのかという揶揄の間に、ローはその手を持ち変えた。
ペンギンの両手首を一纏めに掴んだ手は、持ちにくいはずの二本の手をしっかり捉えて尚余裕が見える。

「もっとも、一番足りないのはそこじゃねぇが」

てめえのこの自由な足はただの飾りかと空いた片手が腿をなぞる。

「甘いんだよ、おまえは」

船長の肩書きに遠慮なんざしてる余裕があるのか?と、ローは掬い上げた膝裏を己の肩に掛けた。
着衣のままとはいえ、ローの目の前での大開脚にカッと頬に血が上る。
――ちょっと待て。貞操の危機を感じるのは気のせいか。いや、気のせいじゃない・・・かもしれない。
何のつもりだという喉から飛び出しそうになった言葉を慌てて飲み込む。
(下手に聞いてしまったら取り返しのつかない事態に陥ってしまいそうな気がする)
無難な受け答えを模索して回転する頭が答えを弾き出すより先にローが動いた。

「ちょ、・・・」
不穏な気配に "ちょっと待て" と言おうとしたのだが、最初の一文字で遮られてしまう。

「んっ!・・・ん、んん・・・、」

本人の承諾も得ず縦横無尽に口内を蹂躙する舌に呼吸を乱されながら、ペンギンの脳裏では
昨夜シャチに見せられた週刊誌の文句が踊っていた。



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