SS置場11 家族5 C うああ、一気に最後まで書くつもりが寝オチってました。こんなとこで切っちゃったら最後がすごく短くなるのにー ぱたんと扉が閉まる。 外部から遮断された空間の出来上がりだ。 他の人間に聞かれることなく話の出来る状況だが、聞き出すまでもなく彼にはシャチとペンギンが逢い引きしている事を 知られている。 「決まった相手を作らない主義だったよな」 言いながら ペンギンの方へと距離を詰める船員が何を考えているのかなんて知りたくもない。 ペンギンの過去の所業をシャチに話して聞かせるのか、それとも誰でもいいのなら自分ともう一度というつもりなのか。 「誰に聞いても最近はずっとご無沙汰だって話だし」 にじり寄る仲間との距離はもう殆どない。 目の前に立った相手の背はペンギンより少し低いがこうして顔を付き合わせると正面から目線が合う。 その彼が、にこ、と笑みを浮かべて口を開いた。 「それってこういう事だったんだよな」 その一言でがらりと彼の纏った雰囲気が変わる。 すぐ側にあるベッドへとペンギンごと倒れ込み、こちらが返事を返す間もなく口付けられた。 「・・・っ!」 上になったクルーの胸を押し返して抵抗する。 跳ね退けるほど強くはなかったがそれなりの意思表示をしたペンギンの手を強い力が握って胸から剥がした。 「なん・・・っ」 もう片方の手はペンギンの身体を探っている。 ぎくんと身を強張らせるペンギンの腰を辿り尻肉を掴んではその間を探ろうとする動きはこれまで彼と過ごした夜には なかったものだ。 慌てて今度こそ跳ね退けて起きあがろうとした時には船員の指先が其処を捉えていた。 「ゃめ、」 びくっと大きく脚が跳ねた。 今すぐ逃げなければ隠しようのない体質が知られてしまう。 いっそ殴ってでもと考えるのに、強張り動きの止まった一瞬の間に彼の手が服の中に忍び込んでいる。 「突っ込むより、こっちのが良かったんだろ?だから、シャチと寝るようになってからは船の連中はお呼びじゃなかった」 「ぁ・・・待っ・・・ア!」 ブランクのあった後でもあれほど反応を示していたのだ。 このところシャチと過ごしてすっかり元の感覚を取り戻している身体ではその気で攻め立てられては逆らいきれない。 奥歯を噛み締め声を抑えるペンギンの瞼に唇が触れる。 眇めた目を薄く開ければ 彼は口角を引き上げ笑っていた。 「あんた、俺の時もかなり強引だったろ?受身もいけるならそうさせてもらう」 ああ、自分がかつてしたように彼も身体で落とそうとしているのかと思った。 最初にこのクルーとそうなった時も無理矢理ではなかったが溜まった欲に訴え掛けてセックスに持ち込んだようなものだ。 おまけに自分は散々開発された淫蕩な身体をしているのだから抵抗しきれないだろうなとどこか醒めた気分で判断していた。 自ら撒いた種のようなものだ。 シャチ以外の相手に突っ込ませるつもりなどなかったのに、と今頃になって気付く。 眉を寄せ、目を閉じてしまったペンギンの額にキスが施される。 「そんな顔するなよ。ちゃんとあんたも楽しませてやるから」 悲しませたいわけじゃねぇんだぜと囁きながらも、その日 彼はペンギンを最後まで抱いた。 「じゃあ、おやすみ」 またねと言葉を残して仲間の船員の出ていった後の扉を眺める。 先日、ペンギンの部屋に押し掛けてきたクルーとは別の男だが、彼とも一夜を過ごした事が何度かあった。そういったペンギンと 関係のあった者達で横の繋がりがあったのか、あの夜以来何人かが夜の誘いを掛けてくるようになっていた。 その全員がペンギンを抱こうとして部屋にやって来ては手を伸ばしてくる。 一度きりで終わらない予感にどうすれば彼等を納得させ引き取って貰えるのかと溜息を吐いた。 気が進まないなりに彼らの訪問を受け入れているのは自分の都合で遊ばなくなった事に引け目を感じたからだ。 互いに束縛しない関係に納得済みだと思っていたが、先日ペンギンを抱いたクルーの様子を見ても これまでペンギンが浮き名を 流した相手の方ではそれに不満の気持ちが燻っていたらしい。 だが、やはり誰がベッドに入ってきても身体を開くのに抵抗を感じる。 強引に伸ばした手が身体に訴え理性では拒みきれない状況で流されて漸く相手を受け入れている有り様だ。 ペンギンが今のところ望んで交わっているのはシャチだけなのだと痛いほど思い知らされる。 だから、こんな状態をいつまでも続けているつもりはないのに、解決策が浮かばない。 そもそもが"家族"と"伴侶"の区別も付かずに育ってきたペンギンはこういった心の機微に疎い。 加減が分からず、相手に気持ちを預けすぎてこれまで何度も失敗してきた。 だからこそ、この船に乗って以来 揉め事の起こらない気楽なセフレという関係しか結んでこなかったというのに。 こんな状況では彼と抱き合うこともままならない。シャチには気付かれたくなくて、あの島以来ゆっくり話す機会すら持てずにいる。 (・・・シャチに会いたいな) 今一番話したい相手を襤褸が出ないよう避けなければならないなんて鬱憤が溜まると もう一度深い溜息を零して、 ペンギンは疲弊した体を休める為に目を閉じた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |