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SS置場11
信頼10
拍手たくさんありがとうございました。最近お礼文更新してなかったから久々でした^^








『常に傍に置いてもらえる立場を目指すのはいい考えだ。だがトラファルガーは側近の人間にも考えの詳細を
明かすタイプではない。出来ればベッドの中で寝物語にでもそのヒントを聞き出せる間柄になれるといい。』
その身に怪我を負ったのはとんだ失態だが、怪我の身にかこつけて傍に居たいと訴えたのは良かった。
健気を前面に押し出せば少しはあの男の情も動くだろう。

おまえの考えにしては上出来だ、と褒める声が聞こえて、シャチは俄然反発した。
『ふざけんな、誰が作戦だ!』
俺の気持ちにそんな打算はねぇと喚くシャチに、何を言ってるんだと声が笑う。

『おまえがそこに居ること自体、作戦だろ』
『はあ!?何だよ、それ』
わけ分かんねぇこと言ってはぐらかすなと聞く耳を持たないシャチの激憤を、憎らしいくらい冷静な声は
相手にせずに受け流した。
『誰だ、てめえ・・・!』
勝手言いやがって、隠れてないでツラァ見せやがれと怒鳴るシャチに知らないはずないだろうと
笑うだけで答えず、言いたいことを一方的に告げるだけで話を切り上げる。
『ああ。その怪我のことは***様の耳に入らないように――…』
『おい!待てよ』
闇の中、失礼極まりない相手を捕まえようと見えない先へと腕を伸ばす。
どこにいるのかと振り回した手が声の主に届く前にグラッ…と足元が揺れた


「な・・・っ?!」

ドタンと大きな音と同時に背中に生じた衝撃に息が詰まった。
なんだなんだと目を瞬かせたシャチは、逆さまの視界を遮って飛び込んできた呆れ顔で瞬時に頭が覚醒する。

「おはよう。随分豪快な起床だな」
「・・・はよう」
「相変わらずおまえの寝相は大胆なことだ」
床が抜ける前に直した方がいいぞと笑う相棒の揶揄に喧しいわと返しながら差し出してくれた手を素直に借りた。
以前の怪我はほぼ完治に近い。ペンギンの手を借りる必要はなかったが掴んだシャチは思い切り体重を掛けて
その腕を引っ張った。
倒れ込んだペンギンに"おまえこそ寝起きで鈍ってんじゃねーの"と笑ってやるつもりが、逆に引き上げられて
気付けばペンギンの腕に抱えられていた。

「ほあ?」
予定と違う展開に間抜けた声が喉から漏れた。
あにすんだよとハグのような体勢から首を捻って相手の顔を見据えれば、おまえの考える事くらいお見通しだと
涼しい表情で返ってくる。
「もっと意外性を狙えよ」
抱えた腕から解放して自分の身支度を整えに向かう相棒から"まだまだだな"と笑われて、イーッと歯を剥いて
顔を顰める。
「へっ そうやって油断してろ。次は足元掬ってやっからな」
裏の裏をついて更に裏を掻いてやる!と胸を張って高らかに笑い飛ばすシャチの顔めがけて飛んできた
トレードマークにもなっている水色の帽子を指一本でキャッチ。
そのまま何気なくクルクルと回して遊ぶシャチと違ってすっかり着替え終えたペンギンは首元を指で調整しながら
先行くぞとドアへと向かっている。
「裏の裏の裏ならただの裏だろ。だからおまえは単純だって言われるんだ」
「ちょ、ペンギン!」
目覚めが良かったのか今朝はやけに機嫌の良い相棒は、からかう言葉を言い逃げしてすかさずドアの外へ
身を滑らせる。
思わず投げつけたキャスケット帽は残念ながら間に合わなくて、ぺしっと軽い音を立てて扉にぶつかった後
まるでからかいの延長のように床へと滑り落ちた。

ちぇ、と舌打ちしてそれを拾い上げる頃には起き抜けの不愉快な夢の会話で聞き損じた名前に覚えた引っ掛かりなぞ
すっかりシャチの意識から抜け落ちていた




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