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SS置場11
吸血鬼パロ4-1
昨夜は書きかけで寝オチしてしまいました。今夜も寝てしまう予感しかしないのでとりあえず前編






最初にその噂を聞いた時、ペンギンは探している相手じゃないだろうと思った。
あの街に居た頃のローは取り立てて正体を隠している様子はなかった。多分、ペンギンを消そうとしたのは自分ではなく
キャスケットにも何か関わることがあるからだろう。

(今も一緒に行動しているのなら、今度は素性は隠しているはず・・・)

その気になって隠しているのならハンターたちの間で噂が流れるようなことにはならないはずだ。
存在を気取られるような痕跡を残すヘマをローがするとは思えない。
だから近隣の街にいるハンターにまで知られているほど存在を隠さない輩は自分の探している人物ではないだろう。
それでもペンギンがその街に立ち寄ろうと決めたのは、ハンターがどれだけ束になって掛かってきても返り討ちにするのは
容易いと自分の力に絶対の自信のある者ならローの居場所の情報を持っているかもしれないと考えたからだ。
(期待はしない方がいい。力のある者は気まぐれだし下手に接触して怒りを買ったらどうなるか分からない)
よしんば話が出来たとしてもこちらに情報を与える利点がなければ素直に答えてくれない可能性も高い。
それでも何の手掛かりもない手探りの状態で、身を隠している相手を探すペンギンはどんな小さな事でも残らず一つ一つ
辿っていくしか方法がなかった。
(あまり期待はしないで行こう。落胆は焦りを生む)
彼等に繋がる事ならどんな些細なものでも余さず拾っていかなくては。
見えてきた街の遠景を眺め、ペンギンは荷物を背負い直すと そちらに向かって歩き始めた。








「バンパイアの居ると知られてる街には長居しないんじゃなかったの?」

ローが住んでいた屋敷を捨て街を出たのは1年近く前のことだった。
それ以来、彼の所持している家屋敷を数ヶ月ごとに移り住んでいるのは一処に長期滞在するとどうしても闇に住む者達の間で
噂にのぼる。それを避ける為、或いは一緒に住むキャスケットの正体が彼等にバレるのを避ける為だ。
『目眩ましの信用性も絶対じゃねぇからな』
何かの切っ掛けで暗示が解ける可能性は零じゃないと話すローの力ならそんな事は起こらないとキャスケットは思う。
『まぁ、大概はそうだが。精神の領域は何が起こるか分からないのが通説だ』
過信は身を滅ぼすぜと彼のような強大な力を持つ吸血鬼に言われてキャスケットも苦笑する。
『肝に銘じておくよ。それでなくても俺は半端者だし』
こうして一緒に居るバンパイアがローでなければ人の中に紛れて過ごすのも苦労していたことだろう。
ただ、力が大きければそれだけ妖かしの者には勘づかれやすい。
それ故 ローの存在が彼等の口にのぼり始める前に住処を変え居場所を移動してきた。
まだ一度も血を吸ったことのないキャスケット1人なら人里で暮らすのも出来た。
だけど、誰かと共に過ごす事を経験した後ではいつ抑えきれなくなるかもしれない吸血衝動に怯えながらの単身暮らしに
戻る気力を奮い起たすのは難しかった。
(ローには全て知られている。何も、隠さなくていいのはこんなにも楽に呼吸が出来るのか)
隠す――というところで1人の事が頭に浮かんだ。
(ペンギンには気付かれてしまっただろうな・・・)
もし、ハンター達の間でキャスケットの秘密が伝わっていたら 自分は狩る側ではなく追われる側だ。
仕事は何をしても生きていけるがハンターの目を避けての隠匿生活は少しばかり難しいものがある。
(結局、ローの言うまま居候しちゃってるんだよな・・・)
そのローが珍しく吸血鬼の噂のある街に来た。通過する際の1〜2日の滞在だと思ったら、移動する様子がなくて
キャスケットも疑問に思ったのだった。

「本当ならさっさと通過してぇとこなんだがな」
ローの眉は煩わしそうに顰められている。
この街には放っておくと厄介な奴がいると告げたローは、知らぬ顔で通りすぎてもいいが間違いなく追いかけてくるだろうと
息を吐くと、下手に放置していつまでも付き纏われるより簡単に顔を合わせて遣り過す方がいいと話した。
「何日か留守にする。そいつの屋敷で数日過ごす事になると思うが、出来ればお前は外には出るな」
招待を断ると後が面倒だから応じるが、てめえの存在を知られると話がどう転ぶか分からない。面倒事になる予感しか
しねぇから絶対に存在を気取られるなと、いつもキャスケットに選ばせる彼にしては珍しく命令だった。
「え・・・そんな厄介な相手なの?」
「関わると面倒事しか起こらねぇ」
ハーフのてめえなんぞ片手で捻られるぞと忠告を受けて、キャスケットは絶対に関わらないようにしようと心に決めた。


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あきゅろす。
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