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SS置場10
キャス(4) L
ああああ、PCがフリーズしたから強制的に電源落として再起動待ってる間に寝オチしてたーぁ(:ω:)ううう









上陸は禁じないが素顔を晒して歩くなと命じられたシャチは更に不機嫌になった様子だった。
だが仕方ない。便宜上キャスと呼ぶ事にしたこの男はシャチと同じ顔で売りを商売にしていたのだから。
キャスが相手をしていた連中から絡まれても困るし無関係のシャチが妙な目で見られるのも避けたい。
――というローの思惑はシャチは知る由もない。
バンとペンギンに連れ出されていったシャチにローが拾ってきた男の素性というか生業なりわいを説明する機会がなかったからだ。
(だが 島の人間と同じ顔を晒して歩く煩わしさは分かっているだろう)
頭に血が上っているシャチだが放っておいても落ちつく。
それよりも先にローにはするべき事があった。
必要と思われる生検や細胞診――所謂いわゆる遺伝子検査の類を早く済ませてしまいたかったのだ。
(本人が碌に理解してないのなら体に聞くべき――だろ)
俗に言う"体に聞く"とは違うが幸いにもローには調べる技術も道具もある。
対応はそれから――そう考えての行動だった。

「船長、こいつの寝床はどこにしますか」
ノックの後 顔を出したペンギンはキャスを隣に連れていた。
いくら同じ顔でもシャチの部屋を使わせるわけにもいかない。かといって誰かの部屋に放り込むにはこの男は危なっかしいのだろう。
クルーの中に仲間とそっくりな人間に邪な振る舞いを仕掛ける奴はいないとは思うが、仮に誰かが手を出したとしても このキャスの
様子からすれば拒まないように見える。
(ま、身を売る商売をしてんだ。その上素直な性質とくれば抵抗しねぇだろうな)
ペンギンにも何処となくそれが伝わるのだろう。船の風紀の問題というよりも、彼の場合シャチの立場や気持ちを
気遣っている度合いが大きいが。
「警戒心が緩すぎる。優しくされれば誰にでも懐く。あまり無防備に甘えられてはその気がなくても間違いが起こるかもしれない」
ペンギンがこんな事を言うくらいだから酒の入ったラウンジではちょっかいを出す連中といちゃいちゃしていたのかもしれない。
加えて キャスは男に抱かれるのに慣れているのだ。そういう雰囲気になればペンギンの懸念も強ち気にしすぎだとも
言い切れないだろう。

「・・・丁度良かった。まだ調べたい事もあるから今夜は此所に泊める」

ローの言葉に安心したように頷いたペンギンは、食事は済ませたが風呂はまだだと報告して そのままキャスを残して行った。






最初からローが引き受けると踏んでいたのだろう。簡易シャワーの付いた船長室へ 入浴もまだのキャスを置いていくのだから
良い度胸だ。
(別に風呂くらいクルーと一緒でも問題ないと思うが、あいつも大概過保護だな)
だいたい、商売が出来るくらいなのだ。そこまで面倒を見なくてもキャスはシャワーくらい一人で入れる。
らしくもないがペンギンでさえキャスの子供のような言動に引き摺られて甘くなっているようだ。

「キャス。 疲れただろう。シャワー浴びてこい」
そこだ、と示してやれば男は立ち上がって素直にシャワーに向かった。
おまえの名前はキャス。シャチから貰った名前だと教えればちゃんと一度でそれを理解している。
知能が不足しているわけじゃないのだろう。多分、彼は必要な教育を受けていないだけで、身体的には何ら問題はない。
売春出来るだけの最低限の知識を施し、あとはそのまま働かせている元締めの影がちらつく。
下手に知恵など授けない方が使い勝手がいい。多少客に騙されやすくなるが我が侭も言わなきゃ逃げ出さない便利な鵜が
出来上がる。そんな図式がローの脳内に浮かんでいた。
(・・・シャチを居残り組に回すか)
残る項目の結果はまだだが、これまでの解析の結果は有り得ない合致率でローの推測を肯定している。
上がってきた残りの結果で裏付けが取れれば悪いがシャチを下船禁止にしよう。
本人が知れば自ら乗り込むと言い出すだろう。だからこそ有無を言わさず関わらせない事に決めた。
潜入くらいシャチには慣れたものだろうが、キャスの仕事を知っているローは行かせたくなかった。
厄介な案件ではあるがあの丘でキャスを見つけたのは運が良かった。下手をすると何も知らずに出航していたかもしれないところだ。

色々と思考を巡らしていると、シャワーを終えたらしいキャスが洗い髪のまま出てきた。
ドライヤーと部屋にあった飲み物を渡し、髪が乾いたらそこで寝ろとベッドを示す。
「ありがとう」
にっこり笑ってキャスが言ったのは多分飲み物の礼だろう。彼の話せる数少ない言葉のうちの一つらしい。
滴る雫が濡らさぬよう肩にタオルを乗せてやると、ペンギンの介入で中断していた分析を片付けてしまおうと、ローは
それまで行っていた作業に戻った



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