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SS置場10
従兄(4) L
ちびっとずつしか進まない… あっ、多分オチはないですよ、きっと!









「おはよ、シャチ。最近早いじゃん」
「おー。はよっす」
教室に入ったシャチは席に着いてホッと息を吐いた。
あれから ローが何を言ってくるかとピリピリして過ごしていたシャチも、漸く少し気を抜けるようになっていた。
家に居ても落ちつかなくて早くに学校に向かう習慣が出来たのはその影響だったが、あれっきり音沙汰がないことで
徐々に落ち着きを取り戻したシャチの生活は日常に戻りつつあった。

(そりゃそうだ。あいつだって学校もあるし自分の生活があるはずだろ)
2ヶ月後には新たに建て直した家に戻って元の生活に戻るんだ。
一つ上だというローには受験が控えているはずで、直にシャチに構っている暇なんてなくなる。
・・・それまでの数ヶ月を凌げばいい。
(あいつが家に戻れば接点が切れる。早く俺の事なんて忘れちまえ)
希望を見いだしたシャチはその考えに縋った。
ローがペンギンの家にいる間は迂闊に近付き過ぎないように気を付けなければならないが、
元凶さえ居なくなれば・・・
(また、俺を誘ってくれっかな)
互いの家でなくても、別の場所へ遊びに出るような親しい付き合いが取り戻せるだろうか。
教室の移動で席を立ちながら シャチの視線は意中の相手へと流れていた。
本当は追いかけて一緒に行きたいところだったのだが、ほとぼりが冷めるまで少し距離を置いた方がいいと
少し遅れて教室を出た。
彼の家にローが居る間はなるべくペンギンとも接しない方が利口だろう。
好いた相手を避けなければいけないなんて!
けど、つかず離れず、今の距離をキープするしかないのだからしょうがない。
本当は2人だけで会いたいし話したい気持ちを抑えて、しゃべる時も大勢に紛れて、だけど少しだけ近い位置で。
今のところペンギンに訝しむ様子は見えないから シャチとしては随分とうまく立ち回っていた。
その分 気は抜けないし疲れもするが、完全に切れてしまうよりずっといい。

ゆっくりめに廊下へ出たシャチは タイミングを計りながら教室へ向かっていた。
すれ違った別のクラスの友人に手を振って さて、俺もそろそろ教室に入るかと踏み出した足は、横から伸びてきた腕に
引っ張られ、思わぬ方向へと着地した。



ガッ、と腕が掴まれそのまま凄い力で後ろに引かれた。

あまりに突然の事で声も出せずに教室に押し込まれる。

「なん、…っ!」
何だよ一体!と文句を言いかけて、振り返ったシャチは衝撃に凍りついた。
見開いた両目一杯に映るのは顔を合わせたくないと願っていた相手で、いるはずのない場所での遭遇に
状況も忘れて声を上げる。
「おまっ、なんで、此処に!」
この時間なら学校だろうがという意味の問いに 相手はニヤリと口角を引き上げた
「ンなもん 少々サボったところで痛くも痒くもねぇよ」
言うが早い、その勢いで唇が塞がれる。
「ん…!ん、ん―っ」
何してくれる、こんな場所でッ!
必死で蜿くも体重を掛けて後ろに押され、不自然な体勢で足を縺らせながら後に下がった。気付けば壁を背に
追い込まれていて、歯列を割って侵入する舌が我が物顔で口内を探る。
必死で押し返しても体勢が悪く、ビクともしない相手に痺れを切らしたシャチは己の口の中にある他人の舌に歯を立てた。

「ぅ゛んん゛っ!」
立てたのだが、苦しさに呻いたのはシャチの方だった。

首を掴む指に気道を塞がれ呼吸が奪われていた。
苦し紛れに引っ掻いてもその指は剥がれず、酸素を求めて開いた口から 相手の舌が抜けていく。
鉄臭い血の味が口内に残っていたが、力を込めて噛むに至らなかった傷はそう深くはないのだろう。
「やりやがったな」と笑うローは一向に痛そうな顔を見せず、首から外した親指がシャチの頬を撫でる。

「これでも見つからないよう気を遣ってやってんだぜ」
その礼がこれか? と血の滲む舌を出して唇を舐める。
「何しに来たんだよ。勝手に出入りしてバレたら摘まみ出されんぞ」
だからさっさと出ていけと間近で笑う整った顔を睨み付ける
「分かりゃしねぇよ。 私服校って便利だな」
話しながらもローの手は服の上からシャチの体をなぞっていて まさかと目を剥いたシャチの顎を押さえた。
「ヤんぞ。どうやら空き教室みてぇだし都合がいい」
「出来るわけねーだろ、バッカじゃねぇの!」
放せ、これから授業なんだと押し戻そうとしたシャチの腕を掴み、ローは壁に押し付ける
「イヤなら暴れて叫んでもいい。誰かが駆け付けて来ても俺は構わねぇからな」
ギクッと動きを止めたシャチの頬を ねろりとローの舌が舐める
「バレたくないのはてめえだけだろ」
あまりの要求に声も出ないシャチのわなわなと震える唇を、つ・・・っとローが指でなぞった。
その動きで"どうするんだ?"と返事を促している。
シャチの返答なぞ分かりきっているくせに じわじわと追い詰めて愉しんでいるのだ。
ギリ、と唇を噛み締めるシャチを諫める動きの指は労ってるわけじゃない。嬲って遊んでいるだけだ。
「ペンギンには、」
言わないで・・・と目を伏せるシャチを眺める目は面白そうに細められていた。

「おまえは面白いな。負けん気の強い跳ねっ返りのくせして 肝心な部分で脆い」
こんなに簡単に弱みを握られて、馬鹿じゃねぇのと言う口調には何故か冷たさを感じない。
ローにはその方が楽しめるからなんだろうと青い顔で眉を顰めるシャチの手を引き、ゆっくりと机に押し倒しながら
覆い被さる表情は逆光で見えなかった。

"だから、俺みたいなのにつけ込まれンだぜ"

忠告じみた言葉を吐いた唇は 何も言えないシャチの唇に重なり、そのまま深く激しいキスに変わった



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あきゅろす。
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