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SS置場10
拍手ログ 妹未満(シャチ視点)
ちょっとばかし本誌バレを含んでいた拍手お礼文。言わなきゃただの捏造だとWJ見た翌日速攻書いたやつです。
ロシャチにUPしたい気もするのですがその他でUP









船長!船長ってば!

騒がしいシャチの声が甲板に響く。
また、何かワガママを言って船長を困らせているのだろう。
(…ったく。あまり1船員ばかり優遇されても困るのに)
苦い顔のペンギンの心配も余所に 多分今日もローはシャチのわがままを聞いてやるのだろう。
この船のリーダーは言葉を話すシロクマにも甘いのだが、その他の船員の中ではベポに次いでシャチにも甘い。
天真爛漫の彼を可愛がるクルーも多いから 同じように船長もシャチには弱いのだろう。
時には煩いと追い払い そうそうおまえの言う事ばかりきいていられるかと突っぱねるくせに結局はシャチの希望を
叶えてやるのだから始末が悪い。
船長自身、これでは示しがつかないとシャチにも厳しい顔を見せているようだが何の邪気もないシャチに甘えられると
それも崩れてしまう
(…恋人だからと甘やかすような人じゃないと思うんだが)
今のところペンギンの目に余るわがままも他のクルーから不平の声が上がらないのはシャチの無茶振りが
"他愛ないわがまま"の範疇に収まるからだろう。
(自覚している船長に言っても無駄だ)
他のクルーも巻き込んできゃっきゃと騒いでいたシャチがこちらに向かって歩いてくる。
丁度いい。
シャチに少しは遠慮というものを見せてはどうかと忠告しておこう。

歩いてくるシャチが視線を感じたのかペンギンの方へ顔を向ける。
目が合ったのを切っ掛けに ちょっといいかと声を掛けると 機嫌良く笑みを浮かべていたシャチは頷いてペンギンについてきた









今日 ペンギンからお説教を喰らった。
あんまり船長に我が侭放題ばかり言うなっていうお説教。
っていうか、アレだろ? 要するに船長に甘えるなって言いたいんだ、ペンギンは。
まぁ、俺の事情なんて知らないから言えるんだろうけど。

俺の事情――
聞いたら少しは同情してもらえるだろう。
俺がめいっぱいローに甘えて我が侭いって(そりゃ、どうやったって聞けないような我が侭は言わない。それくらいの頭は
俺にだってある)船長を振り回す利かん坊でいられる、そんな理由。
なんてことはない。俺がローの知人に似ているからだ。
それも、もう亡くなっている、ローの家族に 俺が似てるんだそうだ。顔とか、雰囲気かな? そこまでは聞けなかったけれど。
家族もいない。構ってくれる友人や知人もいない。
そんな俺を拾って船に乗せてくれて、住むところばかりか家族同然の仲間まで与えてくれた。
その連中を率いるリーダーの資質だって抜群で、時には近寄りがたい恐ろしい雰囲気を持つくせに、懐に入れた人間には
とことん優しい。
これまで1人で生き抜いてきた俺みたいな人間には、とても手の届かないような神様みたいな人が 俺にだけは他の奴等より
心を開いて接してくれたら。
・・・ころっと参っちまったって不思議じゃない。
そんな相手に免疫の無かった俺なんて一発だ。
心底惚れ抜いて、この人の為なら命を張ったって惜しくないってくらいに想うようになっちまって…

(だけど、世の中そんなに甘くない)

少しばかり、自分はローの特別だって自惚れそうになった頃、シャチはその理由を知ってしまった。
大切な、今はもういない家族に、自分が似ているんだと ロー自身の口から聞かされた。

笑っちゃうよな。よりによって妹だとさ、妹!
そんなの、恋愛対象になれるはずがないじゃないか。
その上、ローがそういう意味で一番気に掛けている相手は自分じゃ太刀打ち出来ないような完璧な人間だ。
ローの隣に並ぶのならこんな奴が相応しいと シャチの目から見ても納得せざるを得ないような、そんな奴。

だから。
(ちょっとばかり、遠回りしてもらったって、いいだろ?)
自分の口からは 絶対に教えてやらない。
ペンギンが ローと自分の間を勘違いしているのなら、敢えて否定はしない。
・・・肯定も、しないけど。
(だって、放っておいたって どうせうまくいくに決まってる。あのローがいつまでも手ぐすね引いて見ているわけがないんだから)
それくらいの意地悪くらい、大目に見てくれなきゃ やってらんねーよ。思いきり甘やかせてやれなかった妹の代わりを演じる
狂言回しみたいな役どころなんて。
ローの事を、"優しいお兄ちゃん"だと思えるようになるまで、もう少し、時間をくれたっていいだろ?

へなりと眉を下げて、らしくない気弱な顔で笑ったシャチは、あと少しだけだから…と小さく呟いて もと来た道を引き返し
沈んだ気持ちを振り切るように明るい甲板へと出て行った。







 ―― 妹未満 ――





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