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SS置場9
放課後の密会(茶道部・ロペン)前編
前回更新はjunk置場でした^^
思いきり寝オチていました。最近寝オチばっかですみません。茶道部シリーズ、同室がシャチバージョン(キャスじゃないです)
の方のペンギンです。冒頭(溜息こぼしたとこまで)でカットした方がよかったかなとも思うのですが、少し短くなりそうで
その後の場面も入れました。これ、後編が1場面だけで終わっちゃう罠なのですが… 短かったらすいませんw まだ
書きかけでめっちゃ途中なので量が読めていません(が、あと1場面で終わるはずなのです)誤字あとでチェックします











研修だとかで顧問の姿が見えなくなったのは暫く前の事だ。
それじゃあ、少しの間平穏な生活が送れるとホッとした記憶も新しい。だが、そうそう平穏が続くはずがないと思ったのも本当で、
研修から戻って来たら暫く間が空いた事を理由にまた無茶な要求をしてくるだろうなと溜息を零してもいた。
こういう機会は逃さないのがローという人間で、まだ学生の自分では適うはずもない。
(場数の違いも考えず、渡り合えると踏んでいたのはとんだ思い上がりだ)
ペンギンのような考え方をする謹直な人間を扱うのはローには容易かったことだろう。
罠を張るまでもなく、口先1つで上手く絡め取られてしまった。
(暇つぶしに丁度良い玩具が手に入ったとでも考えているのだろうな・・・)
そんな不良教師に毎回律儀に振り回されているのだから自分も大概馬鹿だ。
じわりじわりと抜け出せない深みへと嵌っていく予兆を感じながらもローの呼び出しに応じているのだから。
(戻るのは今夜・・・だったか)
では 明日の部活は また"居残り"になるのだろう。
今日は早めの就寝にして体力を温存しておいた方がいいだろうか。
そんなことを考えていると、部屋で課題に取り組んでいたはずのシャチと目が合った。
「なんだ、もう終わったのか」
やけにニヤニヤしているシャチに 課題から解放されたのかと聞くと、彼は笑って首を振る
「や、俺じゃなくて。ペンギンなんか良いことあった?」
そわそわしてんねと訳の分からない事を言われて 「は?」と目が丸くなる。
ペンギンのその様子がおかしかったのか、シャチが ぷはっと噴き出した
「何きょとんとしてんの!」
ペンギンおっかしいと笑いながら、ひょいっとペンギンのノートを覗き込んだ。
「そわそわしてんだか単に気分が乗らないのか知んないけど、課題のやる気が出ないんなら今日はもう諦めて
寝ちまえば?」
元からそうしようかと考えていた事を言われてそれもいいかもなと応じながら、少しだけ釈然としない。
なんだ、その"見逃してやるよ"みたいな雰囲気は。
明日の部活を思えば気が重いくらいだというのに、こいつの目は何を見ているんだと呆れながらもシャチからの質問が
ないのなら別に課題は今日でなくてもいいのだ、彼が付き合ってくれなくていいというのなら、もう休んでしまおうか。
「・・・そうだな」
素直に同意したペンギンをシャチがやっぱりなという目で見ているが、下手に訂正してつっこまれたら誤魔化すのが面倒だ。
シャチの方から振ってくれたのならそれに乗ってしまう方がいいと、ペンギンは早々にやりかけの課題を引き上げた






用事で時間ギリギリに部活に顔を出したペンギンは姿の見えない顧問に眉を顰めた。
もう戻って来ているはずだったが・・・と考えながら戸口で立ち止まっていると、背後に人の気配が立った。
「悪い、用があって今日は休む」
戸口に居たペンギンのすぐ後ろに立つ人物は探していた相手で、彼は中に居る生徒に向かって話していた。
久しぶりに見た顧問の顔はごく標準の教師然としたものだ。
ペンギンが見慣れている人を食ったような笑みはどこにも見当たらない。
"そうやっていると普通の教師みたいだぞ"と考え、次いで ここが部活の場だと思い出す。
こうして顔を合わせれば何か始まるとでも思っていたのかと自嘲の思いで苦々しい顔をするペンギンに大して気を留めた様子もなく、
顧問は今日はこのまま戻る旨と部活は部長、副部長の指示に従って行うようにとだけ伝えていた。
(居残りにだけ顔を出すつもりなのか)
振り返って目を見てもそこに意図的な色は何もなく、事務的に用件だけを告げたローは本当に忙しそうに踵を返した。
…分からない。 顧問の様子から"部活が終わっても俺が戻るまで待っていろ"とは読み取れなかった。
今日は本当に用が立て込んでいるのか、それともペンギンが寮に帰ってしまえばそれを理由に後から仕置きをするつもりなのか。
迷った挙げ句、その日ペンギンが何も言われなくても残ったのは久しぶりなのに呼び出しがないとは思えなかったからだ。
だが1時間を過ぎても現れない教師に、ペンギンも自分の見込み違いかと危ぶみ始める。
考えてみればそうかもしれない。
部活にも出なかったところを見ると本当に用事があって外したのだろう。
ローの表情から"待っていろ"という指示が読み取れなかったのも そういう事だったのかと思えば納得がいく。
ちらりと時計を確認したペンギンは、あと30分待って来なければ寮へ引き上げようと決める。
その日 ローが現れるのを待たずに帰ったペンギンの元へ新たな呼び出しがくるもなく、そして その後もペンギンがローから
呼び出される事はなかった


(あれ以来、ローは部活には来ない)
元からいい加減な教師だと思っていたのだが、表向きの教師としての貌は崩さなかったのに。
何かと用があって来れないのは本当らしいので職務放棄ではないあたり、自分都合でのサボリではないようだった。
だが、これまで喩え部活中には姿を見せなくてもその後のペンギンとの居残りには現れていたローだ。当然、わざと部活の時間に
ぶつかるように用事を入れているのだろう。
避けられているのは他の誰でもないペンギンだ。
数学教師のローはペンギンのクラスを受けもっていないから顧問が部活に来なければ会う機会もそうないのだ。
廊下で擦れ違う事も滅多になく、あの研修明けの部活でエンカウントして以来まともに顔を合わせていない。
どちらか片方・・・いや、ペンギンの意思ではうまくいかないかもしれないが、少なくともローが意図的に会わないようにしているのなら
これまでの関係を無かったことにしようという意思表示でしかないだろう
"そうか。玩具に飽きたんだ"
酷く納得のいく解答に辿り着いた途端、自分を取り巻く世界が色褪せ無味乾燥したものに変わったような気がして、
脱力したペンギンの喉から 深くて重い溜息が零れた





(縋ったところで無駄だろう)
あの気紛れな教師がそれくらいで自分の意思を変えるはずがない。
そもそもペンギン自身はあの教師を引き留めたいのか?
"そんなはずがない"と、思いたいのだが、今 自分の身に起こっていることを考えると否定できなかった。
思えば "飽きられた"と気付いた時 何をしたわけでもないのに全身から力が抜けてしまったのは喪失感によるものだったのだろう。
ショック・・・だったのだ。
不要になった玩具を投げ出すように、何の言葉もなくそれまでの関係が終わってしまった事が。
(あんな爛れた関係、惜しむことなどないのに)
頭で理性がどう考えたところで理屈と関係ないところでペンギンは "終わりたくない" と思っているのだ。
だけど引き留める方法なんて知らない。
(あの "トラファルガーを"だぞ)
追い掛け、追い縋り 関係を続けようと訴えたところで逆に面倒だと突き放されるのがオチだ。
彼は寧ろ 嫌々ながらも逆らいきれないペンギンをこそ好んでいる。そんな手段を執れば逆効果でしかないと
ある程度ローという人間を識っているペンギンには、どうすれば留められるのか、思い付けもしないのだ。
諦めるしかない状況なのにうまくそうできない。
自分はこんなに未練がましい人間だったのかと意外な発見に顔を顰めても制御できないものは仕方なかった。
"こんな不毛な未練など、早く断ち切ってしまわなくては"
これは自分の資質の問題で、相手がローでなくても構わない――という事にしてしまおう。
いくら考えても彼の出した結論を翻す方法を思い付かないペンギンは、どうにかして諦めをつけようと別の案を探り始めた





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あきゅろす。
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