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SS置場9
実験(後編) L
後編です。久しぶりに△…かな? ○にするにはねっとり度が足りない。











「ね、ねぇ、船長。俺一体どうなるの?」
平謝りのコックの様子から どうやら自分が飲んだのはなにがしかの薬らしいと見当は付いた。
薬液を仕舞っておくのに丁度良い大きさの瓶が手元になくて厨房を訪れた船長と鉢合わせたのはキャスケットには
非常に不幸な偶然だった。
それが何の薬だったのかはぐらかして教えてくれない船長は全然余裕の様子だから、劇薬の類じゃないのは分かる。
捉え所のないふざけた微笑みもあくまでもポーズなだけで、あれでいてローはクルーを大切にしている。
だからといって完全に安心しきれない部分があるのも嘘ではなくて、だって、ローには医者というだけでなくマッドな
サイエンティストの貌もあるのだ。うっかり薬液を経口摂取してしまった部下を丁度良い実験体だと考える可能性はある。
吐かせるわけでもなく胃洗浄もなしで、コックに用意させた冷たい飲み物だけを持って船長室まで着いてこいという時点で
キャスケットにはその可能性しか考えられない。
だからこそさっきから自分の飲んだ物は何かと尋ねているのに、ローは直に分かると笑って取り合わないのだ、
これが実験でなくて何なのさ!
教えて下さいと食い下がるキャスケットを従え自室まで戻ったローが 「まぁ入れ」と室内に招く。
ローがわざわざ扉を押さえて道を空けるなど怪しい以外の何物でもないのだが、コップの中身が何だったのか知っているのは
彼だけなのだ。
「・・・お邪魔します」
渋々、目の前を通るキャスケットを見たローは「なんだ、髪が濡れてるぞ」等と、どうでもいい事しか口にしない。
「手伝いが終わって さっきシャワーを浴びましたから」
いくらキャスケットが温和だといっても流石にこれにはイラッと来て そっけなく答えるだけに留める。
正直、飲んでしまった薬が気になって世間話どころじゃないのだ。
「ふぅん。 そりゃ、好都合・・・」
だから、部屋に入っていく背後でローがそう呟いたのを キャスケットは聞き逃した



どうぞ、と持って来た飲み物をテーブルに置く。
限られた船の中のスペースで、個室にこうしたテーブルがあるのはここが打合せや面談の場になる事もある船長室だからだ。
とりあえず腰を落ち着けて薬の正体を聞き出そうという算段なのだが、席に着いたローはキャスケットにも向かいに座るように
促すと、目の前にある飲み物をこちらに押し寄せてきた。
「これはおまえの分だ」
言われて、戸惑いながらグラスを見下ろす
(なんだ。自分が飲みたかったんじゃないんだ)
冷えた飲み物の入ったソレは、さっき厨房で貰ったものだ。怪しいものじゃないのは確定済み。
だったら、なんで俺に?
罪のない飲み物を思わずじっと睨み付けるキャスケットを可哀想に思ったのか、ローは解答をひとつくれた。
「ンな顔しなくても単純なこったろ。 喉渇くんだよ、アレ」
それを聞いて弾かれたように顔を上げたキャスケットを、ローはニヤニヤと頬杖をついて眺めていた。
薬の作用だか副作用だか知らないけど、とにかく喉が渇くらしい。
それを見越して飲み物を持参させるのは果たして"親切"に含まれるのだろうか。
「・・・他にどんな作用があるんですか」
聞かなくても直に体験できるぜと船長は言うけれど、心構えってもんがあるでしょうと反論の声を上げる。
「ねぇ、ホントに俺、どうなっちゃうの?!」
いい加減にしてよと身を乗り出すキャスケットを諫めるようにローは"まぁソレでも飲んで落ちつけ"と相手にしない。
言われてみれば少し喉が渇く気がするけど、薬の作用というよりは今の状況の苛立ちが原因な気がする。

「・・・飲んだ方がいいんですか?」
「気を落ちつかせる分にはな」
飲んだところで薬の効果が薄れるわけじゃねぇし、と次の情報が与えられる。
いちいち小出しにしか答えないのは焦るキャスケットをからかうのと同時に薬の効き目が出るのを待ってるんじゃ・・・?
考えがそこに至った途端、この部屋を出て行きたい衝動に駆られる。
薬の作用で何かあった時に対処出来るのは船長だけだ。
だけど、同時にローは被験者の反応を見ようと手ぐすね引いて待っているわけで・・・
逃げ出したい!と、迷うキャスケットは頬を流れる汗を拭った。
あれ? この部屋さっきより暑くない?と無意識に汗を拭いた手を眺めた後、目の前の船長へと視線を移す。
面白そうにこちらを見てはいるが、ローの様子は涼しげなままだ。
そのローが、静かに口を開く
「体温の上昇と発汗」
「・・・っ」
観察した結果を指摘されて、ますます暑さが自覚される。
喉が渇くって こういう事?と思わずキャスケットの手が喉を押さえた。
「まぁ、飲んでも乾きが治まるわけじゃねぇけどな」
余計な事、教えてくんなくていい・・・のに!
これ以上熱が上がるのを抑える為に冷たいものを飲んだ方がいいんだろうか。
でも、たった今、飲んでも無駄だと言われたところだ。船長がそう言うなら気休め程度にしか乾きは治まらないのだろう。
「呼吸が乱れ始めた。・・・そろそろ気付いてんだろ?自分の変調に」
っ・・・はぁ、と自分の口から漏れる呼気すら熱くて、キャスケットはコップに伸ばしかけていた右手を逆の手で押さえた。
液体の入ったコップを持てば、腕の震えに気付かれてしまう。
そのキャスケットの様子を見て、くすっと小さく笑ったローが、ゆっくりと立ち上がった。
ああ、やっぱり自分の部屋に逃げ帰るんだった、と今更悔いても遅い。
「強情張っても疲れるだけだ」
ついっ・・・と、ローの手が首に掛かったキャスケットの髪を払った
「っァ、」
自分の髪が軽く首筋を掠っただけで、ぞわっと背筋を痺れが駆け抜ける
「さっきの、くすりっ ・・・まさか」
震えだしそうな身体を両腕で抱え込みながら、絞り出した疑問はあっさりと肯定される
「熱くて熱くて堪んねぇだろ。どうだ。こうやって軽く触れるだけで気持ちよくねぇ?」
さっきと違って 今度は意図的に首筋から鎖骨の方へ、ローの指が滑る
「あっ!ちょ、やめ・・・っ」
びくっ、と身体が跳ねるのを抑えきれなかった。
次第に熱を帯び始める自分の状態を知られて、カッと頬に血が上る。

ガタン!

視線にすら反応してしまいそうで 後先考えずに立ち上がろうとしたキャスケットは、すかさず伸びてきたローの手に腕を掴まれ
大きく目を見開いて相手の顔を凝視した。
見返すローは薬の効果を確信している顔だ。
むざむざ獲物を逃したりするはずのない、狡猾な捕食者のような強い瞳が自分を見据えている。
「はなっ、して!船長」
「馬鹿言うな。こんな状態のクルーを1人で外に出せるか」
言うが早い、細身のくせに力の強い腕がキャスケットを絡め取る。
これ以上ここに居てはとんでもない醜態を晒す事になるからと精一杯身を捩って腕から抜けだそうとすれば、それを切っ掛けに
テーブルの上へと縫い止められた。
形振り構わず暴れて逃げようとしたその背を するりと撫で上げられ、声も無く仰け反り身を突っ張った。
"駄目だ、こんなに簡単に力が抜けるようじゃ とても船長からは逃げられない"
せめてもの抵抗で背後のローを払おうと振り回した手は、くつくつと笑う相手の手で しっかりと取り押さえられた

「ん、ん!・・・ゃ、あ」
どこを触られてもぞくぞくと快感が走るのに、意地悪な手はキャスケットの反応の大きい場所を探り出し、執拗に撫で擦る。
その度に 意に反して悶えるキャスケットを嘲笑うようにローは次から次へと快楽を与えていく。
身を捩って避けようとしても 追い掛ける手はしつこく、若いキャスケットの身体は陸に上がった魚のようにぴちぴちと跳ねた。
体だけが暴走し、自分の身に起こる反応を追い切れないキャスケットの耳に、さっきの質問の答えだがとローが前置きする

「精力剤でも催淫剤とも呼ばれるが、総じて媚薬と呼ばれる薬の類だ」

ローの結論が頭上に落ちた時には、キャスケットはテーブルの上にしがみつくようにくたりと伏して、昂ぶるだけ昂ぶった身体を
ひくつかせながら荒い呼吸をくり返していた




折しもシャワー後の綺麗な身体だ、丁度良いと腕に抱え上げられ運ばれた先はローのベッドの上だった。

あ、やっ・・・
ぶるっ、と身震いして放り出されたシーツを這って逃げようと背を向ける。
官能に支配されて動きの鈍ったキャスケットじゃ簡単に追い縋られ、背中を見せた事で却って自由を与えたようだ
「あッ、んぅ!」
首筋に顔を埋めたローが汗に光るうなじを舐めあげ、びくりと固まった隙に、ぢゅうとキツめに吸われシーツを握り締めて快楽に耐える。
「ん、く・・・っ」
シーツを引っ掻き顔を擦り付けて身悶えるキャスケットの耳に唇を寄せ、意地を張らずに楽になれとこの状況の元凶が唆す。
「我慢したって辛いだけだぞ。一回や二回抜いたくらいじゃ治まんねぇから気にせずイっとけ」
甘い声で耳に吹き込み、ついでのようにその柔らかい耳たぶを食まれ、キャスケットは眉を顰めてぶるぶると背を震わせた
(熱い、)
ローの触れた指先から皮膚が発火しそうに熱を帯びていく。
薬で馬鹿に敏感になった肌は吐息でなぞられるだけで甘く痺れるというのに、舌で辿られ甘噛みされれば食い縛って
耐えていたはずの唇も簡単に解けて抑えきれない嬌声が溢れ出た。鼻から抜ける甘えた声が自分のものだなんて信じられない。
なのに、薬の効果はてきめんで ローが少し煽っただけで全身に、じんっ・・・と痺れるような感覚が広がる。
自分の身体のはずなのにコントロールが利かない。
今のキャスケットはローの思うままに乱れる傀儡だ。指先ひとつで声を上げ、ひくひくと身を震わせて快楽に啼く

イけよと囁く声に煽られ、一度昇りつめたら我慢も決壊した

2、3度軽く擦られただけで簡単にイく身体を恥じる余裕もない。
薬のもたらす熱に溺れた身は何度イっても満足せず、貪欲に快楽を貪り続ける

「足りねぇだろ。中も弄ってやるから後ろ向いて腰上げろ」
それがどんなに恥ずかしい命令か、頭の隅では分かっているのに欲に支配された身体は理性を覆い潰す
「はっ、ァ、あッ・・・!」
言われたとおりにすれば恥ずかしさ以上の歓喜が与えられるのだ。
正気に返れば羞恥に悶絶しそうな行為を受け入れ、指ですら迎えた事のない場所を差し出す。
そうなってみれば我慢していた時の苦しみは消え、残るはローの与える気持ちよさだけだ。
気持ちよくて気持ちよくて、痺れた頭は他に何も考えられなくなる。
頭の芯から痺れるような声の言うとおりに従い 時にはもっとと強請り、気付けばどうしようもない疼きで身体がいっぱいになっていた
「ここに」
指で何度も抉られ掻き回された孔を くるりとローの手がなぞる。
ひくひくとおののく其所が、もっと確かな熱を求めて震える
「指なんかじゃ足ンねぇだろ。もっと、でけぇもんで擦ってやろうか」
満足するまで好きなだけ掻き回してやるぜと言われて期待に喉を鳴らす。
そのキャスケットの顎を持ち上げ、過ぎた快楽で虚ろな目を ローの強い視線が覗き込んだ
「欲しけりゃお願いしろ。てめえが望めばハメてやる」
熱くてバラバラになりそうな身体よりも、その視線に灼かれて 震える舌が言葉を綴った
「ぁ、あ・・・ ほし、い。船長、」
お願い、と痺れて舌足らずな声が囁くように言うと同時に 灼熱の塊がキャスケットの熱に浮かされた身体を貫いた




*****




ふわふわと柔らかい空間を漂うような心地で眠っていたキャスケットは すぐ傍にあたたかい温もりを感じて それに擦り寄った。
やたらに体が疲れていてだるいのだけど、その疲れも体が温まれば薄れる気がして傍らの温もりに手を伸ばす。
すりっ・・・と、顔を擦りつけていると、不意に肩まわりが温かくなった

・・・気持ちいい。

少しだけ覚醒していた意識が 全身を包む温もりに満足して再び眠りに吸い込まれていく。
ゆっくりと穏やかな呼吸を繰り返し微笑みを浮かべるキャスケットは 額の真ん中に柔らかい何かが触れるのを感じたのを最後に
もう一度眠りに落ちた



腕の中で眠ってしまったクルーを起こさないように顎の辺りを擽る髪をそっと脇に流す。
こんなことになったのは自分が間違ってローの作った薬液を飲んでしまったペナルティだと思ったらしく、最中のキャスケットは
しきりと"ごめんなさい、許して"と謝っていた。
(莫迦だな、もともとてめえに使うつもりのもんだってのに)
今回キャスケットが飲んでしまったのは本当に偶然の出来事だったのだが、使う量は違うが作ろうと思った使用対象は彼だった。
最初から媚薬でメロメロにして喰ってしまうつもりだったわけではなく、少しばかり気分が良くなったところで誘いを掛ければ
のってくるかと考えただけだ
(普通に誘えばこいつは間違いなく尻込みするだろうからな)
今時 クルーと船長間の恋愛が御法度だなんてとんだ時代錯誤だ。
自分に自信がなくて萎縮しているのか、気のある素振りを見せるくせにいざ口説き落とそうとすると逃げるのだ。
今度のことだって、きっと自分の中で色々言い訳をつけて"しでかした失敗のお仕置き"だと決めてしまうのだろう
(仕置きなんかじゃねぇよ。ラッキーな偶然に乗りはしたが、端から目的はてめえだ)

キャスケットの目が覚めたら最初にその誤解を解いておかなきゃなと考えながら、眠る彼の唇に 触れるだけのキスを落とした







 素直になる薬

彼の口に入ったのは必然







予定では久しぶりにエロスでも書くかなと思ったのですが、いざ書き始めたら仕事めっちゃ忙しくてですね!
毎日寝オチで朝の4時とか5時から携帯片手に書いてたのでまったくもってねっとりエロスなんて書く気分に
なれなかったんです…



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