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SS置場9
SF P
短文でペンシャチ、あんまり幸せじゃないかも。昨日の更新がなかったのはうっかり本を読んでるうちに
寝オチてしまったからです。読み終わったら書こうと思ってたのに止められなかった!3冊読んで、
更新したら今日もう1冊いこうかなーって迷ってます。松岡さんと伊坂さんのどっちにしよう…









はぁ、と 大きく息を吐いてシーツに沈む。

自分より先に果てたシャチのすぐ隣に伏せて息を整えながらペンギンは視線を横に流した

上気した目元はまだ赤みが引いていない。
汗に濡れて光る肌は健康的な艶やかさで 触れば弾くような弾力を有している
所詮ぴちぴちのお肌と称されるそれは若さの代名詞だが、確かにシャチは自分より年若いがそこまでの年齢じゃないのだが。

事後だというのに眺めているだけで腹の奥がざわつくようで、血色が良くなり普段よりも濃い色を見せる彼の唇にキスをする

「シャチ」
少し長めの口付けの後、囁くように名前を呼んだ
「あ――、」
続けようとした言葉は シャチの一瞥で声にならずに霧散する。
二人きりで過ごした夜にはふさわしくない冷たい視線を寄越したシャチは、ペンギンが言い留まった瞬間 にこやかな笑みに変わる。
言葉を切り、舌ばかりか身動きも止めたペンギンの唇を人差し指でなぞった後、今度はシャチの方から唇を重ねてきた

――踏み留まったご褒美とも呼べるキス。

そのキスで呼吸を再開したペンギンが もう一度ベッドに沈む

すっかり呼吸の整ったシャチの声が優しくペンギンの耳を擽った。
話している内容は別として、だが。

「ねぇ、ペンギン。俺さぁ、おまえの面倒じゃないとこ、気に入ってんだ」

俯せてしまったペンギンの髪を持ち上げ、指に巻き付けては離して遊ぶ

「おまえが煩く言うから ペンギンの誘い以外は断ってるだろ?」

再び掬った髪を持ち上げ、シャチはペンギンの顔を覗き込んだ。
横目に見えた彼の顔は穏やかな微笑を浮かべていて、怒りも何もない事が却ってペンギンを抉る

「だから、言わないよな?面倒な事は」

シャチの言う"面倒事"というのは、好きだの愛してるだのいう意味合いの事で、ペンギンが彼の身体を自由にできる
唯一の絶対条件だ。
相手をとっかえひっかえしている友人にこれ以上目をつぶれなくて 止めろと訴えた結果、差し出された条件だった。
『じゃあ、相手をおまえだけに限定してもいいけど』
その代わり余計な面倒は言うなよという条件を聞いた時は簡単だと思ったのだ。
これでシャチの乱れた生活は改まるし、自分も想いを遂げられる。
身体から始まっても回数を重ねていけば彼の気持ちも変えられると高を括っていた。

(本当は シャチの方こそ誰よりも面倒を抱えていると気付いていなかったから)

奔放な生活を続けているのは シャチがまだ愛だの恋だのいう相手を知らないからだと考えていた。
"だったら、自分が教えてやればいい"
時間を掛けてゆっくり伝えていけば彼にも分かると思った。

(実際は違ったのに・・・な)

シャチに必要なのはそんな感情のない相手との夜だけで、セックスフレンドとしてのパートナーしか求めていない。
だって、彼には 本当に望む相手が心の中に既に居たのだ。
あけすけな物言いで恐れを知らないシャチが、唯一想いを告げる事のできない相手ではあったが。

(船長――だろ。こいつの恋い焦がれている相手は)

言えるわけがない。
船長だから部下だからという立場の問題ではなくて、ローの恋愛や欲の対象は女だけだからだ。
こうして過ごすようになって長い自分達の関係は勿論ローも知っている。
そこに偏見を持つような心の狭さはローにはないが、彼に男を好む性癖がない事ばかりは文句の付けようがないだろう。

諦めて別の人間に目を向けるにはシャチの想いは強すぎる。
彼の思い人の吸引力が強すぎるのかもしれないが、そんな人間が目の前にいるのに意識を他に向けられない。
その上、他人の目を惹き付けるローはとにかくやたらモテるのだ。
その様子を傍で見ているだけの現状は、告げる事すらできないシャチにどれだけのフラストレーションをもたらしたことか。
目敏いローに気持ちを気取られることなく完全に取り繕って隣に居るのにシャチの割いた労力は如何程だろう。

あれだけ一緒に行動していたペンギンが気付かなかったのだから、彼の偽装は完璧だった。
軽薄な空気を纏って 男女構わずの相手選ばずで遊び惚けるシャチが、本当に想っている相手がただ一人だなんて
知っているのは多分この船ではペンギンだけだ。

(それも、夜を共に過ごすようになってから気付いたのだが)

シャチは頑ななまでにこちらが想いを口にするのを拒む。
それを聞くくらいならおまえとは遊ばないと、心以外はなんでも与えるくせに肝心のものだけは寄越さない。


「俺から "お気に入り"を取り上げないでくれよ?」

な?と笑って意地悪く言うその声がシャチなりの精一杯の言葉だと今はもう知っているペンギンは、それに免じて
引き下がる事に決めて、返事の変わりにもう一度深く激しく口付けた












 偽りの身性








前回のペンキャスとえらい違いだ…

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