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SS置場8
裏側(キャス視点) L
やばい、昨日展示会見に行って飲み過ぎたのか眠くて眠くてw 別の話を書きかけていたのですが
前回、裏側のエピローグ的な物を書いて終わったつもりだったアレ。キャス視点もいるかしら?と、ふと
思ったらなんとなく携帯でぽちぽちしてしまいました。これが本当のエピローグです。携帯文なので短いです。












(本当は 知っていたのかもしれない)

思った途端 溢れた涙が頬を伝う。
父や母の言い訳にどこかで感じていた違和感。
子供心ながらにお腹の底がざわつくような不安を覚えたのはいつの頃だっただろうか。

見えていた現実を知らないふりをして過ごすのは苦しかった。
窮屈に思っていたのは躾が厳しかったからじゃない。
本音を話さない家族の中で何も知らない頃と同じに笑っているのが辛かったのだ。
母は母なりに可愛がってくれた。
父も厳しいながらも自分には過ぎるくらいの期待を掛けてくれていた。

だけどその父と母の間に通い合う心がない。
彼らはキャスケットの親であることで辛うじて家族としての繋がりを保っていたのだ

お金も、代々続く事業も、名声も。
そんなものはキャスケットはひとつも欲しくなかった。
与えられないものを声に出して寄越せと我が儘を言うほど子供ではなかったが、自分の家庭にはない
ごく一般の家族間にある気持をいつも羨ましく眺めていた

(家を捨てるつもりはなかったのだけど…)

彼らの中にあった唯一の繋がりを壊してしまったキャスケットには あの家に居る理由がもう見つからなかったのだ。
キャスケットの両親は我が子の病気を力を合わせて平癒させるような気長な性格じゃなかったし、それどころか
彼らはおまえのせいだと互いに責任を押し付けあった。
父は外腹に生ませた子供を跡取りに決め、母は外聞を憚る父が離婚に応じるわけがないのを知っていて
ますます家庭を顧みないようになった

父や母のように他の行き場を持たないキャスケットは 閑散と隙間風の吹き荒れるような我が家を眺めるだけの
毎日を過ごしていて、たまたま知り合った男に誘われるまま、家を出て島を立つ事を決めたのだ。

自分が居なければ 外にいる顔も知らない兄弟がこの家に入る。
跡目は彼が継げばいい。
その頃には母は滅多に家に寄り付かなくなっていたから、今更キャスケットが居たところで家族の形骸は保てないのだ。

(守れなくて、ごめんなさい)

跡を継ぐ事よりも何よりも、父と母を繋ぐ唯一の糸である役割を果たせなかった事が 胸に堪えた。

望んでくれた通りの息子でありたかったのに、両親の中に残る人間らしい感情を掬い上げ再び心を通わせる事が
出来ずに破滅を招いてしまった

(・・・ごめん・・・なさい)

謝罪の思いが込み上げる度に涙が頬を伝う。
誰かの指がそれを拭うのを感じたが、熱に霞んだキャスケットの視界はその姿を捉えきれなかった


「てめえのせいじゃねぇ、気にするな。おまえだけが努力したって壊れるもんはいつかは壊れる。繋ぎ直す努力を
放棄したのはおまえじゃねぇよ、そいつらの方だ」

額を覆っていたタオルが剥がされ、手が触れる。それを冷たく感じるのは自分の体温が常よりも高いからだろう。
霞む目を必死で開けても 逆光になった人影の姿はよく見分けられなかった

「そこにはおまえの求める家族はなかった。だから、ここで見つけろ。新しく関係を繋いでいけ。この船の連中は
気のいい奴らばかりだ、一方通行にはならねぇよ」

額にあった手が優しく頬を撫でて離れていく。
思わず 後を追って伸ばした手が それに応えるように柔らかく握り返される。
その温かさは 確かに自分の求めていたものだった。
あの冷えた家に住む両親にも分けてあげたいと思っていたのに、自分だけではどうしようもなかった
(俺だけでは駄目だったの? 父も母も、差し出す手を欲しいと望んでなかったから…?)
だから彼らは家の外にそれを求めたのだろうか。
彼らにとってあそこはただの脱け殻で、家の外にはそれぞれを受け止めてくれる居場所があったのだろうか。

再び、じわりと目の奥が熱くなる。
キャスケットの手を握る人物が笑って、泣き虫だな、おまえはと呟くのが聞こえたが、そこに咎める声音はない

しょうがねぇなとでもいうように、笑った吐息が顔に掛かった。
額に 優しい柔らかな感触がして、それが泪を湛えて震える瞼にも落ちる。
――温かい。
誰なんだろう、そう思って重い瞼を持ち上げようとしていたキャスケットの耳に、扉の開く微かな音が届いた

「…具合はどうですか?」
遠くから別の声が聞こえる
「ああ、ちょうどよかった。タオルを絞ってくれ。片手じゃどうもな」
苦笑を含んで答えたのは先程の声で、汗に湿ったキャスケットの髪が額から払われていく

「まだ、熱は高そうですね」
「環境が変わって、知恵熱みたいなもんだろ。船旅にも慣れてねぇだろうし、このくらい 直に落ち着く」

ひそひそと話す声がして、新しく絞ったタオルが頭に乗せられる。
それは熱のある身には冷たくて気持ちが良かったのだけど、先程額に触れた感触が消えるのが残念な気がして
握った手に力を込めると その手に被さってきた大きな手がキャスケットを安心させるように擦ってくれた













 いだ手の先

自分の待つ新しい世界










あ、説明足りないw キャスの額に唇(指じゃなくて唇です)を落とした人はローで、様子を見に来た人はペンギンです。

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あきゅろす。
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