[通常モード] [URL送信]

SS置場8
拍手ログ 猫 L
拍手ログ。現行拍手文はちょっと拍手には不向きかなーって感じのロキャスなのでご注意。









くぁ、とあくびをして背を伸ばす。
窓の外はもう明るい太陽が結構な高さまで昇っていて、そういえばいつも煩いヤツが居ないなと頭を巡らせる

室内に居る生き物はローだけだ

なんだよ、あいつ。 俺に黙って居なくなりやがって。誰が勝手に行っていいって許可をした。
不満が喉の奥でグルグルと渦巻く
小さく唸ってのそりと身を起こしたローは トンッ、と軽い身のこなしで床に降りた

・・・つまらない。

天気も良いし室温は快適。昼寝にはもってこいの時間だが、生憎さっきまで眠っていたのだ。
目を覚ましたばかりのローはもう一度眠る気分にもなれなくて、首を巡らせて鈍く光るヘーゼルの瞳でドアを見上げた。
最初にローの瞳を見たシャチが 『あ、これ、大きくなったらグリーンになる目だ』と、言っていた覚えがある。
だいたい あいつは獣医でもないくせに無駄に動物に詳しいんだと溜息代わりに頭を振ったローは、無意識にまた
扉へと視線を戻していた

暫く見てみたがドアノブの動く気配はない

"あぁ、つまらねぇ"
そう考えながら 先程自分が丸まっていたベッドの上へと飛び上がった。
軽やかに飛び乗っても、さすがに体重全ては殺せない
振動が収まるのを待って重ねた前脚の上に顎を乗せ、眠くはないが目を閉じる
探せば玩具の一つや二つ、そこら辺に転がっているのだが、見つけたところで遊ぶ気分にはなれないだろう。
パシン、と黒くて艶のある尻尾がシーツを叩く

"た・い・く・つ・だ"

ローの気分を表現するように ゆらゆらと揺れた尻尾が、結局 何にも触れることなく、くるりと丸まり体に巻き付いた






眠っているようにも見えたローの片目が 不意に開く
伏せていた耳がぴくぴくと小刻みに音を探り、ひょい、とその細い顎が持ち上がった。

ひゅっ・・・と 音を立てずに出窓の枠に移り、ゆったりと身を横たえる
日光浴の最中にそのまま眠ったという様子でローが目をつぶった数秒後、カチャッと音がして扉が開いた

「ただいまぁー」
部屋には誰も居ないというのに元気に挨拶して入ってきたのはシャチだ。
肩に背負った荷物も下ろさず真っ直ぐに窓までやってきたシャチは、「ただいま!」 ともう一度言うなり、窓辺に居たローを
ぎゅっと抱き上げ頬擦りを始める
煩そうにローの尻尾がぺしぺし叩いても彼は一向に気にしない
抱き締める腕に爪でも立てれば違うかもしれないが、否、シャチなら顔中引っ掻かれても離さないかもしれない。
猫になったローがどれだけ素っ気なくしてもメロメロだったシャチは"冷たいとこも本物っぽい!"と逆に喜んでいたくらいで
ますますローに夢中になった。こいつマゾなんじゃねぇの。

「ああ、もう、会いたかった!なんで俺 今日仕事がつまりまくってたんだろ」
寝不番とでもいいから交代してもらうべきだった!と、仕事のローテーションの不満を漏らしたシャチは
"だって明日で元に戻っちゃうんでしょ"と腕の中のローに言って、もう一度満足ゆくまで頬を擦り寄せる。
「毛並みも良いし、見た目ロシアンブルーみたいだけどブルーグレイっていうより黒に近い青だよね。 髪の色が
そのまんま体毛になったのかな。猫になっても美人さんだね、船長」
ローが大人しく腕に収まっているので調子に乗ったのか、ちゅ、とシャチはローの小さな額に唇で触れる
「気紛れなとこも猫っぽいし、案外猫生活も性に合ってたんじゃないスか。」
どうでした?とサングラスを外した翠の目が覗き込む
(こいつ、今俺が口を開いても 「にゃー」 しか出てこねぇの知ってて言ってんのか?)
睡眠時間はやたら増えるし能力は使えない、体も小さくなってるから出来ることの制約も多い。
多少人間より音や匂いに敏感にはなっても出来なくなった事の方が圧倒的に多かった
物珍しかったのも最初の一日だけで、シャチの部屋に居候を決め込まなきゃやたら触りたがるクルーの手が煩わしくて
癇癪を起こして片っ端から引っ掻いていたに違いない
(そもそも、相手は好きに撫で放題なのに こっちからは何も出来ないたぁ、性に合わねぇ)
ぺしっ、と腹いせにもう一度しっぽでシャチの手をはたく
普段のローには無い部位だがこの数日ですっかり自在に操れるようになっていた。
そんな仕草も慣れたもので、痛くも痒くもないどころか反応があった事を却って嬉しそうにシャチはぐりぐりと
ローの額を撫でた後、顎の下を指先で掻いてくる
(ああ、畜生。こいつ猫慣れしてやがる)
そこを撫でられると意思に反して喉が鳴るのだ
動物好きは伊達じゃない。どこを撫でれば喜ぶとか シャチはすっかり把握していてこうして抱いている時に
肩口だの尻尾の付け根だの、とにかく気持ちのいい場所を絶えずどこか撫でている。
多分シャチにはローを撫でているという意識はなくて、抱えているのが猫だから自然に手が動いているのだろう
「明日には元通りですけど、人間に戻ったら最初に何がしたいです?」
眉間を撫でられ 目を細めていたローは、そう問われて考えた

(戻ったら最初に何をするか? んなの、決まってる。)

猫の身じゃ、したくても何も出来なくて、どれだけ不満だったことか。
(ストレス解消に戻ったら納得するまで・・・)
そう思って目を開けると、日も暮れ薄暗くなり始めた為瞳孔の開きつつある丸い目につられたのか、シャチが
魅入られたようにローの方へと顔を寄せてきた
「すっげぇ 賢そう・・・ しゃべらないからかなぁ、なんか、目だけで訴えかけますよね。綺麗・・・」
それとも船長だから?と呟きながら うっとりと瞳を覗き込んでくる、そのシャチの鼻先にかぷりと食らい付く
「ふぎゃっ?!」
なに、船長!? と、自分の方が猫みたいな声を上げたシャチの鼻に残った跡を さりさりと舐めながら、にィっと
目を細めると、何を思ったかシャチの顔が赤くなった

「今の笑い方、めっちゃ船長ぽかった・・・」
「なーぁ」
ローを腕に抱えたままベッドに倒れ込んだシャチに、何赤くなってんだよと猫語で呼び掛ける。
赤くなった顔を隠すように枕に頭を埋めようとしていたシャチが、その声を聞いて顔を上げた
「・・・何言ってんのかわかんないけど、何言いたいか分かっちゃった」
顔の赤味を隠すのを諦めたのか、シャチは ローを引き寄せながら、ふはっ、と思わずのような笑みを見せる
「そういえばその姿になってからしてませんもんね。俺からは鼻先とかおでことか、好きなとこにしてましたけど」
「ンなぉ (ばかいえ、キスだけなわけねぇだろ)」
文句を返したローに向かって、「ん、」と唇を突き出したシャチは、ローがこの姿になって以来初めて口にキスをした

「はは、小さくてよくわかんねぇ」
照れ隠しのように笑ってそう言うと、小さな猫の姿のローを抱き寄せる
"元に戻ったら、朝まで一緒に居ましょうね"
どうやらそこまで鈍くはなかったシャチから内緒話の風情で告げられて、返事代わりに もう一度彼の頬を舐め返した









 ねことキス

「船長痛いからやめて」
悲鳴を上げて顔を覆う彼の指先を柔らかく噛んだ









シャチが喰われる前提で書いてますが逆CPにも見えると思います!



[*前へ][次へ#]

41/100ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!