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SS置場8
宿り木
前から書こうと思ってたけど書ける技術がなくて放っていました。が、放置してるうちに過去編突入したら
もっと書けなくなるだろなと思ったので手を付けてみましたがやっぱり書けなかった。あ、これ戦闘は
全然メインじゃないので肩すかしです。オチらしいオチもないし詳しい背景状況も出てきません。
一場面だけのジャンク扱い並(書けなかったからw)だと思って下さい









チ、と舌打ちしたローが近くにいたクルーを下がらせるのが見えた

離れた位置で敵と刃を交わしていたペンギンが「おい!」と思わず声を出す。
船長の指示に従って距離を取った仲間は既にいくつもの怪我を負っていて 足手まといだと言われた言葉を
跳ねつけてまで船長の側を離れずに互いを守り通す自信がなかったのかもしれない。
こういう時の状況判断が的確な相棒は別の命を受けてこの場にいない。
彼の居ない穴がこうも大きいとは思わなかったと歯噛みしながら ペンギンは切りかかってくる相手を弾き飛ばした

キャスケットなら、近くにいる仲間を怒鳴りつけてでもローを一人にはしないはずだ。
冷静に判断しているように見えて こんな時の船長は無茶をしがちなのだ
(いや、冷静だからこそ、一番被害の少ない方法を選んでいるのかもしれないが・・・)
ガキン、ともう一方から振り下ろされる刃を受け止めて、ペンギンは仲間に向かって声を張り上げる
「馬鹿っ!船長の側を離れるなッ」
追いかけようと走り出したペンギンの進路を幾つもの影が阻む。
急に居場所を変えるにはこの敵味方入り乱れての白兵戦は不利だった。
ブゥン・・・と広がった半球が辺りにいた人間を呑み込むのが見える
(この土地の土は海楼石の成分を多く含むと言っただろう!)
能力が発動しにくいと下調べはついていた
ロー自身、何度か試してみてそれを肯定していたのだ
(いざという時の体力を残しておくためにこの段階での能力の使用は禁じたのを忘れたのか)
建物の中にいるのは相当厄介な相手だ
最終的にローの能力頼りになる可能性が高いと相対するまでは使わない計画だったのに。
外の警備に切り捨てても切り捨ててもきりがない人数を裂いているのはそこで体力を使い果たさせる目的もあるのだろう
「待て、ロー!一人で行くな・・・ッ!」
周囲の雑兵をばらばらに混ぜ合わせた船長のお陰で辺りの混乱が一層激しくなっている中、建物の中へ
消えていく背中を追いかけたペンギンは、自らも足を踏み入れようとして寸前、降りてきたシャッターに阻まれた。
ガシャン、と激しく蹴り付けるもののそれくらいで壊れる代物じゃないのは分かっている
「少人数では中には入らない計画だっただろう、この馬鹿!」
誘い込む為の罠に敢えてのっかるのは計画のうちだった。
だが、無傷で侵入できる人数が残らなかった場合は計画は中止にするという取り決めだったはずだ
「なのに一人で入るだとか、何度スタンドプレイをすれば気が済むんだ」
シャッターが降り始めた瞬間、ちらりと振り返ったローが "ちゃんと戻る"と口を動かしたのはペンギンも見た。
信じないわけではないがそれでは何の為の計画と打ち合わせなのだ
「ペンギン!船長どうした、先に行ったのか」
追いついてきたバンは返り血塗れの酷い格好をしている。
べったりと顔に貼り付いた血を手で拭った彼はつなぎの腰の辺りでそれを拭いていた。
少しは汚れを気にしろと思うがバンが顔を拭ったのは目に血が入るのを嫌っただけで汚れを厭ったわけではない
「相変わらず汚れを気にしない戦闘スタイルだな」
「雑談交わしてる場合かよ」
とはいえ、一緒になって船長を追いかけるには心強い相手だ
ブレーキが壊れれば手に負えない戦闘狂となりかねない仲間だが、今のバンはまだ理性が働いている
「ここは塞がれてる。別の入り口を探すぞ。武器庫でもいい。壁でも扉でも吹っ飛ばせる物があれば強引に中に入る」
「りょおーかい」
敵の目的は船長一人だろう。ターゲットを誘い込めば後はそう簡単に侵入させてくれなさそうだが、
なりふり構わなければ突破口はどうにもなる
「戦場がうちの船じゃねぇのは有り難いよな」
隣で走るバンも同じ事を考えたらしい
「侵入できなくても、最低 陽動になるくらいには派手にいく」
「つまり何も気にしねぇってこったろ。簡単じゃね?」
寧ろそういう方が得意だと楽しげに言ったバンが何かを嗅ぎ付けたように視線を横に流した。
何かあったのかとそれを追えば、にぃと笑ったバンが一つの扉に向きを変える
「武器発見。うまくすりゃ入れるかもな」
火薬の類に鼻の利く彼の言う事だ
そこに何らかの武器になるものが眠っているのだろう
「おい、気をつけろ」
扉を開けた途端にズドンじゃ洒落にならないぞと注意を促すペンギンに、流し目を寄越したバンは壮絶に楽しげな顔で
笑っていた、これはヤバイ・・・!
「罠でしょ、当然」
ひょいっと全く構えることなく気軽に手を掛けた扉をバンが開く。
次の瞬間、扉の中から目を潰す鋭い光が漏れ広がり、二人の立っていた場所を含む辺り一体が熱を伴う爆音を
轟かせて崩れ去った






「うわ!ちょっと何あっち、ヤバくない?!」
別件を片付けて船の停泊地に戻ってきたキャスケットは黒煙を上げる空を見て目を瞠った。
方向を見る限り 発生源はどう考えても今、船の連中が侵入している施設だ。
自分の留守中に決行の連絡は貰っていたが 現場の状況が全く分からないのだけはどうにも馴染めない
「もう!どうしてあと1日待ってくんないんだよ!」
船に待機しているメンバーは居るだろうか。そちらに合流すれば戦況はいくらか聞けるかもしれない。
だけど混戦中に船と連絡を取る余裕は少ないだろう
携帯している武器類は身につけていた小型の銃とナイフのみ。
応援というにはショボ過ぎる得物だがとにかく状況を把握したくて船に向かう道に背を向けて走り出す。
駆けるにつれ、見えてきた施設は小さい影だが まだ建物の形状を保っていた。
クルーは中に居るとみていいだろう
スピードを上げたキャスケットは 一端離れた場所で足を止める
誰かクルーを捕まえて今の状況を聞いてみたいが戦場は建物の反対側に移っているらしく、倒れている人影しか見当たらない。
その中に仲間の姿がないのは一瞬で把握した
軽く安堵の息を吐いて更に駆けようとしたキャスケットの足が寸前で動くのをやめる

シュンッ!と目の前に塊が現れる
「せんっ・・・」
呼ぶ声よりも体が先に動いた。
駆け寄るキャスケットの前に重なるように積まれたのは仲間の姿だ
「首尾は」
「完了っす。じゃなくて、これ、ちょっ・・・!」
肩に担いでいた煤で真っ黒の人間を放るように渡され思わず受け取る
「バン?」
「途中でスイッチ入っちまったんで無理矢理終わらせた」
足下から聞こえるいつも組んでいる相棒の声でキャスケットが視線を落とす
「おまえもなの・・・」
あちこち破けたペンギンの服も やたら焼け焦げをくっつけている。
爆風を大量に浴びたようだ
もちろん、その下には戦下で浴びた血も含んでいるのだろうが、今は黒で覆われている
「うわ、バン、びっちゃびちゃ」
抱えた腕に染み込んでくるのは彼の体に付着した血だろう。
当人の怪我からのものもあるが大半は敵のものだ。
キれたバンは武器に頼らず自分の手で相手を潰す事が多い。
「動けねぇ奴を運ぶからここに居ろ」
「あっ!待って船長!」
呼び止める声も聞かずに姿が消える
一見しただけでここに運ばれた仲間の中じゃローの怪我が一番酷いというのに 止める間もあればこそだ
「一番重傷なの船長じゃないか!」
「すまん、クルーは外に置き去りだったんだ」
建物の一角を壊して踏み込み応戦する敵を蹴散らして追いついてみれば満身創痍のローが相手を床に沈めたところだった
「必要な情報は手に入ったらしい。あとはクルーの回収だけだ」
「能力、使えないんじゃなかったの」
先ほどのローは肩で息をしていたが能力は使いこなしていた。
残りのクルーもこうして運ぶつもりだろうか
体力勝負だと言っていたくせに涼しい顔をして無茶ばかりするんだ、あの人は。
「途中で倒れたりしない?」
「おまえがいるから大丈夫だろ」
「え?」
聞き返した質問への答えはない
代わりに ペンギンはこれまでの状況を話してくれる
「建物の中の方が駄目だったらしい。どうやらこの施設は能力者向けじゃないようだな。あちこちに仕掛けてあって
まだ外の方が使うのは楽だそうだ」
話している間にもクルーの数は増えていく
歩けない怪我を負った者に肩を貸したクルーや、出血のあるクルーの止血をする者、着実に船に戻る準備が揃っていく中、
ペンギンが意識を落とされたバンを引き受け担ぎ上げた
「運ぶよ?おまえだって怪我してんじゃん」
応急処置を手伝っていたキャスケットが顔を上げる
「落としたのは俺だしな。それに、おまえには別に運ぶものがあるだろう」
「わぁっ!」
すぐ横にもう一山、クルーの塊が現れる。
同時に、どさっと背中にのし掛かる重みにキャスケットは声を上げた
「行くぞ」というペンギンの合図で他のクルーも歩き始める
キャスケットの背では最後のクルーを運んできた人物が体重を預けて荒い息を吐いていた

「歩くのはおまえがやれ。俺は休む」
「アイアイ、キャプテン」
本当は背中より腕に抱える方がいいのだけどと思いながら立ち上がる。
身長が足りないキャスケットではこのまま歩けば船長の足を引きずってしまうのだ
「足、担ぎますよ?」
長い足を抱えて、背負う格好になっても文句が出ないのを不思議に思って後ろを伺う
(・・・あ、寝てる)
疲れが出たのか目を閉じたローは外部の声を遮断して緩やかな呼吸を繰り返していた
(なるべく足下のいい場所を選んで歩こう)
船に戻るまでの道程を少しでも休息に充ててもらおうと キャスケットは慎重に足を進め始める。

少し先にはペンギンの姿が見えた
多少足を引き擦っているようだがバン一人くらい軽く運べそうな足取りではあった。
キャスケット同様、バンもクルーの中では小柄な部類なのだ
「ペンギン、足大丈夫?」
背中の船長が休めるように ほとんど唇の動きだけで話し掛けると、意図に気付いているのか頷きだけで返答があった。
そういえば、さっきペンギンは自分より先に船長に気付いた。それを少し悔しく思ったが見分ける参考になるかと口を開く
「なぁ、さっき、なんで船長が来るの分かったんだ?」
船長の気配なら誰より先に気付けると思ったのに先越されたと聞けば、ペンギンが片眉を上げてキャスケットを見た
「別に、気配が分かったわけじゃない」
「?」
それじゃさっきのは何なんだと首を傾げていると、くすっとペンギンが小さく笑う声を漏らした
「本当に気付いてないんだな。怪我したローが倒れ込むのは いつもおまえのところだ、思い返してみろ」
「え・・・っ」
そうだっただろうか。
確かに血に汚れた船長を支えた覚えは何度もある。
だけど、他のクルーの腕に倒れるところは 見た覚えがあっただろうか

・・・ホントに?
ペンギンの 言うとおりだった?

初めて気付いた事実が胸に喜びを運んでくるのは、いけないことだろうか。
考えているキャスケットの耳に顔を寄せたペンギンが、こそりと更に潜めた声で囁いた

「ローの帰る場所はおまえなんだよ」
おまえ抜きの作戦決行だったが、だから心配はしてなかったと置き去りをくらった腹いせなのか "意地でもおまえの
居る場所に着くまで倒れないからな"と笑ってバラしたペンギンが、ぐっ、と呻いて視界から消える
「わっ。ペンギン、どうしたんだよ」
どこかにぶつけたのか、怪我のある足を押さえたペンギンがバンを落とさないよう身を傾けながら蹲っていた。でもどこに?
自分は道を選んで歩いていたから飛び出す枝や幹なぞないはずなのに。
考えたキャスケットが顔色を変える
「ごめんっ!ペンギン、もしかして刀ぶつけちゃった、俺?!」
刀を背にした船長ごと背負っていた。
その鞘がペンギンの怪我にぶつかったのではないか
「・・・いい。平気だから、早く船に戻ろう」
返す声は痛みを耐えての低いものだったが すぐ追いつく、少し休めば痛みも引くから先に行けと言われて前を向く。
早く船に戻って船長にゆっくり休んで貰いたいからここはペンギンの言葉に甘えよう。
なるべく揺らさないようにと歩き始めたキャスケットの背では、笑いを堪えるローの肩が細かく震えていたが、
気付いているのは背後に残って痛みに顔を顰めるペンギンだけだった









 宿 り 木

戻るのはいつもおまえのいる場所










せんちょー、たぬき寝入り。今回のバンは若い方です。普段おだやか〜なくせにキれたらヤバイ系の
いつものやつ。 これちゃんと落ち着いて話にしたかったなー。でも書ける技量がないのは自分で
分かるのです。なので物足りないはしょり書き。


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あきゅろす。
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